劇場公開日 2025年1月31日

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「新しい悪魔映画」邪悪なるもの 赤足さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 新しい悪魔映画

2025年9月15日
iPhoneアプリから投稿

小さな村で発見された異様な死体。それは“悪魔憑き”の拡大の前触れだった。腐敗した肉体とともに感染のように広がっていく恐怖。教会も祈りも効力を失った世界で、人々は古くから伝わる“7つのルール”を頼りに災厄を避けようとする。しかし恐怖と無知、そして人間の弱さが次々とルールを破らせ、惨劇は止まらない連鎖となって村を呑み込んでいく。

物語の骨格はゾンビ映画を思わせながらも、『28週間後』のようなパンデミック的要素あるスピード感で拡大する恐怖が際立つ。さらに、『オーメン』に登場する“悪魔は嘘をつく”というテーマを組み込み、疑念と不信が人々を追い詰めていく。その結果、感染の恐怖と悪魔的欺瞞が重なり合い、観客はどこにも逃げ場のない絶望に閉じ込められる。

印象的なのは、“7つのルール”を守るか否かで突き付けられる非情な代償だ。選択の結果は常に残酷で容赦がなく、救いの一片も与えられない。その無惨さこそが物語を突き動かし、観客を徹底的に打ちのめす。ここには「普通の等価交換」など存在せず、代償は常に理不尽で非条件的に訪れる。それこそが悪魔らしさであり、本作の恐怖を独自のものにしている。

視覚的には腐敗や惨劇を生々しく描き、倫理的タブーをためらいなく越えていく。そのグロテスクな映像はショックを与えるだけでなく、この世界における絶望をリアルに突きつけるものでもある。救いの欠片もないストーリーは観る者に重さを残すが、だからこそ強烈な余韻と「悪とは何か」という根源的な問いを生々しく終わりなき恐怖の感染を感じるだろう

赤足
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