Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014のレビュー・感想・評価
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「教授」は尚も生き続ける
ただのコンサート。されどコンサート。映画音楽も多く交えていたため、劇場公開の意義は大きい。勿論、ライブで生演奏を聴きたかったところだけれど、迫力有る劇場のスピーカーで視聴出来て大いに満足です。特にラストエンペラーは圧巻のド迫力。
前半はどうやって楽譜に書いているのか判らない難解さで、その分、緊張感が半端ない。やがて判りやすくも迫力の映画音楽に至り、教授も息を切らせながらの熱演振り。YMOの時代から既に遠く、美しくもすっかり白髪なのに、表情は生き生きと豊かで、お歳を召されているようにはまったく見えない。尚も生きておられるかのような存在感。音楽は音を楽しむものと云うものの、せめて映像で演ずる姿を見るのはやはり楽しいですね。
映画音楽というものは、いわば、時に映画の背景・壁紙でしかなく、オーケストラの演奏者はそれの更に縁の下の存在。でも実際に演奏するその姿は更に素晴らしく、裏方などと聞き流すには勿体ないと再認識。観客からブラボーの声と万雷の拍手を受け、それに大いに応えつつも、自分自身も大いにオーケストラの皆さんを讃える、その「教授」のお姿が印象的でした。
でも合間のトークで、「映画監督の我が儘」にはちょっと笑ったw 「ボレロっぽい曲」を注文するなら本物のボレロ使えば良いのに。本当にラヴェルの財団から訴えかけられたのかな。
そして、締めはやはり名曲「戦メリ」。論ずるほど音楽に詳しくないのですが、もう演奏が始まる前から名曲なんですよね。何言ってんだ、と思うかもしれないけど、一度聞くとあのフレーズって忘れられません。あのシンプルで覚えやすい名フレーズ「たたたたん、たた、たたたた、たたたたたん」ってのが何時でも脳内に流れてる。そして前奏が始まったらもうワクワクが止まらない。ああ、今からあの名曲をやるんだ。「教授」みずから、あのフレーズを弾くんだって待ちかねて、遂に待ちに待った名フレーズ「たたたたたん……」、つまり聴く前から既に始まる、それが「戦メリ」の素晴らしさだと私が思うわけです。「教授」よ、永遠なれ。
生前の教授をもっと観るべきだったと後悔した
先日福岡のLoveFM『スイッチオン!Daytime』内で紹介され、最寄り館での公開終了直前で観てきた。(このあと上映期間の案内が更新され、1週間延長されていた)
『教授』の逝去後に公開された『async』などのドキュメンタリー映画を観たり、『音楽と生命』『音楽は自由にする』などの著書を拝読し、皮肉にも生前よりも今の方が教授に強い興味を持つようになっている。
今回は2014年の東京フィルハーモニーオーケストラとの東京公演が収録されている。
【不覚の涙】
前半で演奏されていた『Ichimei』が東日本大震災・福島第一原発事故発災時に制作されていたことは知っていたが、当時のニュース映像(名取川・仙台空港付近の津波による破壊、原発事故の中継、発災数日後の新生児誕生のニュースを読んだ時の武田真一さん(当時NHKの夜のニュース担当)の涙)を思い出し、不覚にも目頭が熱くなった。
【リフレッシュ】
不覚の涙のおかげで心が浄化された気分になったためか、
『ボレリッシュ』
『アンガー』
『リトルブッダ』
などまだちゃんと聴けていない曲や
『ラストエンペラー』
『戦場のメリークリスマス』といった名曲を聴き、広島・長崎の平和公園やペキンなどに行った気分になった。
『西洋から見ても東洋から見てもどこでもないどこか、そしていつでもない時間』がコンセプトだった『戦メリ』とは異なる部分もあるが、各々の中の世界観と教授の曲が案外マッチするんじゃないかと思った。
【後悔先に立たず】
教授がお元気だった頃にもっと教授の番組を観たり聴いたり、機会があれば教授のコンサートに行っておきたかった、と後悔した。
当時もチケットは発売即完売だったかもしれないが、なんらかの形でナマの教授を観ることができた人は、それだけでも貴重な経験になったと思う。
2024年公開の『Opus』(監督:空音央=そら・ねおさん)の映像美やドルビーアトモスなどの音響効果からの異常なほどの没入感を体感するとどこか物足りない部分を感じるかもしれないが、オーケストラの皆さんの一挙一動に注目するのもアリ。
余韻を残す…
見終わった後、
「今観た事以外、一切の情報をいれたくない!」と
強く思い(こんな心境は初めてです)、音のならないヘッドホンを耳に早々に帰宅しました。
帰宅し、爽々たる有名な曲達に脳内で再び酔いしれる中、半ばサプライズ的に発表・演奏された曲『バレエ メカニック』にとても強くひかれていました。
最初は「どんな曲?」と思いましたが、
僕には 始めと終わりがあるんだ
こうして長い間空を見てる
音楽 いつまでも続く音楽
踊っている僕を君は見ている
(作詞は矢野顕子さんです)
知ってる、歌える (口ずさむ♪)
ジョン・レノンさんの「イマジン」は平和の象徴の楽曲として世界中で唄われていますが、自分の中ではイマイチ馴染めません。確かにジョン・レノンさんが広くおこなっていた各活動に起因するところが大きいのでしょうが、時代が少し違うためか、壮大過ぎるというか、ちょっとわからないところで崇拝されているように感じています。
一方で「バレエ メカニック」は詩曲ともに自分に合っているというか、望んでいる空気感を持っていました。何十年も聴いていなかった曲なのに、曲に入ると歌詞を口ずさんでいました。
勝手ながらも日本人の『死生観』ってこんな風に一定の決まったリズムを取りながら「ふわっと」しているんだよなぁ。楽しいことも辛いこともあるけれど『始めと終わりは必ず』あるんだよなぁ。と感じ入りました。
坂本龍一さんの数ある楽曲の中から選ばれるとは、幸せな曲ですね。
より一層この曲が好きになりました。
そして最後は、お約束の『戦メリ』で締め括られました。
わかっていたけれども、聴けば終わるというのはツラかったです。
聴きたかったような、聴きたくなかったような心境でした…
観劇後、
亡くなられて随分と日が経つのに「亡くなられたこと」を受け入れる以上に、日々のなかにとけ込まれて「いつでも側にいてくださっている存在になられた」ようなそんな気持ちになりました。
いつまでもみんなの教授であり続けて下さい。
演奏者からみえる指揮者坂本龍一
素晴らしい
坂本龍一が素晴らしいのは言うまでもなく。
そこの部分については割愛させて頂くが、ご本人が監修された映画館にもぴったりハマっていて、是非とも歌舞伎タワーに足を運んで鑑賞するのが至高であると言えるでしょう。
しかし、この映画を観て空音央の撮ったOpusがいかに素晴らしいのかを知らされる。
この映像はwowow制作とのことだが、カメラワークが3秒ごとに切り替わり、音を充分に聴かせてくれない。
聴覚にフォーカスする為にはあまりにも忙しなく、若干の違和感を感じる。目を閉じて聴く分には問題ない。
この映画のメインはやはり音楽であり、
監修された映画館の音響システムが抜群の相性だった故に、編集側の現代の日本人っぽいADHD感や坂本さんではない制作側の存在感を感じてしまい、映像の面では少し勿体なさを感じた。
カメラワークが素晴らしければ言うまでもなく5をつけたい。
教授が元気でステージに立っていらした、2014年の映像。 最高峰の...
教授が元気でステージに立っていらした、2014年の映像。
最高峰の演奏者さんたち、喜怒哀楽や抑揚など緻密に再現されていました。
映画音楽は、もとからオケに合う作りで、
やっぱり丁寧に練られた曲だ、演奏も一級品だ
と、納得するような感想を抱きます。
むしろ驚きは、
70~90年代の懐かしい曲までも、興味深い音に紡がれていたこと。
YMOの初期とか、散開の3年後の曲とか…。
(あらためて考えてみると、彼の初期の曲の構造、オケに合いそうなものがまだまだありそうですね。彼のソロ名義アルバム 1978~80年あたりはどうだろう?)
上映の終盤、東北ユースオーケストラについて話題があり
"音楽は、上手いか下手かじゃない"
"信条が音に出る"
のようなお言葉がありました。
曲 "Anger" では、演者の皆さんの表情や腕さばきにまでも、怒りがにじみ出ていました。
圧倒的、すごい見ごたえ。
当方、いち観客で、再生を見させていただいただけですが
演奏に限らず、ビジネスでもスポーツ選手も、取組む姿勢が出るものだと、はっとしました。
始まりはアート作品を観ているよう。教授は人の心を音楽で表現する天才だ
僕はYMO世代ではないけれど、一時期なぜか教授の音楽に惹かれ、その後は機会があれば聴いていた。今回は教授が監修し、彼が「日本で1番音が良い映画館」と評する場所で鑑賞。
バラバラな不協和音から静かに奏でられるピアノの旋律。まるで、喧騒な場所から離れた土地にある美術館で観るアートのよう。もしくは単館系で上映される作品のワンシーンのよう。ああ、この人はなぜこんなに世界の厳しさ、自然の荘厳さや慟哭、人の悲しみや苦しみ、その中から生まれる一縷の希望や喜びを音楽で表現できるのだろう。胸が静かに締め付けられる。
コンサートの生音には勝てないかも知れないが、音楽を映像で俯瞰的に観れるのは奏者の表情や動きが分かって違った楽しみ方ができる。演奏はフィルハーモニー交響楽団で、編集はあるのかも知れないが、多くの音が一つに揃っているのはさすがだと思った。またちょっと傍に逸れるが、指揮を取る教授の表情が豊かで、嬉しくなった。
kizuna world、aqua、バレエメカニック、ラストエンペラー、八重の桜、シェリタリングスカイと名曲が並び、前半の自然や世界の壮大観から人の繊細な心の機微を表現していく流れは見事であり、睡眠不足のレイトショーでも一睡もせずに音を聴き、時々音楽から想像される情景に耽りながら楽しんでいた。そして、最後のMerry Christmas Mr. Lawrenceが流れた時は感無量で、涙が滲んできた。坂本龍一と言う存在は今もこの世界に生き続いている。良き時間でした。
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