「始まりはアート作品を観ているよう。教授は人の心を音楽で表現する天才だ」Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014 Tonさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5始まりはアート作品を観ているよう。教授は人の心を音楽で表現する天才だ

2024年12月22日
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僕はYMO世代ではないけれど、一時期なぜか教授の音楽に惹かれ、その後は機会があれば聴いていた。今回は教授が監修し、彼が「日本で1番音が良い映画館」と評する場所で鑑賞。

バラバラな不協和音から静かに奏でられるピアノの旋律。まるで、喧騒な場所から離れた土地にある美術館で観るアートのよう。もしくは単館系で上映される作品のワンシーンのよう。ああ、この人はなぜこんなに世界の厳しさ、自然の荘厳さや慟哭、人の悲しみや苦しみ、その中から生まれる一縷の希望や喜びを音楽で表現できるのだろう。胸が静かに締め付けられる。

コンサートの生音には勝てないかも知れないが、音楽を映像で俯瞰的に観れるのは奏者の表情や動きが分かって違った楽しみ方ができる。演奏はフィルハーモニー交響楽団で、編集はあるのかも知れないが、多くの音が一つに揃っているのはさすがだと思った。またちょっと傍に逸れるが、指揮を取る教授の表情が豊かで、嬉しくなった。

kizuna world、aqua、バレエメカニック、ラストエンペラー、八重の桜、シェリタリングスカイと名曲が並び、前半の自然や世界の壮大観から人の繊細な心の機微を表現していく流れは見事であり、睡眠不足のレイトショーでも一睡もせずに音を聴き、時々音楽から想像される情景に耽りながら楽しんでいた。そして、最後のMerry Christmas Mr. Lawrenceが流れた時は感無量で、涙が滲んできた。坂本龍一と言う存在は今もこの世界に生き続いている。良き時間でした。

Ton