「全てはエンタメでコンテンツ、生死が掛かった放送もテロップひとつで関心が消えるのはリアルだと思った」ショウタイムセブン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
全てはエンタメでコンテンツ、生死が掛かった放送もテロップひとつで関心が消えるのはリアルだと思った
2025.2.7 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(98分、G)
原作は2013年の韓国映画 『テロ、ライブ(監督:キム・ビョンウ)』
元人気キャスターと連続爆破テロ犯の交渉を描いたスリラー映画
監督&脚本は渡辺一貴
物語の舞台は、東京都心にあるテレビ局
そのスタジオでは、人気番組「SHOW TIME 7」の準備が行われ、キャスターの安積(流星涼)と結城(生見愛瑠)が準備を進めていた
プロデューサーの東海林(吉田鋼太郎)はいつものノリで場を和ませ、ディレクターの矢吹(前原瑞樹)もスタンバイに入っていた
一方その頃、同じビルに入っているラジオブースでは、「トピック・トピック」の放送が始まっていた
そこには、3ヶ月前に「SHOW TIME 7」を降板したキャスターの折本(阿部寛)がいて、彼がパーソナリティを務めていた
物語は、その折本の番組のあるコーナーにて、謎の男から電話が入るところから動き出す
男は「火力発電所を爆破する」と言い出し、コーナーは中断してしまう
楽曲を流してその場を凌いだ折本たちだったが、男の電話はそのまま繋がっていた
折本はイタズラ電話だと思い、焚き付けるように「やれるもんならやってみろ」とぶちまけた
電話は切れ、番組も何事もなく再開する
だが、その直後に大きな爆発音が響き渡り、スタジオは騒然とする
そして、湾岸の方を見ると、大きな火柱が立ち上っていて、あの予告電話が本物であることがわかるのである
映画は、犯人の思惑を予測した折本が、古巣の「SHOW TIME 7」を巻き込む様子が描かれていく
当初はカメラをラジオ番組のブースに入れ、その後は「SHOW TIME 7」のスタジオへと殴り込みをかけていく
そこからは犯人との心理戦という感じだが、展開される内容はそこまで真新しいものはない
犯人を知る人物が番組放送時間内に迷わずに来るというのもおかしな話で、もし都内にいて、声を聞いてその人がわかっても、どのテレビ番組がどのスタジオで放送されているなど一般人にはわからない
なので、必然的に頻繁に出入りしている人となるのだが、それすらも冒頭の清掃員とぶつかるというシークエンスで早々にバラしているのもどうかと思った
物語は、折本個人への攻撃に移っていくのだが、それまでに過大な要求を突きつけてきたことが伏線となっている
折本は総理や社長を動かす力はないが、自分自身が知っていることを話すことができる
それが犯人の狙いであるのだが、折本が官民癒着の証拠を握っているとか、その話に信憑性を持たせる何かをその場で持っているということは、超能力者でもないとわからないものだった
火力発電所で事故死した作業員の遺族が犯人なのだが、その彼が親族をテレビ局の清掃員として潜入させてもできることとできないことがある
あの爺さんがハッカー並みの技量と持っていて、テレビ局内で折本の個人携帯の電話番号まで入手するのは不可能だと思う
なので、せめて昔の同僚だったとかにしないと無理難題であり、レポーターの伊東(井川遥)の恋人みたいな立ち位置でもないと犯行自体が起こせないんじゃないかなと思った
いずれにせよ、テロが起きてもエンタメにするのがテレビ局というのは言い得て妙で、それをコンテンツとして消費するのが国民という指摘はあっていると思う
自分に関係ない出来事なら、どんな出来事もコンテンツの一つであり、テロップ一つで関心先も変わっていくし、普通に音楽番組も放送されていく
そう言った部分をさらにエンタメ化しているのが本作なので、当事者からすれば溜まったものではないだろう
だが、当事者以外がその事件に憤りを感じる方が無理があると思う
なので、無関係な人間が群がってくることの方が危険なようにも思え、当事者意識を持ちましょうというのは、さらに当事者を危険に追い込むことになるのではないか、と感じた