オークション 盗まれたエゴン・シーレのレビュー・感想・評価
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オークションを取り巻く、人間模様が興味深い!
登場人物がそれぞれに魅力的。上司と部下、友人同士の諍い、それらも、あるあるな状況が沢山出てくるのだが(日本より直接的で、そんなこと言っちゃうの?という場面も多々あるのだが)、
お互いに折り合いをつけつつ、許し、前に進んでいく姿が良かった。
オークションという、全く馴染みのない、想像もつかない世界の事がよく分かったのも良かった。鑑賞後のトークショーで、オークション会社の代表の方が、ほぼ忠実に描かれていると仰っていたので、きっとそうなのだろう。浮世絵を、後刷りだと思って、値段を安くつけて出品し、実際にはみるみる上がって、君もまだまだだな、と言われたという話、とても印象的だった。
主人公のアンドレも、オークションが成功に終り、最後は会長職までオファーされるまでになるが、田舎から出てきて、若い頃は様々な経験を経たんだろうなと想像した。
内容とは関係ないが、アンドレの部屋、部下の女性の部屋、あとは、青年マルタンの家が出てくるが、それぞれの部屋の内装に注目していたら、大変興味深かった。
観た後、前向きな気持ちになれ、個人的にはとても好きな映画。
周りにではなく、仕事に誠実な人
絵画という価値
まず言う、言う、言う!そして冷静と理性と観察
脳と心がビリビリ痺れる映画だった。登場人物達の頭の回転の早さ、自分が何を言うかが先決、言葉少なくピリッとしたスピード感溢れる台詞に心臓が掴まれた。相手に悪く思われたくないとか空気を読むという概念がそもそもない!但し: 大事な人には後で謝る。頭を冷やしてから。その謝罪に耳を傾けてもらえる。そのやりとりが何回か繰り返され相手を観察し自分を客観視する、の繰り返しを経て(彼らの人間観察眼は半端なく凄い)初めて人間関係が構築される。フランス人は人間が好きなんだと発見した思い。イタリア人は人間好きだけど家族&親戚が優先で少し重い。日本人はどうだろう?日本人はあんまり人間好きではないような気がする。
フランス人のお洒落は男女ともにイタリアと異なる。フランスは色づかいが控えめでナチュラルでラフなぞんざいさが同居して決め過ぎない。ヘアスタイルとメイクもナチュラル。車や時計やオーダーメイドのスーツは男の復讐とガッツの源らしい。
ストーリー。ナチによるユダヤ人富豪からの絵画没収と退廃芸術の歴史と儲けたい詐欺が絡む。「黄金のアデーレ」のようにまたしてもオーストリア。オーストリアはドイツよりずっとナチ。現在のヨーロッパで極右政党政権はオーストリアから始まる。
絵画。やせ細って骨が浮かび上がるシーレの絵からは裸体の叫びが聞こえる。何も知らない子どもの目は大きく見開いている。この映画では人間の絵でなくてほっとした。ひまわりだ。ゴッホ、クリムトも描いたひまわり。シーレのひまわりはゴッホともクリムトとも異なる。好きな絵、見たい絵を求めて美術館を巡り巡り、一つの絵の前に腰を下ろし休憩兼ねてずーっと見ていたのをついこのあいだのように思い出した。
研修生オロール(この子、大好き)のパパの言葉:「我慢、妥協、下方修正。それが人生だよ」。目がきれいで純粋なマルタンの誠実な決断と生き方がこの映画を美しくおさめた。
おまけ
どうしても見たくて翌日の今日また見に行った。昨日よりずっとたくさん笑えた。あっさりして手練れの撮影と編集。演出と演技が何とも言えず素晴らしい。登場人物へのフォーカスをあちこちに移動させるのが見事で過剰な説明もなく全部見せたりもしない。フランス映画、Enchante' ! (2025.01.11.)
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