「皆さん、よく飲むね~!」風のマジム かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
皆さん、よく飲むね~!
オール沖縄のアグリコール・ラム酒作りに挑戦、契約社員から社長になった女性の実話が元の朝ドラみたいな話だが、健気さを強調する臭さとかあざとさがぜんぜんない伊藤沙莉なので好感しかない。キツい上司のシシド・カフカにあからさまにバカにされても嫌がられてもひたすら愚鈍に食らいつく。コンペに勝ち残るためにライバルを蹴落とす策略を練るなどなく、ひたすら誠実に実直にやるべきことをやって、正攻法のみで押しまくるのが彼女に合っており気持ちが良い。周囲が応援したくなるのは自然の流れ。ピンクの電話のよっちゃんみたいな先輩がいつの間にか味方になってて笑える。結構良いコンビです。
そして、高畑淳子のおばあがそらもう、天下一品。
そのへんにいる沖縄のおばあ感にじみ出る、ユーモラスで酒飲みで思ったことは口にするが孫思い、孫とおばあで行きつけのバーで一杯(いっぱい)なんて、いいなあ。そしてお豆腐も職人の意識も腕も天下一品。徐々に体が弱って引退を決意した背中が泣ける。
今まで見た高畑淳子史上最高の高畑淳子だった。
ダチョウの肥後さん、ちょっとだけ出演のガレッジセールの二人、一平と志保、慌てようが何だろうが、どこかなんくるないさ~感が漂う南大東島の人たちがみんな良い。
南大東島の村長が計画に反対だったり、上司のシシド・カフカが実績よりもネームヴァリューを優先していけ好かない(しかも専門外)東京の有名醸造家に依頼しようとしたり、ありがちで類型的な障害が立ちふさがるお約束。朱鷺岡と瀬名覇の対比も類型的。
普通に考えたらこのご時世に村おこしの提案あったら村長としてはむしろ食いつくんじゃないかと思うし、偶然届いたアグリコール・ラムを一口飲んだら反対派の皆さん一斉に賛成に転じるってアリか!?と思うが、反対派も実は村の先行きを案じていて村おこしに賛成したくてきっかけを探していたんでしょうか。
また、高名醸造家に依頼するよりも地元の実績ある醸造家に作ってもらって「オール沖縄のアグリコール・ラム」をアピールしたほうが売り込みやすいと思う。肝心の醸造家を沖縄以外から持ってきたら逆効果な気がする。
それら、困難に対して、丁寧に実直に向き合って一歩一歩前進するまじむの姿を描くためのベタな設定で許容範囲と思えました。
それにしても皆さん、よく飲みますね、老若男女、普通にちょいちょい飲んでてしかも強い。そこだけなら私もうちなんちゅーに溶け込めそう。。
嫌な奴はまじむの元上司程度で、ねじ曲がった人がいない、人もストーリーも素直な、からっとした優しいご当地サクセスストーリー。
南大東島はじめ、沖縄の風景と、沖縄の音楽がとてもよい。
森山直太朗の『あの世でね』、軽快なんだけどなんだか物悲しい感じがする。でも、好きです。沖縄のポップミュージックにはなんとなくもの哀しいものを感じてしまいます。戦争の悲劇の成分が入っているのでしょうか。
作りたてのおばあのお豆腐、大きくて美味しそう。
これね、こっちのサトウキビで造るとカリブにないコクがでるのよ。まあでもその分、クセが強いから好き嫌いが分かれるかもしれない。
とか語る滝藤賢一を見て見たかったなあ
コメントありがとうございます。
高畑淳子さんは今迄はオーバーアクトが目立った印象でしたが、今回凄く抑えてたと思います。豆腐と向き合い鋭い視線でにがりを撒く、良かったですね。



