ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうたのレビュー・感想・評価
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【”When The Dream is Beautiful.”今作は或る家族の実話であり、過去に囚われた男の哀しみと後悔と、男を優しく許す家族愛を過去、現在を織り交ぜて描いた音楽映画なのである。】
ー 個人的な見解であるが、ケイシー・アフレックは哀しみや取り戻せない後悔を背負った男を演じると、抜群に巧いと思う俳優である。
その理由は、間違いなく傑作「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で、”乗り越えられない。辛すぎるんだ。”と血を吐くように呟き、世捨て人の様な生活を送る主人公を演じる様を見たからに他ならない。
今作でも、ケイシー・アフレックは音楽的な才能が溢れていた10代で兄と共にアルバムを出しつつも、そのアルバムが売れずに父親の農場の大半を失ってしまった辛い過去を持つしがないミュージシャンを演じている。
そして、彼の抑制した演技と共に、彼が劇中にあの独特の掠れた声で歌う”Baby"を始めとした美しい歌声にヤラレルのである。
<今作は、過去の夢と挫折に悩む男の前に現れた、過去に一枚だけ出したアルバムの再評価により、”夢をもう一度”と願う男とその家族の姿と、男が抱える家族に対する後悔や後ろめたさを、男の家族が優しく受け入れる姿を、過去と現在を織り交ぜて描いた作品なのである。>
一発屋にもなれなかった歌手の苦悩
全く陽の目を見なかったのに、思わぬ形で脚光を浴びる歌手。音楽ではないが、映画監督のエド・ウッドが“史上最低の映画監督”として注目されたケースと似ている。
しかし本作の兄弟デュオ、ドニー&ジョー・エマーソンは、エドと違い存命している以上、その反響の大きさに戸惑いを感じるのも無理はない。特に活動のイニシアチブを取っていたドニーのそれは計り知れない。一発屋にもなれなかった人間が、突如再評価され有頂天になってもおかしくないはずなのに、なまじっか音楽のセンスがある分、余計苦悩してしまう。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で過去に囚われた男を演じたケイシー・アフレックが、ここでも過去の挫折を払拭できない男を演じてるのが妙。そんな弟よりも音楽センスが劣る兄ジョーを演じたウォルトン・ゴギンズが、実にイイ味を出していた。
お話的にも製作態勢的にも、いかにもインディペンデントなシブい一本。
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