「もっと布教の話をさせてあげて」異端者の家 KaMiさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと布教の話をさせてあげて
女性二人が伝道のために怪しい家を訪れる話が気になり、レビューがやや低いのもわかっていながら映画館へ。結果、やはり設定の面白さは申し分ないが、それを生かしきれない感が上回る映画だった。
ヒュー・グラント演じるリード氏が若い女性(シスター)の信仰心を試すように議論を吹っ掛けるところは期待通り。モルモン教創始者の一夫多妻制や、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教がボードゲームやファストフードと同じで、オリジナルに対するコピーでしかないことを挙げて難癖をつける。
しかし知的な議論というよりも物理的に監禁された恐怖が先に立ってしまい、女性二人は立ち尽くしたまま反論できない。後半はリード氏に捕らわれたゾンビみたいな人たちが登場、ビジュアルで怖がらせるお化け屋敷みたいな場面が続いて落胆した。
人生経験豊富で理屈っぽい男性が、単に若い女性を黙らせるだけではつまらない。ましてや力づくで監禁するのでは。むしろ彼女たちなりの感情とか人生経験に寄り添い、互角の戦いをしながら論破してほしいと思うのだった。実際、シスターがファストフード店の好みを不等号(>)を使って列挙するあたりはおかしみがあった。
また宗教は力でねじ伏せるよりも自発的に信じさせることに本当の怖さがあるはず。ストーリーの終盤でシスターの一人が「私たちを自分自身の意思で殺させようとしている?」と毒づくあたりは鋭いと思った。そんな心理戦もリード氏がシスターを刃物で切り裂くように殺害するので台無しになってしまうのだが…。
そういうわけで、鑑賞中はまるで屋敷に捕らわれているのと同じく、早くこの映画が終わって欲しいと思わざるを得なかった。それでもリード氏が宗教や音楽が「反復」でしかないと指摘するのは本質をとらえている。
入信するかどうかは別として、自分の死生観や世界観を確かめるため、宗教の映画は見ておく価値があると思うのだ。
最後に、パクリを指摘されたレディオヘッドのクリープが、まるでリード氏の弾き語りのようにおどろおどろしく鳴っていたのは笑ってしまった。エンドロールを見る限り、特に加工はしていない原曲通りなんですよね。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。