「久しぶりの傑作」新幹線大爆破 LCさんの映画レビュー(感想・評価)
久しぶりの傑作
あまり邦画を観ることが無いのですが、近年観た邦画の中では久々に胸が湧いた傑作でした。
70年代のオリジナルを実際に過去起きた事件として描かれる"続編"ですが、配信開始前はそういう情報が無かったのでそこはまず新鮮と驚きがありました。
一定の速度を超えると作動し、その速度を下回ると爆発する爆弾を仕掛けられた新幹線が、爆発を回避する為に走り続けるという設定を軸に、新幹線に乗っている現場の乗員乗客と、それを如何にして救うかというJRの職員及び警視庁関係者と政府関係者の2陣営の構成で話が進みます。
パニックに見舞われる新幹線内と、ダイヤを変更してどう乗員乗客を救うかを立案するJR職員、それに加えて警察の捜査がスパイス程度に作用するといった感じですが、それぞれに緊迫感があって良かったです。
ジャンルは違いますが、龍が如く8というゲームでは近年の社会問題をストーリーに組み込んで感情を掻き立てる仕組みでしたが、本作でも乗客間のドラマに実際の事件や不祥事、トレンドのパロディを凝縮させて織り交ぜていて飽きさせない流れになっていました。そこを蛇足と捉える方もいらっしゃるかも知れませんが、自分はそういうわざとらしさみたいなものも楽しめました。
高速で動き続ける新幹線の描写や爆発など、特撮とCGを駆使した映像も素晴らしく、救出作戦の危うさやラストの大爆発は満足いくものです。1/6のミニチュアを使って撮影されたなど、シーン毎に工夫している箇所がかなりあるはずなのでもし全編に亘るメイキングが公開されれば本編と同じくらい楽しめると思います。
実際のJRの協力のもとに演出されている役者陣の演技も良く、草彅剛演じる滅私奉公的な車掌は浮つくこともなくリアリティを感じさせるものでしたし、斎藤工演じる職員も如何に全員を漏らさず生還させるかに徹底していたのが感動しました。
いろいろな方のレビューで犯人の動機が弱いとか、リアリティに欠けるといった指摘が散見され、そこには自分も同意するのですが、そこはちょっと大目に見てもいいかなと思います。
虐げられていわゆる無敵の人となった人間が何をしでかすか分からないというのは現実にも通じる部分があり、流石にいくら協力者がいたとしてもこんな爆弾は無いだろと観ながら感じましたが、それを差し引いても大変満足できる傑作でした。
あとはこれをどうにか映画館で上映して、Netflixに登録していない方々も観られれば最高だと思います。