「【エゴン・シーレの”ひまわり”が、貧しい家の中で見つかった事で巻き起こる、様々な人々の欲望の形をシニカルテイスト満載で描いた作品。真の貧富の意味や、嫌味な男が人間性を取り戻す様も描いています。】」オークション 盗まれたエゴン・シーレ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【エゴン・シーレの”ひまわり”が、貧しい家の中で見つかった事で巻き起こる、様々な人々の欲望の形をシニカルテイスト満載で描いた作品。真の貧富の意味や、嫌味な男が人間性を取り戻す様も描いています。】
■パリの化学工場で夜勤シフトで働く青年マルタン(アルカディア・ラデフ)の家で、エゴン・シーレの”ひまわり”らしき絵が見つかる。
オークション・ハウスで働く抜け目のない有能な競売人、アンドレ・マッソン(アレックス・リュッツ)は、その絵画の鑑定依頼を受ける。当初は贋作と疑ったアンドレだが、念のため、元妻で相棒のベルティナ(レア・ドリュッケール)と共に、マルタンの家を訪れる。
現物を見た2人は驚き、笑い出す。それは間違いなく且つて、ナチス・ドイツが略奪したシーレの傑作”ひまわり”だったのだ。思いがけなく見つかったエゴン・シーレの絵画を巡って、さまざまな思惑が動き出す。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭から、アンドレ・マッソンがムッチャ自覚無き嫌な奴である。研修生のオロール(ルイーズ・シュヴィヨットィ)との会話は、彼が意図せずに上から目線で話す為、険悪である。
そして、到頭”貴方が嫌い!”とまで言われて、職場を去られるのである。
・物語は、結構分かりにくい。オロールと本当の父親の関係なども描かれつつ、自信家のアンドレ・マッソンが、見事に騙されそうになって、酒浸りになったり、けれども、それをオロールに助けられたりするのである。
ハッキリ言って、もう少し上手く脚本が書けないもんかなあ、と思いつつ、アンドレ・マッソンが酒をかっ喰らって、伸びている姿などを楽しく鑑賞する。(私も、相当に嫌な奴である。)
・だが、マッソンはオロールに詐欺に騙されそうになったところを助けられ、見事にオークションでシーレの傑作”ひまわり”を、高値で売りさばくのである。
そして、彼は会社から、その報酬として会長職を提示されるが、それを断り会社を辞め、元妻と仕事をする事を決めるのである。
・今作で爽やかなのは、パリの化学工場で夜勤シフトで働く青年マルタンの態度である。高額で売れたのに、母のために家を買い、自分のためにはエレキギターを買っただけで”生活を変えたくない。”と言い、夜勤の仕事を続けるのである。
宝くじに当選し、多額の金を手にすると身を持ち崩す人が多いという話は偶に聞くが、マルタン君は大丈夫だね。賢く、優しい青年であるよ。
<今作は、エゴン・シーレの”ひまわり”のオークションを通して、真の貧富の意味や、様々な人の欲の形を多少シニカルに描いた作品なのである。>
<2025年3月23日 刈谷日劇にて観賞>