「「時代おくれ」」「桐島です」 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
「時代おくれ」
連続企業爆破事件の指名手配犯・桐島聡の50年に及ぶ逃亡生活を、同時代人である高橋伴明監督が映画化。
あの有名な笑顔の手配写真を彷彿とさせるように、毎熊克哉がナイーブさと人の良さを醸し出して好演。無名の人間として密かに生きる日常描写が印象的。
それにしても、作中でも隣人の甲本雅裕が勘づきかけるだけで、当時、あれだけ超法規的措置を行った事件が連続する中で、なぜ公安警察が彼の手がかりすら掴めなかったのか、今となっては不思議に感じるところ。
劇中歌となっている「時代おくれ」があまりにハマっていて、気恥ずかしいくらいだが、チャーミングな北香那とのシーンはグッとくる。この歌を使ったことで、映画作品としての魅力が上がった。観終わった後も、頭の中でリフレインするほど。
晩年の安保法制や外国人ヘイトに怒りをあらわにするさまは、それまでの人物像からすると違和感があるが、そこも含めて「時代おくれ」ということか。
おそらく桐島が自ら名乗って死んだあと、すぐに動き出した企画で、高橋監督も自分が元気なうちに作品化したいと思っただろうから、低予算で粗い仕上がりになっているのは仕方ないところ。もう少し、せめてもう一年でも熟成させたら、もっと味わい深い作品になっていたような。興味深い素材で、ねらいは理解できるだけに、残念。
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