「迷走」新幹線大爆破 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
迷走
山場がはやすぎてパニクるのもはやい。キャラクタが直情的で良い人と悪い人が単純化されている。時事事案を反映させ、鉄道マニアや電車でGOファンに媚びつつJR職員おつかれ広報になっている脚本が白々しい。のんさんは緊張感を削ぐし、豊嶋花さんの役はこどもを棚に上げすぎだし、かのじょが真犯人てのも飛躍しすぎでポカン化をまぬがれなかった。密室群像の代表として政治家(尾野真千子)とインフルエンサー(要潤)が対立構図をつくり、司令室では酷薄な政府高官(田村健太郎)と正義の斎藤工が対立構図をつくるのが想定内。とりわけママ活で失脚歴がある政治家と、クラファンで金集めをするインフルエンサーは時事に寄せた安直さがあった。キャラクタの極端さが不自然で松尾諭と今野浩喜が悪役なのも気に食わない。善が美男で悪が醜男であるという設定に日本映画の古さと多様性のなさがあらわれ、やたら愁嘆にもっていって泣かそうとするところにも日本映画らしい悪癖があらわれた。誠実まっすぐな車掌高市(草なぎ剛)が逡巡する描写が続いてアクション・パニック映画のスピード感をことごとく削ぎ、感動ポルノとアクションをどっちも取ろうとしてどっちつかずになった。VFXについては何とも思わないが海外評に安物のノートパソコンでレンダリングしたみたいだ──というのがあった。
シン~は監督より脚本家庵野秀明の映画であることがわかる映画だった。総じて日本映画の脚本には実生活感と同時代性がなく、日本(実写)映画は日本のアニメ映画に比べ、映画をあまり見たことがない人向けにつくられている。という印象を再認識させる映画だった。
imdbはBullet Train Explosionという英題で6半ばだがまだ分母が少ないから分母が増えたら6.1あたりに落ち着くと思う。