「大人になれない」映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
大人になれない
TVアニメから今作を知り、テーマの深さやもし自分が性別についての悩みが描かれており、このキャラの立場だったらと色々と考える要素の多い作品で強く印象に残っていました。
TVシリーズでは途中で終わってしまい、そのまま劇場版に繋がる形だったのですが、クオリティ的にスクリーン映えはしないだろうと思ってしまい、なんとかOVAか原作をしっかりやり切っての2クールにできなかったものかとは思いましたが気になったので映画館へ。
特典は書き下ろし漫画とイラストステッカーでした。
TVシリーズの続きでメインは咲の物語でした。
というのもあって、タイトルが機能していたのは後半以降で、咲が自分の殻を破る物語構成になっていました。
咲の両親が方向の違う良くない親というのもTVシリーズから強調されていたなと思いました。
母親はどうにも壁があるような感じが否めなかったですし、実際咲を見捨てて、どこか余裕が出てきたから咲を迎えにきたと自分本位なところが目立っていましたし、そこからパートナーがいることも隠していたりと咲の事よりも自分のことが好きなんだろうなというのが滲み出ていて気持ち悪さが勝ってしまいました。
最後の咲にかける言葉もどうにもしっくり来ずというのも不思議なところです。
父親は仕事優先で自分の家に咲を呼んでおいてほったらかしにするシーンもあったり、変に気遣うところがあったり、咲の好きなものを決めつけ&更新しないという娘の成長を見ていないというところも腹立たしいところです。
そんな状態で自分の元に来ないか?と聞く様子はあまりにも…な感じで咲もそりゃ空気読みになってしまうよ…となってしまいました。
進路というところもしっかり描いているんですが、竜ニは大学進学を目指す中で、まことと咲はそこんとこちょっとぼかしていたかなと思いました。
まぁ2学期に入る前って悩みもするけれどあやふやな人はまだあやふやなのでそこんとこリアルだなと思いました。
終盤の展開はやや強引…というか告白の流れがあんなにダイナミックでいいのか?とはなってしまいました。
2階から1階への飛び降りはおいおいおいとなりましたし、なんだか好き同士が繋がるところのエモさがあんまり感じられずでエンドロールへ突入していくのでなんか勿体無いなとなりました。
心は女の子、見た目も女の子にしていたまことと、そんな先輩であるまことを好きになった咲が付き合うまでのカタルシスがどうにも足らずじまいでした。
内容はやはり良い、うまいこといかない展開にヤキモキさせられるのも題材にマッチしていて考えさせられるのに圧倒的にアニメーションが足を引っ張っていました。
TVシリーズの時からデフォルメな感じ(漫画のタッチをそのまま口パクで動かすだけの変化)はコメディシーンならまだしも、シリアスな時に突然に挟み込まれるとどうしてもノイズになってしまいますし、TVシリーズよりも止め絵のシーンが目立っていて、紙芝居を観にきている訳ではないのにな…と首を傾げてしまいました。
アニメ放送終了から半年足らずですが、もっと前から映画も作っていたとは思いますし、劇場で流すクオリティでは無かったと思います。
あとモブキャラの目を描かないのも仕方ないとはいえ手抜きに見えてしまうのも残念でした。
声優陣は安心安全な本職でしたし、宮田くんも何度かアフレコ経験があるのもあってしっかり聞き取れる声で良かったです。
少数精鋭でも高クオリティのアニメーションが作れる時代でこれをお出しされても…という感じはやっぱりあって、せっかくの話の良さを台無しにしていたのが残念でした。
制作会社がもっと力を入れてくれれば…とはなりましたが、話の良さとアニメーションを割ってこの評価にしておきます。
鑑賞日 2/16
鑑賞時間 16:40〜18:15
座席 H-6