劇場公開日 2025年2月7日

「何かよくわからないものを凄いものと思わせることが重要」ヒプノシス レコードジャケットの美学 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0何かよくわからないものを凄いものと思わせることが重要

2025年2月12日
iPhoneアプリから投稿

昔の洋楽レコードジャケットの誕生秘話を製作者が解説していく内容。
きっとそういうものに詳しい人が観れば感動の連続だと思うが、残念ながら自分はそうではない。
「ピンク・フロイド」ってなんか聞いたことあるなあ、ぐらいの人間。
牛が写った画像を見ても、それがレコードジャケットとは言われないとわからないレベル。

本作を観ていて思ったことは、映画のポスターと違ってレコードジャケットはそれだけ見ても何のことかよくわからない、芸術過多なものが多い気がする。
映画内のある人物が言う「何かよくわからないものを凄いものと思わせることが重要」という言葉に妙に納得。
芸術の本質をついているような気がした。

昔はコンピューターに頼らず本当に撮っていたわけで、CGで何でもできちゃう今の時代では、逆に貴重で価値があると思う。
必要とあらば1枚のアートワークを撮るためだけに、実際にサハラ砂漠まで足を運ぶ行動力は凄い。
「燃える男」を表現するため、スタントマンが着ている背広に火をつけて何枚も写真を撮っていたところ、頭まで火が燃え移る想定外の事故が発生。
実際のレコードジャケットには頭が燃えている場面が使われているが、映画内だとこの後に救助シーンが出てきて、呆気に取られてしまった。

レコードジャケットの画像が世間に浸透した理由が「ビジュアルが優れているから」なのか「バンドが売れたから」なのかは面白い問いかけに感じた。

『アニマルズ』というレコードジャケットの没案で「子供が親の行為を目撃する場面」というものがあって笑った。

良いものを生み出すために盗作やドラッグを肯定するような場面が出てくるのは、ちょっと気になった。

音楽関係の人間が成功して莫大な利益を生み出すも、時代の変化に対応できず、晩年は借金地獄になる展開、音楽ドキュメンタリーにとても多い気がする。

おきらく