「トラウマ検知器」SKINAMARINK スキナマリンク Tiny-Escobarさんの映画レビュー(感想・評価)
トラウマ検知器
深夜、両親がいない家。主人公は幼い子供二人。
最初のペースは緩やかですが、その過程でありとあらゆる恐怖のツボを押しまくってきます。
個人的には5分の3ぐらい拾えた気がしていますが、どれだけ怖がれるかは、北米で育ったかどうかというのも大事な気がしました。
点きっぱなしになったテレビから漏れるストロボのような光、ベッドの下、光が届かない二階への階段、目を凝らせると人のように見える影。
日本なら、夜に必ず布で覆われる鏡とか、一体だけ片付けられない雛祭りの人形とかでしょうか。
幼少のころから原体験として染みついている怖さに訴えかけるような表現が、多くありました。私は、幼少期に親が喧嘩していたときの壁越しの物音が苦手なので、レゴが片付けられるような音を聞いたときにその記憶が蘇り、ざらざらとしたような、苦くて怖い思いをしました。
ただ、トラウマ検知器としては優秀ですが、映画としては余白だらけです。具体的なバックグラウンドも、主人公がケイリーとケヴィンの幼い姉弟で、ケヴィンは夢遊病癖があって階段から落ちた、ということぐらいしか分かりません。あとは、元々母が家にいないのか、二人が呼びかける相手は必ず父だということぐらい。
そんな中、際立って具体的なのは、『572日が経過』というテロップ。
この姉弟は、一年半もこの悪夢を繰り返しているのだろうかと思いましたが、Redditで書かれている『ケヴィンは階段から落ちたことで昏睡状態になっていて、それが572日経っている』という説は最恐でした。
体の自由が効かない中、意識下で窓のない家に閉じ込められ、何度も殺される。地獄です。
それなら、視点がケヴィン以外にシフトするのは変な感じがしますが、数字に対する説明としては、本当に見事です。
だとすると、本編はエンドクレジットから始まるので、571日目の終わりからスタートしていたのかと思えてきます。
この説を読んでからは、572日目の最後に浮かび上がる母親(?)の顔が、現実であることを願うようになりました。あれは、ケヴィンが長い昏睡から目を覚ましたときに見えた顔だと信じたいです。
不意に陰影が顏に見えたり、とにかく緊張を強いられる映画でした。感情移入できるキャラクターもいないので、自分VS映画の状態がずっと続きます。
ジャンプスケアが何度かありますが、私にとってはノイズからの解放でした。
人を選ぶ映画ではありますが、人生で怖い思いをしてきた数が多いほど、刺さるポイントが多く見つかる映画だと思います。