「正史 190号事案」新幹線大爆破 萎える闘魂さんの映画レビュー(感想・評価)
正史 190号事案
人間ドラマ、特に犯人像、動機、犯行シーン(爆弾設置など)の描写が希薄・・・
う〜ん、確かにそれは感じる。
まあ、だけど、前作のような「クライムサスペンス」的色合い──犯行グループの細かな背景、金の受け渡しシーンのディテール、電話線一本のみに託された国鉄側との息詰まる攻防、そして犯行グループの哀れな末路。それらと同じ事やっても仕方ないわけで。
草彅剛氏扮する車掌長(だっけ?)の気品ある職業人ぶり・キャラクター、少々クドいが引き込むに足りる乗客群像劇、そして最新のVFXとミニチュア撮影をMIXした列車走行シーンに特化した作品づくり。その徹底した姿勢には共感を抱くに充分だ。
ミニシリーズ、連続ドラマならともかく、一本の作品の限られた時間内で何でもかんでも描くのは不可能。何かを得たければ何かを棄てねばならない。手を拡げ過ぎてどっちつかずになるより、こちらの方が清々しい。
そうでありながら、実は爆弾・起爆装置をこしらえ、犯人の娘さんに渡したのは、何と50年前190号事案の主犯の一人息子! これは前作より語り継がれた正史、続編ではないか!! これには驚いた。
彼と女子高生犯人との関係性、爆弾の設置手段(車庫のセキュリティーは昔ほどガバガバじゃないそ!)がスッキリしないのは事実だが、そんな事はどうでもいい。繰り返しになるが、この作品/続編の主眼はそこではないのだ。
前作をきちんと踏襲/リスペクトしながらも、更には前に述べた新しい視点を加える事は、言うほどたやすい事ではないだろう。その困難な事業に果敢に取り組んだ制作陣には本当に頭が下がる。素晴らしい。
えー、でも少しだけ言わせて。
"のん" さん、運転士役じゃなくて、女子高生犯人の担任の先生役が良かったんじゃない? 勿体無いよ、のんさんの活かし方が。見せ場ないんだもん。せめて司令長 斎藤工氏に噛み付いたりしたら良かったのに。
「あんたらは、ただあーしろこーしろって好き勝手な事言うだけ。実際現場にいる俺達の事を本当に考えてんのか!!」by 千葉真一