オークション 盗まれたエゴン・シーレのレビュー・感想・評価
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憧れのインディ・ジョーンズ
1939年から行方不明だったエゴン・シーレのひまわりがみつかり沸き立つ話。
ミュルーズの化学工場で夜勤労働者として働く親孝行の青年マルタンが、ロトを買いに行った店に置かれた美術の冊子が目に入り巻き起こっていくストーリー。
半分以上あらすじ紹介に記されている通りだけれど、上司の紹介で雇った嘘つき研修生のドラマや、絵のを交えつつ展開していく。
大波がある作品ではないけれど、絵を巡って揺れ動く登場人物たちの機微がとても面白く、そんな中でみせるオークションはお見事だった。
等身大に生きることの幸せ
フランス映画好きにはたまらない
錯綜する登場人物と深い余韻、名作!
休日だが、1回目の上映のせいか文化村ル・シネマは空いていた。あんまり評判ではないのかな、と思いつつ、見終わった後の余韻は大きかった。今もまだまだ、なかなか消化できない感じである。
本作は事実を元にして、登場人物と物語は創作だという。その登場人物たちが錯綜して、だれが主人公なのか、自分を託して見る人物が定まらない。そこがこの映画の消化を難しくしている。
が、それこそが鑑賞後の考えさせられる要素の多さでもある。それぞれの人物が、この映画の軸となる事実に翻弄されつつ、自分の道を見つけていく、その様が魅力的だ。
軸となる事実はタイトルで示されている通りだ。エゴンシーレの絵が盗まれて、それが発見されオークションにかけられた。その歴史的事実も映画の中で丁寧に登場人物たちによって説明される。
ナチスの強奪した絵画だったのだ。しかし、エゴンシーレの絵は価値のないものとされ、無名のナチス関係者の手に渡り、その価値に無関心な労働者階級の家庭に引き継がれていた。
その名画の歴史的発見からドラマは始まる。現代においては、その名画の金銭的価値は途方もないものだ。その周囲に欲望と駆け引きのドラマが展開される。サスペンスたっぷりの展開に引き込まれる。
そして、たくさんの登場人物たちの個人的な想いが交錯し、その金銭的価値も膨れ上がっていく。その結果は…。
ということだが、ネタバレを避けつつ、一人の人物に惹きつけられた。
宝くじにあたり、途方もないお金を手に入れた人が必ずしもその後幸福になれないというのは、知られていることだが、ある人物はその富に惑わされない素晴らしい智慧を持っていた。意外な人物だ。
思わぬ幸運にも惑わされず、平穏に生きる億万長者が身につけている人物たちの共通点を読んだことがあるが、その人物は、そうした億万長者たちにつながる智慧を持っていた。
そのほかの人物たちもこの事件からなにかしらの人生の知恵を手に入れていく。
ハッピーな気持ちにさせてくれ、なおかつ自分の人生の選択に多くの示唆をくれる映画だった。映画館の混み具合からあまりヒットしているようではないが、ぜひオススメしたい。
整理しきれないほど多くの示唆に考えさせられると同時に、心温まる素晴らしい映画でした。
周りにではなく、仕事に誠実な人
絵画という価値
まず言う、言う、言う!そして冷静と理性と観察
脳と心がビリビリ痺れる映画だった。登場人物達の頭の回転の早さ、自分が何を言うかが先決、言葉少なくピリッとしたスピード感溢れる台詞に心臓が掴まれた。相手に悪く思われたくないとか空気を読むという概念がそもそもない!但し: 大事な人には後で謝る。頭を冷やしてから。その謝罪に耳を傾けてもらえる。そのやりとりが何回か繰り返され相手を観察し自分を客観視する、の繰り返しを経て(彼らの人間観察眼は半端なく凄い)初めて人間関係が構築される。フランス人は人間が好きなんだと発見した思い。イタリア人は人間好きだけど家族&親戚が優先で少し重い。日本人はどうだろう?日本人はあんまり人間好きではないような気がする。
フランス人のお洒落は男女ともにイタリアと異なる。フランスは色づかいが控えめでナチュラルでラフなぞんざいさが同居して決め過ぎない。ヘアスタイルとメイクもナチュラル。車や時計やオーダーメイドのスーツは男の復讐とガッツの源らしい。
ストーリー。ナチによるユダヤ人富豪からの絵画没収と退廃芸術の歴史と儲けたい詐欺が絡む。「黄金のアデーレ」のようにまたしてもオーストリア。オーストリアはドイツよりずっとナチ。現在のヨーロッパで極右政党政権はオーストリアから始まる。
絵画。やせ細って骨が浮かび上がるシーレの絵からは裸体の叫びが聞こえる。何も知らない子どもの目は大きく見開いている。この映画では人間の絵でなくてほっとした。ひまわりだ。ゴッホ、クリムトも描いたひまわり。シーレのひまわりはゴッホともクリムトとも異なる。好きな絵、見たい絵を求めて美術館を巡り巡り、一つの絵の前に腰を下ろし休憩兼ねてずーっと見ていたのをついこのあいだのように思い出した。
研修生オロール(この子、大好き)のパパの言葉:「我慢、妥協、下方修正。それが人生だよ」。目がきれいで純粋なマルタンの誠実な決断と生き方がこの映画を美しくおさめた。
おまけ
どうしても見たくて翌日の今日また見に行った。昨日よりずっとたくさん笑えた。あっさりして手練れの撮影と編集。演出と演技が何とも言えず素晴らしい。登場人物へのフォーカスをあちこちに移動させるのが見事で過剰な説明もなく全部見せたりもしない。フランス映画、Enchante' ! (2025.01.11.)
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