劇場公開日 2025年2月7日

「被害者か加害者か」ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女 さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0被害者か加害者か

2025年2月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

ポスターに書かれたタイトルの言葉が心に突き刺さる映画でした。

オープニングはまだ平和だった頃のベルリン。
美貌に恵まれて、野望を持ち、少々自分勝手で他人への思いやりに欠けるように見える主人公ステラ。

やがてユダヤ人への迫害が激化する中、ユダヤ人であるばかりに理不尽な運命に翻弄されて、いくつもの選択を経てステラがたどり着いたところは…

中盤まではステラの保身と自己憐憫、身勝手さにイラッとするシーンが多々ありましたが、ユダヤ人迫害が益々激しさを増すうちに、彼女だけを責められないという思いが胸裏に満ちてきました。
自分が彼女と同じ境遇に陥ったら、彼女と同じ行動をとらないとは断言できないと。

ステラの内面の醜さと哀れさがミルフィーユのように重ねられた映像の構成は見事でした。
ステラに同情したとたんに、彼女を殴り倒したくなるようなシーンが挟まれて、やがてまた彼女なりの苦しみが観客の胸に迫る。
重ねられたシーンから人間が内面に持つ複雑さを重厚に描き出す手法は見事としか言えません。

仕方がなかった、こうするしかなかった。説明はいくらでもできるけれど、自分を欺くことだけはできなかった。
ホロコーストという重いテーマに乗せて極限状況下の人間性を鋭く描き出した作品でした。

さとうきび