「続編はいらない」デーヴァラ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
続編はいらない
RRRが最高だったので今回も期待したが、やや物足りなかった。
集団シンクロダンスはキレキレの動きで本当にすごく良かったが、二回しかなくて残念。
現代編のストーリーはなんかややこしくてよく分からなかった。過去編だけで良かったのでは…。
3時間近くあるので、途中でインターミッションがあるが、僕の観た映画館では休憩時間とらせてくれず、すぐに続きがはじまってしまった。水分はあまり取らない方が良いだろう。
最後のドンデン返しはストーリー的には非常に素晴らしいのだけど、正直「後付け」感はあった。デーヴァラの息子が実は「あの日」に、デーヴァラを殺してた、ってオチだと思うのだけど、それだと息子が子供だった時期に村人たちを罰してたデーヴァラは誰だったのか?という疑問が残る。
ドンデン返しが効果的に機能するためには、伏線としての謎が散りばめられていたり、「真相」を撹乱するためのミスディレクションが必要だけど、それがあまりなかった。
また、宿敵であるバイラが最終的に戦わないのも、3時間近くある映画としては消化不良だ。
デーヴァラは「あの日」以降も生きていて、息子が自分に匹敵する強さになるまで、密かに訓練していた、というストーリーにするべきだったと思う。そうすれば、例えば、「一度確かに殺したはずのデーヴァラが蘇った(デーヴァラが本当に人智を超えた存在になった)」みたいなトリッキーな展開も可能だったと思うし、デーヴァラと息子のドラマも色濃く描ける余地があったと思う。
四つの村はなぜか警察とか法律とか近代的な社会システムが一切存在しない、そこだけ世界から隔離された地域で、こういうところだと結局「力」で秩序を保つしかないんだな、ってことがよくわかる。
デーヴァラは「力」と「恐怖」で村に正義を取り戻そうとしたけど、結局、村人と村人が対立し、村人どうしで殺し合う凄惨な時代を作り出してしまった。この映画の意図とは外れて、逆説的に、「力では無く、政治的に解決すること」の重要性を感じてしまった。
村人たちが違法な密輸の手助けをすることで生計を立てていたことにデーヴァラもリーダーとして加担していたくせに、十分な話し合いもせず、いきなり一方的に方針を変えて、「俺が決めたルールを破ったら罰する」てやったら、そりゃうまくいかないだろう。力に対して力で対抗する、という抜けられない悪循環がはじまってしまう。デーヴァラは、「一番強い奴がリーダーになる」という四つの村の慣習のため、その方法しか考えられなかったのかもしれない。自分の育ってきた環境から来る思い込みから自由になるために教育って必要なんだな、って思った。
不満を先に書いたけど、この映画は十分面白い。四つの村の関係や因縁は新鮮な設定だったし、屈強な「漢」どもしか登場しなくて、腕っぷしが強くて強引な性格が正義でモテるみたいな世界観も良い意味で現代的でなくて良い。ヒロイン役が子供時代も含めて、とにかく気持ち良いくらいの「強さ」礼賛てのが今のハリウッドとか日本ではまず無いヒロイン像で面白すぎる。デーヴァラの息子が臆病で知略で窮地を乗り切るという展開にもワクワクした。
続編は現代編で展開されることになりそうだけど、もうやらなくていいんじゃないかな…。バイラとの因縁とか、一番悪い密輸のボスとの対決が残ってるとは思うのだが、個人的にはあまり興味わかない。