「楽しんで観る映画、、、ではない。」満ち足りた家族 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しんで観る映画、、、ではない。
トロントなど多くの映画祭や映画賞で高い評価を受け、また米国の映画レビューサイトでも評価が高い本作。ソル・ギョング、チャン・ドンゴンの競演も楽しみにTOHOシネマズシャンテへ。ですが、会員サービスデイの9時40分からの回は思いのほか寂しい客入りです。
最初に断っておきます。あくまで個人的な意見ですが、決して「楽しんで観る映画」ではありません。何なら、観終わってこのレビューを書くために映画を振り返るだけで、腹立たしかったり、気持ちが落ち込みます。とは言え、それだけ印象に残るという意味では「映画として優れている」と言わざるを得ず、甚だ複雑な気分ながら悪い点は付けられません。
なお、本作の英題『A Normal Family』は原題『보통의 가족』そのままの直訳(注・あくまで字面として)。一方で邦題『満ち足りた家族』はこれを「普通」とすることに距離を置いているような気もします。ですが、このストーリーで起きる問題には「格差」が影響していることも確かで、題名の付け方だけでもいろいろと考えてしまう一本です。
兄シュワン(ソル・ギョング)とジェギュ(チャン・ドンゴン)はそれぞれ弁護士と医者であり、二人の暮らしぶりに差はあるものの社会的には共にエリート。お互いに思うところはあっても疎遠になることはなく、普段から顔を合わせていてしっかり交流を持っています。ある日も「母の介護」についてを本題として集まる兄弟と彼らの妻たち。そしてその隙をついて遊びに出かける彼らの子供たちが問題を起し、そこから事態が展開していくわけですが、、、
それぞれの立場で考えることは想像を裏切らず、だからこそ「尤も気」で丸め込まれそうになるものの、聞き進めれば誰の意見も行き過ぎていてみんな利己的。だからこそ一向に噛み合わず、ずっとまとまらないまま問題は棚上げされ続けます。身内がしたことに対する落とし前を「家族」「親と子」と言う関係性を言い訳にして免れようとしますが、結局のところ「自分ら(家族)の利害」しか考えておらず全てが胸糞悪い。そもそも、それについて話すのに「高級料理店での食事会」にする意味が解らんし。そこに「確かな倫理感」は僅か1ミリでも存在するのか?なんて、ずっとイライラしながらのラスト、観る前からすぐに「オチ」は判るのですが、映画に大事なのはその落とし方・・・あゝただただ空しい。。。からのタイトル、ドーン!はい、もう降参です。
いやはや、ちょっとナメてました。今回もまた「韓国映画」にしたたかに打ちのめされ、更に傷口に塩を塗られた気分。ホ・ジノ監督、もう勘弁してください。