蝶の渡りのレビュー・感想・評価
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【”そして、ジョージアの芸術家たちは蝶の様に祖国を離れ、新たな人生を求めた。”ジョージアの戦争、離散の歴史を、芸術家たちの物語として敢えて明るいトーンで描いた作品。】
■1991年。ソ連崩壊により若き希望に満ちた芸術家たちの心に、独立後のアブハジア、南オセアニアで分離独立運動が起き、両国は独立状態になっている。
という事が、序盤映像と共に語られるが、この作品のトーンは明るい。
27年後。画家コスタ(ラティ・エラゼ)の半地下の家には、様々なジョージアの芸術家が集っている。皆、貧しいが、、楽し気に暮らしている。クリスマス、誕生日パーティ。
そこには、コスタの元恋人ニナ(タマル・タバタゼ:初めて見たが、物凄い美人である。オードリー・ヘップバーンに激似であり、目が釘付けになる。)もいる。
彼らはコスタの部屋に、美術商を呼んで絵を買って貰ったりするが、ある日アメリカ人の美術商、スティーブがやって来てコスタに一目ぼれする(そりゃ、そーだ。)そして、シャンパンを飲んだ勢いでプロポーズ。迷うニナをコスタは”新しい世界に行きなよ”と送り出す。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、ジョージアは映画大国である。最近でも「ブラックバード、ブラックベリー、私は私」「TATAMI」「ゴンドラ」を見たばかりである。
どの作品もレベルが高くて、嬉しかったものである。
・で、今作。コスタを始め、皆、電気を止められたり大変な状況なのだが、明るい。そして、ニナを始め、蝶収集家のイタリア人が来れば、彼を落とそうとする女性ナタなどの行動が可笑しい。
・コスタの部屋には多くの絵画が置かれている。彼らが描いた絵なのだろう。コスタ達、芸術家たちはそれらの絵を美術賞に売っている。
だが、コスタはスティーブが”蝶の渡り”を気にいったと言った時に、”これは、売れないんだ・・。”と言うのである。成程。
・ロマの人達から呼ばれれば、演奏家ミシャは出かけるし、逞しいものである。
■可笑しかったのは、ニナがアメリカに渡った後に送られて来る義母との動画である。二人で着物を着て、生け花などをやっている。ニナはつまんないなどと言いながら、殊勝な顔で義母の言う事を聞いているのである。
<今作では、コスタは過去も元恋人のニナも、更には家も惜しげもなく手放す(取り壊される)。けれども、彼は悲観した感はない。家が無くなれば、馬小屋に住むなどと言っている。
彼の穏やかな眼は、失う寂しさよりも、未来への希望を観ているようなのである。
けれども、ラスト、ニナはアメリカから戻って来るんだけどね。クスクス。作品の柔らかくて、明るいトーンが好きだなあ。>
<2025年3月30日 刈谷日劇にて鑑賞>
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