「どちらにしても最悪しかない家族の決断」満ち足りた家族 kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
どちらにしても最悪しかない家族の決断
何度も映画化されているオランダの作家ヘルマン・コッホの小説「冷たい晩餐」を韓国の名匠ホ・ジノ監督が韓国の社会問題も加味し改めて映画化した。
境遇の異なる兄と弟の2組の家族の子供たちが侵した罪をめぐり、2組の夫婦が倫理観で対立するサスペンス。
何度も映画化されているだけあり、対立軸が分かりやすくエンタメ的な展開も映画らしい映画だ。
兄のジェワン(ソル・ギョング)は権力になびく利益優先の弁護士として富を得ている。一方弟のジェギュ(チャン・ドンゴン)は正義感の強い小児科医で認知症の母親の介護もしている。
2人の兄弟は妻を伴い月に一度高級レストランで会食をすると決めている。
ジェワンの二人目の妻ジス(クローディア・キム)は若くて美しく子供が生まれたばかり。ジェギュの妻ヨンギョン(キム・ヒエ)は義母の介護と学校で孤立する10代の息子の事で疲れている。
境遇も倫理観も違う夫婦の対立構図がわかりやすく面白い。
ある日、いとこ同士で仲のいい兄弟夫婦の子供たちが、重大事件に関わった疑惑が浮上する。
事態を収拾するための話し合いの過程で出てくるそれぞれの家庭の問題や伏せていた不満が噴出し兄弟も夫婦も険悪になっていく。
答えは一つしかないはずなのだが、自分の保身や子供たちの将来のことで家族の対立は深まるばかり。
子供たちの善悪判断の希薄さや過保護すぎる親など、韓国の学歴社会の歪みをホ監督は今回の再映画化の主題としたようだ。
ただ、エンタメ映画とはいえ罪に対して曖昧なまま結末を迎えるため星は3.5とした。
コメントする