「序列一位の死に揺れる高校生のヒエラルキー」遺書、公開。 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
序列一位の死に揺れる高校生のヒエラルキー
一位の重圧?八方美人に疲れたのだろうか?
姫山椿、2年B組、序列第一位。
彼女が序列をつけられて半年後に学校内で自殺した。
そして葬式の日の机の上にはB組全員(担任含む)に向けた、
白い封書に手書きではないパソコン文字で書かれた《遺書》が、
各自の机の上に置かれていた。
この映画は姫山の自殺の、
♠︎その原因、
♠︎遺書は姫野本人が書いたものか?
♠︎序列を付けたのは誰か?
そのことを2年B組の“ホームルーム“の時間、3回で、
謎を解いてゆく映画です。
たった25人のクラスが姫山にとっては全世界・・・だったの
でしょうか?痛ましいです。
高校2年。
受験前、受験に集中する前の束の間の暇な時期。
ホームルームでは一人一人が、壇上に上がり
受け取った遺書を公開していきます。
3行位の短い文面、
遺書の最後には、必ず、
“見守っているよ“の言葉がある。
そして一言だけ“謎のワード“が書かれている。
その言葉を深掘りしていくことで浮かび上がる真実、
♠︎姫山のカレシだとみんなが思っていた赤崎(松井奏)
その赤崎の本心は、
“序列一位の女を落としてやる“だった。
♠︎お互いに親友と自他共に認められてた御門(高石あかり)
実はまったくの虚像というか?演技だった。
☆☆御影を演じた高石あかりのサイコパス演技。
大袈裟で笑ってしまうが、「夏の砂の上」の少女との落差に驚く。
ピンクのパーカーを常に着ていて異彩を放っていた(笑)
♠︎人間観察が趣味の廿日市(志田沙良)・・いつも絵を描いている女子
・・・彼女はキーマンの一人。
♠︎池永柊弥(吉野北人)
・・・彼は実は小四の頃の姫山を知る人間で、
・・・その時姫山は、広田椿だった。
椿は転校して行ったが、高校が偶然同じで、クラスメイトになる。
《ネタバレ》
序列を付けたのは廿日市で、
“ランキング一位になりたい姫山の気持ちを汲み取って、
序列表をクラスメールに一斉送信した本人。
廿日市は姫山椿の個人的日記(プロフィールはテディベア)を
姫山のものと知り密かに読んで、姫山の本心を知っていた。
そして両親の離婚で離れ離れになった姫山の憧れていた姉、
その姉が自殺していて、姉を慕っていた椿は傷つき、責任も
感じていたことも知っている。
★葬式の日に机の上に、遺書を置いたのは・・・池永柊弥、
★★それを描いたのは人間観察に長けた、廿日市くるみ。
遺書の文面はたった100字未満の文章に、
“仕掛けが必ずある、
前にも描いたけれど、
遺書のラストはかならず“見守っているよ“の文字、
そして姫山の残した一番のダイイングメッセージは、
《2年B組の全員を愛している》
なんと虚しい思い込みだろう。
アイドルでもスターでもないのに全員を愛して、
全員に愛される?
自殺の原因は、分かりません。
序列一位を守りたかったのか?
カレシだと思っていた赤崎の裏切りか?
親友とお互いに呼び合っていた御門の裏切りか?
両親の離婚か?
離れ離れになった姉の自殺か?
★★そして姫山は、リレーのアンカーを任されれば、ラストで抜かれる。
★★勉強も実は成績は平凡、
★★リーダーシップもそこそこの誰にでも優しくて、思いやりがあって
・・・八方美人、模範解答しか言えない退屈な人間・・・
序列に左右される高校生を真実味たっぷりに描いた
真面目でいい作品でした。
それにしても廿日市くるみを演じた志田沙良。
彼女も怪演でしたね。
(廿日市の心の闇は深いし、クラスで一番ヤバい女でしたね)
監督の英勉、脚本の鈴木おさむ、
なんと言っても高校生の内面に迫った原作者は、
漫画で陽東太郎の「遺書、公開」です。
けっこう刺さる映画でした。
人間が生まれつき抱えている格差。
親の資産、容姿の美醜、知的格差、
そう言った変えられない問題や、虐めを触れずに、
ここまで高校生のヒエラルキーに迫ったのは、
ある意味で見事だと思います。
人気があるとか、ないとか?
けっこう人生で重いですね。
でも、たった25人の中で、人気一位?
そんなちっぽけなことが人生を左右するなんて、
幸せの絶頂で人生を終わらせたかった・・
そういう考え方もあるけれど、
幸せな人が死を選ぶだろうか?どうにも、
“分からないなぁ・・・“
共感ありがとうございます!
自分のレビューで突っ込みどころを色々書きましたが、脚本を劇場版用に手直しすれば、ミステリーの手法としては斬新で良い素材だと思います。ただ主人公(一瞬だけ)が自死するというサスペンス寄りになると表現が難しくなりますね。自分はコナンも含めてミステリー好きなので、日本初のミステリーの良作が作られることに期待大です。