「第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作」雲のように風のように かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

2023年12月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

楽しい

知的

原作は酒見賢一の『後宮小説』
監督は鳥海永一。
テレビのスペシャル番組として制作された。

【ストーリー】
腹英三十四年(西暦一六〇七年)、素乾皇帝腹宗が崩御された——と同時に各地で行われる宮女狩り。
かつての後宮を解体し、見目麗しい者を集めて新たな後宮が作られる。
その中に銀河という少女がいた。
取りたてて眉目秀麗というわけではなかったが、背筋の伸びた素直な心根を持っていた。
齢十四、「三食昼寝付き」の噂を信じて親元を離れた彼女は、地元の宦官・真野の元をたずねる。
宮女たちは後宮に入る前に「女大学」にて高度な教育を受ける。
新たなる皇帝は素乾史上もっとも優れた資質を持つと言われた双槐樹——槐宗。
だが辺境では幻影逹と渾沌と名乗る輩たちが、怪しげな動きを見せていた。

「腹上死であった、と記載されている」
というフックの効いた冒頭文から、素乾帝国の成り立ち、宮女狩りの歴史やその方法から教育法、後宮の慣わしまで「素乾書」「乾史」「素乾通鑑」といった古文書や、西洋の研究者の残した書物を紐解いてその絢爛な文化を羅列してくれます。
まあ全部ウソなんですけどね(笑)
思春期に読んでしまった愚かな自分、完全に信じちゃいました(笑)半年ぐらい(笑)うけるー(笑)
(笑)じゃないわよ!返してよ!アタイの半年返してよ!
と作者の胸を両手でポカポカ叩きながら抗議したいぐらい悔しかったです。
ただ自分が世界史も知らないおバカちゃんってだけなんですが、とりあえずこの本に出会って以来ずっと酒見賢一ファンをつづけてます。

さて、アニメはジブリ風のデザインで作られていますが、製作はスタジオぴえろ。
作画監督に近藤勝也を迎えてジブリスタッフを使えたことが、画風の理由です。
近藤勝也は『魔女の宅急便』や『ポニョ』などの作画監督を務めた、ジブリのトップアニメーターの一人。
その後押井守を招んで同作者の『墨攻』を企画した際も、作画監督には近藤勝也を予定していたそうです。
『墨攻』は残念ながらポシャってしまいましたが、監督の鳥海永一は押井守の師匠格と考えるとますます見たい気持ちが湧いてきます。

さてこの「ファンタジーノベル大賞」なるコンテスト、大賞受賞者には500万円もの賞金が出たことでも話題になりました。
その後も鈴木光司、佐藤亜紀、小野不由美、恩田陸、池上永一、畠中恵、森見登美彦、仁木英之などなど錚々たる面子を世に送り出しております。
第二回優秀賞に輝いた鈴木光司の『楽園』も、同スタジオでアニメ化してます。
おい、小野不由美はティーンズハートでデビューしてただろ!というツッコミをくれた貴方はありがとうございます。
この賞で刊行された『魔性の子』が、後の『十二国記』シリーズ第一作目なので、どうしても列挙したかったのです。

冒頭文ではないですが、作者はこの秋(2023年11月)に亡くなられてしまいました。
悼む気持ちと共に、彼の残した作品群にもう一度光が当たることを、願ってやみません。

かせさん
たなかなかなかさんのコメント
2023年12月6日

かせさんさん、コメントありがとうございます♪

嘘のつき方がとっても巧みなのでついつい騙されてしまいました💦
原作小説もチェックしてみます!

たなかなかなか