Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014のレビュー・感想・評価
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生前の教授をもっと観るべきだったと後悔した
先日福岡のLoveFM『スイッチオン!Daytime』内で紹介され、最寄り館での公開終了直前で観てきた。(このあと上映期間の案内が更新され、1週間延長されていた)
『教授』の逝去後に公開された『async』などのドキュメンタリー映画を観たり、『音楽と生命』『音楽は自由にする』などの著書を拝読し、皮肉にも生前よりも今の方が教授に強い興味を持つようになっている。
今回は2014年の東京フィルハーモニーオーケストラとの東京公演が収録されている。
【不覚の涙】
前半で演奏されていた『Ichimei』が東日本大震災・福島第一原発事故発災時に制作されていたことは知っていたが、当時のニュース映像(名取川・仙台空港付近の津波による破壊、原発事故の中継、発災数日後の新生児誕生のニュースを読んだ時の武田真一さん(当時NHKの夜のニュース担当)の涙)を思い出し、不覚にも目頭が熱くなった。
【リフレッシュ】
不覚の涙のおかげで心が浄化された気分になったためか、
『ボレリッシュ』
『アンガー』
『リトルブッダ』
などまだちゃんと聴けていない曲や
『ラストエンペラー』
『戦場のメリークリスマス』といった名曲を聴き、広島・長崎の平和公園やペキンなどに行った気分になった。
『西洋から見ても東洋から見てもどこでもないどこか、そしていつでもない時間』がコンセプトだった『戦メリ』とは異なる部分もあるが、各々の中の世界観と教授の曲が案外マッチするんじゃないかと思った。
【後悔先に立たず】
教授がお元気だった頃にもっと教授の番組を観たり聴いたり、機会があれば教授のコンサートに行っておきたかった、と後悔した。
当時もチケットは発売即完売だったかもしれないが、なんらかの形でナマの教授を観ることができた人は、それだけでも貴重な経験になったと思う。
2024年公開の『Opus』(監督:空音央=そら・ねおさん)の映像美やドルビーアトモスなどの音響効果からの異常なほどの没入感を体感するとどこか物足りない部分を感じるかもしれないが、オーケストラの皆さんの一挙一動に注目するのもアリ。
余韻を残す…
見終わった後、
「今観た事以外、一切の情報をいれたくない!」と
強く思い(こんな心境は初めてです)、音のならないヘッドホンを耳に早々に帰宅しました。
帰宅し、爽々たる有名な曲達に脳内で再び酔いしれる中、半ばサプライズ的に発表・演奏された曲『バレエ メカニック』にとても強くひかれていました。
最初は「どんな曲?」と思いましたが、
僕には 始めと終わりがあるんだ
こうして長い間空を見てる
音楽 いつまでも続く音楽
踊っている僕を君は見ている
(作詞は矢野顕子さんです)
知ってる、歌える (口ずさむ♪)
ジョン・レノンさんの「イマジン」は平和の象徴の楽曲として世界中で唄われていますが、自分の中ではイマイチ馴染めません。確かにジョン・レノンさんが広くおこなっていた各活動に起因するところが大きいのでしょうが、時代が少し違うためか、壮大過ぎるというか、ちょっとわからないところで崇拝されているように感じています。
一方で「バレエ メカニック」は詩曲ともに自分に合っているというか、望んでいる空気感を持っていました。何十年も聴いていなかった曲なのに、曲に入ると歌詞を口ずさんでいました。
勝手ながらも日本人の『死生観』ってこんな風に一定の決まったリズムを取りながら「ふわっと」しているんだよなぁ。楽しいことも辛いこともあるけれど『始めと終わりは必ず』あるんだよなぁ。と感じ入りました。
坂本龍一さんの数ある楽曲の中から選ばれるとは、幸せな曲ですね。
より一層この曲が好きになりました。
そして最後は、お約束の『戦メリ』で締め括られました。
わかっていたけれども、聴けば終わるというのはツラかったです。
聴きたかったような、聴きたくなかったような心境でした…
観劇後、
亡くなられて随分と日が経つのに「亡くなられたこと」を受け入れる以上に、日々のなかにとけ込まれて「いつでも側にいてくださっている存在になられた」ようなそんな気持ちになりました。
いつまでもみんなの教授であり続けて下さい。
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