「都の西北に棲む男女でなければ成立しない?」早乙女カナコの場合は t2lawさんの映画レビュー(感想・評価)
都の西北に棲む男女でなければ成立しない?
原作が『早稲女、女、男』(柚木麻子著)。何年もグダグダ卒業せずに演劇サークルを率いている、という設定のカレ。映画では、どこかも分からない大学の設定だが、ココは思いっきり『早稲田』であるべきだった。でないと、長津田のキャラクターが、単にFランの怠け者クズになってしまう。原作通りに早稲田であれば、こういう大器晩成の、生活破綻型の天才が、熟成を待っている、という環境に納得ができるだろう。さらに、自意識過剰な地方女子高出身のワセジョを幾人か知っているが、まさに本作の早乙女のような早稲田ならではの女子大生だった。とはいえ、原作者の柚木麻子は立教OGなんだな。
思い切り『慶應義塾』のカーストを残酷に描いた「あのこは貴族」(2021年 岨手由貴子監督)は、そのヒエラルキー描写の見事さで、腑に落ちた。それは舞台が慶應である前提が故だからだ。本作では、どこに忖度したか、許可が下りなかったか、プロデュースの力不足か、大隈講堂をバックにした映画になり切れなかったところが、中途半端な普通のこじらせ恋愛ドラマに成り下がった理由だろう。
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