「無知なるものと、善人だと思い込んでいるものが、悪魔に一番近いのかもしれません」邪悪なるもの Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
無知なるものと、善人だと思い込んでいるものが、悪魔に一番近いのかもしれません
2025.2.6 字幕 アップリンク京都
2023年のアルゼンチン&アメリカ合作の映画(100分、R15+)
ある田舎町の異変を描いた伝染系ホラー映画
監督&脚本はデミアン・ルグナ
原題は『Cuando acecha la maldad』、英題は『When Evil Lurks』で、ともに「悪魔が潜むとき」と言う意味
物語の舞台は、アルゼンチンのヘネラル・ピラン郊外の田舎町
そこに住むペドロ(エセキエル・ロドリゲス)とジミー(デミアン・サロモン)は、ある夜に奇妙な銃声を聞いてしまう
ペドロは猟銃ではなくリボルバー式の拳銃の音だと言い、夜が明けてから探索をすることになった
一帯は地主のルイス(Luis Ziembrowski)が仕切っていて、ペドロも隣人のマリア・エレナ(Isabel Quinteros)も借地人として農場を経営していた
森に入った二人は、そこでマリア・エレナの家へと向かったと思われる一体の惨殺死体を発見する
鋭利な刃物で体を真っ二つに切り裂かれていて、そばにはジミーが見覚えのある何かの部品が散乱していた
ともかくマリア・エレナの家に行けば何かわかると思って向かう
だが、そこには「腐敗者」となった彼女の息子のウリエル(Pablo Galarza&Gonzalo Galarza、声:Berta Muñiz)がいて、彼女らは「処理人」を待っていた
だが、その処理人はたどり着く前に何者かに殺されていて、ペドロがそれを伝えることになった
物語は、ペドロが地主のルイス(Luis Ziembrowski)に相談をして、ウリエルを村の郊外に捨てようと考えるところから動き出す
村から数百キロ離れた場所に向かうものの、通行人と事故りそうになってしまう
何とか目的地に辿り着いたものの、いつの間にかウリエルはどこかに消えていて、通行人を避けようと急ブレーキを踏んだ時に落ちたのではないかと思われた
ペドロは「探すべきだ」と主張するものの、ルイスは「村からかなり離れたから問題ない」と言って、探すこともなく村に戻ることになった
だが、この事態を重くみたペドロは、家族を連れて村を脱出しようと試みる
母サラ(Paula Rubinsztein)を連れて、元妻のサブリナ(Virginia Garófalo)のところに向かうものの、かつての事件で「接近禁止命令」が下っていて、彼女は拒否反応を示す
彼女の今の夫レオ(Federico Liss)もパブロがとち狂ったを考えるものの、パブロは強硬な姿勢を崩さない
彼は自分の息子ジャイル(エミリオ・ボダノヴィッチ)を車に乗せ、レオの息子・サンティーノ(Marcelo Michimaux)と娘のビッキー(Lucrecia Nirón Talazac)も連れて行こうとする
だが、そこでレオの愛犬ロジャーがいきなりビッキーを襲ってどこかに消えてしまい、それを起点として、カオスな世界が訪れてしまうのである
映画では、悪魔に憑かれたものを「腐敗者」と呼び、それと遭遇した時には「7つのルール」というものがあった
サラはサンティーノに対して、「電気をつけてはダメ」「動物に近づいたらダメ」「悪魔憑きに近づいたものを身につけてはダメ」「彼らを傷つけてはダメ」「悪魔の名前を呼んではダメ」という6つのルールを伝える
サンティーノは一つ足りないというものの、サラはそれで全部だと思い込んでいた
そして、最後の一つは、ジミーの知り合いである元処理人のミルタ(シルヴィナ・サバテール)によって、「死を恐れては行けない」というものが判明する流れになっている
最後の一つを含め、そのルールは「処理人のルール」のようなもので、それを知る人々は災厄を避けることができるという感じに思えた
だが、無知なる者は禁忌を犯し、それによって悪魔は「伝染」してしまうのである
この悪魔は、コロナをモチーフにしている印象があって、それゆえに「伝染」という言い方をしているのだと思う
また、教会は滅んだというが、医療崩壊を起こしているようにも聞こえてくる
体が腐るものもいれば、精神を侵されるものもいて、腐敗の場合は進行速度も遅く治癒も難しい
だが、主に子供たちが感染して起こる瞬間的な精神支配の方は、免疫が作られれば元に戻るのかな、と思った
パンフレットなどが作られていないので、どのような意図で作られたのかはわからないのだが、腐敗者の体液を受けてはダメとか、さわってしまったら体を清める、服を燃やすなどの対応が、そのまま強度な感染症への対策のように思えた
いずれにせよ、ほとんどのキャラが喚き散らして理性的な行動を取れないところとか、善人だと思っている主人公が一番ヤバい行動をするなどの面白みがあって良かった
グロ描写はそこそこあるので耐性が必要だが、ウリエルがキモいのと、最後のシーンがちょっと気持ち悪さがあるかなと思った
田舎町で情報が伝聞しかないというところがリアルで、主人公がキリスト教の聖人の名前なのも色々と攻めているなあと思った