「Scope」HERE 時を越えて ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Scope
時代背景の違うひとつの場所を定点カメラでお送りするという画期的なアイデアに惹かれ鑑賞。
アイデアは確かに面白かったんだけど…映画的な盛り上がりには欠け、数十年前の家族の現代までにフォーカスを当ててしまってるせいか時代の振れ幅が狭いのがどうも気になってしまいました。
時系列は結構反復横跳びするのでややこしいことになっており、順々に進めるのかと思いきや、大昔から最近、最近から大昔と移り変わっていくので大変でした。
基本的にもどの時代でも愛の営みが描かれており、それを咎める時代もあれば、受け入れる時代もあり、そもそも自分たちで判断せざるを得ない時代もあったりと、どの時代でも大変な事に変わりはありませんが、その営みがあったからこそこうやって生きていけてるんだな〜となったりしました。
基本的には男たちがちょい滑稽な行動をして、それを妻が戒めていくって流れですが、決して説教くさいわけではなく、無意識にやってしまっている行動は直さないとね〜くらいの感じなのは好感が持てました。
老いは確実にやってきており、体の変化はもちろん、関係性の変化というものを強く描いていたのは興味深かったです。
出会った当初はラブラブでも月日が経って、子供も大きくなって、嫁姑の問題も出てきて、夫婦で考えがすれ違いだして…と問題が積み重なってからの熟年離婚となっていく流れはリアルだなと思いましたし、そういう事例を実際に聞いたことがあるので、こういう風に別れるってもう自然のことなんだろうなとシュンとなってしまいました。
定点カメラの映像で面白いのはバラエティをはじめとしたハプニング要素だったり、密室空間でのトラブルだったりが面白さを加速させていく気がするんですが、今作は普通の家族の人生を描いているのでハプニング的な要素はほぼなく、しっかり人生なのでその辺りも見応えが感じられなかった要因だったなと思いました。
地球が誕生したタイミングとか、戦争真っ只中の時代とか、もっと見たい時代はあったのにひとつの時代に全振りしてしまったがために、観たいのはそこだけじゃないんだよな感が強くて残念でした。
技術のフル活用でトム・ハンクスはじめ同じキャラクターの一生をやり切ったのは凄かったです。
それを知らずに見たので、この人歳の割に声が掠れてるなとは思いましたが、その違和感くらいで他は帳消しにしているは凄いなとなりました。
映画というよりかはそういう教育番組のようでした。
NHKで放送されたら気になって見ていたと思いますが、大スクリーンで観るかと聞かれると微妙なラインの作品でした。
ラストシーンはおおっとさせられただけに全体的な満足度の物足りなさが足を引っ張ったかなと思いました。
鑑賞日 4/6
鑑賞時間 17:55〜19:50
座席 G-5