劇場公開日 2025年1月17日

「子は親を見ているが、親は子を見ているのか」満ち足りた家族 サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子は親を見ているが、親は子を見ているのか

2025年1月19日
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鑑賞方法:映画館

2025年劇場鑑賞4本目 優秀作 70点

公開前から期待の声が各所から聞こえていた作品

物語冒頭に起こる事件がどうも唐突というか、犯人の沸点の低さというか、物語のためのとっかかりになるべくした動機も脈略も不十分な出来事が韓国作品らしく不自然というか、まぁでも今作の主題がそこではないので容認できるが、もう少し掴みがいかにもショートコントをとってつけたような入り口が好ましくなかった

理性で生きる兄と道徳的に生きる弟とそれぞれの嫁の妬み嫉みマウント合戦と、4人のそれぞれの正義や個人と尊厳を主張し葛藤する物語で、所謂世間的に見て勝ち組であり成功者の方々が、家族や子供との関係や教育はうまくいっていないというこれまたありふれた内容だが、わかりやすく幼少期に十分なわかりやすい愛を受けていないのだろうなと思える大学生の素行が、そうなってしまうのがわからなくもないからこそ、一重に悪いと言い切れないような感情を抱いてしまった

弟の嫁の若造りとしたったらずな所作というか、若くて綺麗な兄の嫁に対抗心を燃やしながら、内心世間的に劣っているなと認めつつ未熟な小娘くらいに思い込み自尊心を保っている面構えがなんとも巧妙ないかにもなおばさんで名演でした

対する兄側の嫁の若さと美に対する探究で生まれる余裕から完全に弟の嫁を下に見ているのが、日本でいう港区女子界隈に染まった哀れな女っぷりがこれまた良かった

兄弟の成功者故の子供の失態に自身の去就も危うくなるのは容易に想像できるからこそ、物語終盤の修羅場でそれを台詞だったりで説明することなく、とりわけお互いの子供に対するそれぞれの向き合い方のぶつかりや家族のことに矛先が向いているように感じたのが、一層親が子供へ等身大でその時その時に向き合えていなかったことを露わにするようで良かった

息子がクラブやクラスメイト?からいじめや嫌がらせを受け、その鬱憤なのかもしれないが、トンネル内の廃品物に蹴り込むところから、次第にホームレスを蹴り込む、それに至るまで、息子よりも弱者とも取れる存在には心無い仕打ちができるという暗示でてんとう虫を指で潰すシーンなど、事件に至るまでの人物描写はそれなりに描かれていたが、そのてんとう虫→トンネル内の廃品物蹴り込み→ホームレス蹴り込みの間に当たる廃品物蹴り込みが物語のために盛り込んだ事象に感じて不自然さが拭えなかった

物語終盤の誰もが予想できる壮絶感はいかにもだが、全体として観客の正義を揺さぶる内容や演出は見事だが、一方で韓国映画らしいといえばらしいが、随所に作り込みの甘さが伺えた作品でもあった

サスペンス西島