「時に並行し時に交錯する“2つ”の物語」満ち足りた家族 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
時に並行し時に交錯する“2つ”の物語
利益を優先する弁護士の兄ジェワンと人助けを信念とする医者の弟ジェジュ。
相容れない二人は月に一度、妻を引き連れて食事会を行っていた。
ある交通事故に際して、加害者の弁護を担当するジェワンと被害者の手術を担当するジェギュ。
そんな中で起きた親としての真価が問われる事件に、二つの家族は崩壊していく。
韓流サスペンス要素増し増しのこれぞ韓国映画!な一本。
冒頭と結末が結びつく何とも秀逸なストーリーラインに感動した。
車というキーアイテムを使って、他人事が自分事に置き換わる様を描くのはこれ以上無いんじゃないだろうか。
結局何も解決していないが、「お前らが全部悪い。後のことは知らない。」と言わんばかりに突き放すラストには清々しさすら覚えた。
冒頭からのシバルセッキの応酬には少し笑ってしまったけれど、その言葉通り本当にクソ野郎しか出てこない。
兄弟の二人の印象が逆転するのも見事だが、子供想いに見えるヨンギョンよりも、美を保ついかにもな年下若妻ジスの方がよっぽどまとも、という点が何よりも皮肉。
「正しさ」とは一体何なのかを、見た目の印象で決めつけがちな我々にも問いかけている。
そして、子供たちの存在。
親として、「夜遊びさせないようにすべきだった」とか「すぐに自首させるべきだった」とか色々あるかもしれないが、もうあのモンスターを作り上げてしまった時点で親失格。
利益だとか道徳だとかそんなことの前に、目の前の存在に気づけなかったことこそが最大の問題である。
少し前にあさイチで今作が紹介されていた時に華丸さんが「韓国の作品でワイン飲んでる人は悪いやつで焼酎飲んでる人は良いやつ」と仰っていたのを聞いてなるほどなと思った。
ちなみにこの映画では両者とも、ワイン→焼酎→ワインだった。
善悪揺らいでる感じがあってあながち間違ってない。