「二度目の死別は辛すぎるだろう」アンデッド 愛しき者の不在 りらさんの映画レビュー(感想・評価)
二度目の死別は辛すぎるだろう
死んだ人が突然蘇る。目を開け、心臓も動いているし、ぎこちないが手足を動かせもする。だが、語りかけても言葉は返ってこない。死による肉体の腐敗もそのままだ。はたしてそれは自分が愛した人といえるのか。死者とも生者ともつかない存在を前に、何ができるのか。
容易には答えが見つからないそんな問いが、淡々と静かに、じんわりと突きつけられる映画ですね。とにかく台詞が少ない上、説明的な表現も少ない。加えて映像の色味も、ダークというより薄暗い。映画というより、映像による散文詩、みたいな…。ホラー映画を期待すると肩透かしかも(私ももう少しくっきりしたホラー色を期待してたクチだけど)。
ただ、怖いな、と思ったのは、愛しい人との死別という悲劇を一度味わっている人々がこの「蘇り」によって二度目の、さらに悲劇的で酷い別れを味わわなくてはならなくなったこと。相手にはすでに人格も意思も無いので、生者が自らの手と意思で決断しない限り、本当の別れは訪れない。登場する三組の家族・カップルの選択には、己に置き換えて想像せざるを得ない切実さがある。
観る人を選ぶわけではなく、観る気分やタイミングを選ぶ作品かもしれないと思う。退屈、とか、よくわからないといった感想にも頷けるけど、今の私にはそこそこ響いた。台詞が少ない映画は、音楽や背景音、言葉では無い声の印象が強く残るなぁ、と改めて感じられた点でも、映画館で観て良かったと思った。
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