「爽やかな風が吹き抜ける・・・けど」風のマジム TSさんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかな風が吹き抜ける・・・けど
「真心」をもって、初心貫徹。
ストーリーも登場人物もわかりやすく、立ちはだかる苦難も、それを乗り越える主人公にも、悲壮感はない。清々しささえ感じる。
万人受けする映画という感じだ。
こういう映画は嫌いじゃない。安心して観ていられるし、鑑賞後の気分も良い。
こういう作品だと割り切ってしまえば、レビューはここで終わりなのだが・・・
もう少し、こうして欲しい、というところが2つ気になった。
1つめは、島民や醸造家の説得は実際は乗り越えるのに非常に苦労した壁だったはずだが、主人公があまりにすんなり乗り越えてしまったこと。悩み、苦しみはもっとなかったのだろうか?そこをもう少し、5分でもよいから描いて欲しかった。
2つめは、社内ベンチャー事業、営利目的の新規開発事業なのに、「数字」の話が全く出てこなかったこと。主人公の「想い」とそれに共感する人の力だけで事業は成功したかのような描き方だったが、少しはリアリティが欲しかったな。
「わかりやすさ」を重視して「想い」の焦点を当てたのだとは理解するが、そこを突っ込む課長役が突っ込まないのか・・・と思ってしまった。
とはいえ、主役の伊藤沙莉、母親役の富田靖子、祖母役の高畑淳子の3人家族の演技は本当の家族のようで見事だった。特に祖母役の高畑淳子は、豆腐作り、バーでの酒飲み、体調を崩してからの目線の演技などが自然体なのに情感が感じられてとても良かった。
個人的にはもう少し深掘りを・・・というやや薄味な印象だったが、欲張りすぎかもしれない。
