「あなたにとっての宗教は、思考の対岸にあるものか、思考に包括されるものかどちらだろうか」異端者の家 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたにとっての宗教は、思考の対岸にあるものか、思考に包括されるものかどちらだろうか
2025.4.26 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカ映画(111分、R15+)
LDSの布教活動を行うシスターと宗教的異端者との交流を描いたスリラー映画
監督&脚本はスコット・ベック&ブライアン・ウッズ
原題は『Heretic』で「異端者」という意味
物語の舞台は、とある町にてLDS(末日聖徒イエス・キリスト教会)の布教活動をしているシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)とシスター・パクストン(クロエ・イースト)が、ポルノの話をしているところから紡がれる
パクストンはポルノの中でセックスを中断せざるを得なくなったカップルの話をして、その時に素になった女性の様子を嬉々と話していた
さらに彼女は、そのシーンにて神がいることを悟ったとまで言い出す
バーンズは「そのようなビデオをよく見るのですか?」と聞くものの、パクストンはそれを否定した
その後二人は、シスター・ホールから指定された家を回っていくものの、地域住民からは色眼鏡で見られ、「魔法の下着はつけているのか?」とイタズラまでされてしまう
そんな折、雲行きが怪しくなってくるものの、二人はリード氏(ヒュー・グラント)が住む邸宅へと辿り着くことになった
リード氏は知性的で紳士的な白人男性で、二人は「女性の同居者がいなければ玄関で話す」と伝える
リード氏は奥で妻がブルーベリーパイを焼いていると言い、それを信じた二人は招かれるままにリビングへと入る事になった
物語は、そこで宗教の話になるものの、バーンズが何らかの異変を感じている様子が描かれていく
不審に思った彼女は、教会から電話が来たと嘘をついて帰ろうとする
だが、この家は電波が入らない作りになっていて嘘がバレてしまい、さらに鍵はタイマー式で朝まで開かないと言われてしまう
バーンズの懸念は現実のものとなり、二人はリード氏の監禁状態になってしまうのである
映画は、宗教を研究してきたリード氏が「宗教が抱えるある根幹を見つけた」と話すところから動き出す
彼は「究極の宗教とは支配である」と言い、布教活動はマーケティングの一環であると言い出す
そして、古くから国民の中で愛されてきたボードゲームを引き合いに出し、宗教は反復を繰り返したのちに、今の形になったと語る
ゲームはある種の元々概念が遊戯化したもので、その構造の有用性に気づいた者が広め方を研究したと言う
そして、それがそこそこ売れた古典のボードゲームと、本質的には変わらない新めの売れたボードゲームとして例えていく
だが、バーンズは宗教を貶める言葉だと思って反発し、それによってリード氏は「宗教における奇跡を再現する」とまで言い出してしまうのである
好きな人にはたまらない感じだが、内容に興味が持てないと一瞬で眠りにつける映画だと思った
基本的に3人による室内会話劇なので、場面転換はほとんどなく、後半に限らず照明が落ちるシーンなどがあって思った以上に暗い
それに反して字幕が明るいので、スクリーンに近すぎると辛いように思えた
内容に関しては、個人的には大好物な部類で、究極の宗教は支配というのも面白いし、個人的には「宗教の対義語は思考」とさえ思えるような愉快な論戦が展開されていた
ボードゲームや有名なパクリ騒動を例に出しているのだが、それらは日本では馴染みが薄めなのが辛いところだろうか
ニュアンスで何となくわかるので、何かしら自分の知っているものに置き換えれば身近に感じられるのかもしれません
いずれにせよ、実は主人公はパクストンだったという方が衝撃的で、この騒動の中で最も変化した人物であるように思う
彼女たちはユタ州出身で、いわゆるLSDの本拠地のために、生まれながらにしてLSDという側面は否めない
いわゆる二世信者的な部分があって、バーンズはそれらを自分の思考と合致させる努力をしてきたし、パクストンはまだ未熟なところがあった
バーンズほど思考と合致してくると布教活動でも色んな言い回しや例え話、相手の疑問に答えられる即興性を持ち合わせられるだろう
だが、映画では、研究者リード氏を否定し、バーンズも奇跡を起こすアイテムとして使われていて、最終的に生き残るのがパクストンだった
彼女は祈りは美しいと言い、それはリード氏のような人物のために祈ることも同等であると考えるに至っている
また、劇中にて「胡蝶の夢」が引用され、この一連の出来事が「パクストンが見た夢」のようにも思える
だが、蝶は実在し、最終的には彼女の手がから飛び立っていくことを考えれば、夢で起きたことも、現実で起きた奇跡も同等に自身の祈りに吸収されていくものと言えるのだろう
そうした理解が深まることこそが宗教の本質であるとも言えるので、本来は「宗教=思考」だったものが、今では「宗教≠思考」に成り下がっているという警鐘を含んでいるのかな、と感じた
こんにちは。
コメント失礼しますm(__)m
とーーっても読み応えのある、素晴らしいレビューでした。
繰り返して読みました。
私も好きな部類の作品なのですが、宗教や信仰について無知なので、理解出来ない部分が多かったと思います。
Dr. Hawkさんのレビューを拝読できて、作品の理解が深まりました。
ありがとうございます。
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