「タイトルなし(ネタバレ)」映画を愛する君へ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
デプレシャン監督の分身ともいうべきポール・デダリュス。
6歳の時(ルイ・バーマン)、祖母に連れられて初めて映画館で観たのは『ファントマ危機脱出』。
テレビではヒッチコック監督の『白い恐怖』なんかを観ていた。
14歳の時(ミロ・マシャド・グラネール)には年齢を偽って、イングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』を観に遠征した。
学生時代には自主上映会を開く。
映画はチェコのヴェラ・ヒティロヴァ監督『ひなぎく』。
文献で知っただけで観たことはない。
同胞の学生たちはチェコがどこにあるか、名前すら知らなかった。
大学生(サム・シェムール)になって、映画と演劇の違いを大学で学び、ガールフレンドの友だちと寝たこともある。
30歳(サリフ・シセ)、『大人は判ってくれない』を観て至福の時を過ごし、映画監督になることを決意する・・・
といった物語。
先に挙げた映画のほかにも『ヨーロッパ一九五一年』『SHOAH/ショア』など数十の映画の引用とモノローグでもって、青春時代を再現していくさまはドキュメンタリーと言ってもいいかも。
特に『SHOAH/ショア』に関するエピソードは、現在の時制で本人も出演しているので、ほぼほぼドキュメンタリー。
ある種の映画論のような映画でもある。
観ながら思い出したのは、次のような大林宣彦監督の言。
映画は1秒24コマの動かない画がスクリーンに連続して映し出されます。
それを観て「動いている」と錯覚するものだけど、コマとコマの間はシャッターで閉じています。
シャッターが閉じている間、スクリーンに映し出されているのは暗闇で、暗闇を観ているとも言えます。
暗闇を観ている間は、目を瞑って、自分自身の思いを観ているとも言えるでしょう。
と、まさに、本作を観ながら、わたし自身のことを思い出し、自分自身を観ていたような気がします。
ただし、引用されている映画のうち、先に挙げた重要作品(デプレシャンを形づくった映画)のことを観ているか知っていないと、本作は、たぶん眠くなるはず。
わたし的には、半分ぐらいはわかったので、そんなことはならなかったですが。
なお、エッセイ映画なので、デプレシャン監督作品にしてはとても短い90分ほどの尺です。