「映画館を愛する君へ」映画を愛する君へ La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画館を愛する君へ
1960年生まれというから僕と同年代の監督が、自身の映画遍歴を振り返り、映画への思いを綴る作品です。映画好きの人にしか届かない映画かも知れませんが、しみじみした語り口が僕にはしみたなぁ。
おばあちゃんに手を引かれて初めて映画館に向かう道すがら、「映画はテレビとは違うのよぉ」と語るおばあちゃんの優しい語りがいいなぁ。そして、その初めての映画が僕も大好きな『ファントマ危機脱出』だったのも嬉しい。更に、映画館で映画を見る内に「はじめて自分の居場所を見つけた」との監督のモノローグも素敵。また、十代でベルイマンの映画に打ちのめされたと言うのも凄いなぁ。僕は、居眠りしていた。「映画はいつでも敗者を迎え入れ続ける」の言葉も優しい。
そして、本作の大きな特色が、監督の映画人生を彩った作品が次々と映し出されることです。ちょっとした一場面が現われるだけなのですが、あっ、『恐るべき子供たち』だな、『白い恐怖』だ、などと言いたくなってしまいます。この辺、通ぶりたい映画ファンの心理をよく心得てらっしゃいます。
ただ、一つだけ注文が。原題『SPECTATEURUS!』は「観客」の意味ですが、邦題は「映画を愛する君へ」ではなく、絶対に「映画館を愛する君へ」であるべきでしょ。それが無理なのは理解できますが、敢えて申し上げたい。
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