Welcome Backのレビュー・感想・評価
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テルがひとり立ちしていく物語
兄弟のように育ったテル(吉村界人)とベン(三河悠冴)。
テルはずっとベンの憧れであり、ボクシングで絶対負けない絶対的な存在だったのだが、
北澤(宮田佳典)に負けてからは、ベンの復讐(というのもおかしな話だが)のために
東京から北澤のいる大阪までのロードムービーなっていく。
※前情報がなければロードムービーになること自体意外である
この二人を心配する青山(遠藤雄弥)の存在が超大事だ。
青山はかつてテルに負けたボクサーだが、どうにもこの二人の行く末が気になるらしい。
大阪までの旅路をサポートする何ともいいやつだし、彼もまたテルからの敗戦をひきずっているに違いない。
途中で気づいたが、これはテル視点の話であり、ベンが中心人物ではない。
実は青山がナビゲーターとなり、話を展開させている。
そして強力な絶対的な敵、北澤の存在がベンをひとり立ちさせていくし、
ベンがひとり立ちしたことで、テルもようやく前を向き始める、、、という、なんとも清々しい作品。
やっぱりこういう佳作に出会えるのが単館系の映画作品。
今週観たシネコン系のメジャー邦画はもちろん素晴らしいのだけれど、
邦画には単感でも滋味溢れる作品がたくさんある。
これが映画鑑賞の醍醐味だとあらためて思った。
チンピラ兄さん
自由に生きて行きてきたボクシングチンピラ
兄貴が、現実の挫折を味わい糸の切れた
凧のように。
そこに幼少から一緒の弟が牙をむき猪突猛進。
一点集中の弟が西へ西へとガンガン突き進む。
素人ボクサーであるが……。
愚弄の兄がまさかの弟に翻弄される
ロードムービー。
ボクシング映画だがボクシング映画ではないが
映像の撮り方も中々面白い作品。
ボクシング映画ではないです。
ボクシングの描写が素晴らしいので
それがメインディッシュ?って思いがちですが
そうではないのです。
ただ、その説得力が力強いが故に
成り立つブラザーフッド・ロードムービーです。
ボクシングを扱う作品は大変好きなんです。
いくつかの作品の中でもボクシングの
痛みと怖さが伝わってくる作品でした。
だからでしょうかね?
同じく全キャラの心情もそんな描写も含め
描き切れていると思うのです。
もちろん演者さんたちの力量あってのもの
だと思います。いやはやすごいなぁ・・・
の一言でした。
展開に関しては少々無理あるかなぁ~とか
個人的にはラストはちょっと蛇足感あるなぁ
観客のイメージを膨らませる終わり方が良かったかなぁ
とは思うものの、久々に熱い友情&成長物語を
みたなぁって・・・思いました。
説得力ある作品は大好きです。
中卒、元ボクサー。
上には上がいる、そんな当たり前のことを受け入れるのにどれほどの時間と覚悟が必要か。受け入れたらやっと前に進めると分かっていても。粗暴で口が悪いボクサーテルと、団地で一緒に暮らす色々足りない弟分のベン。負けないと信じていたテルの敗北。ベンはテルを打ち負かした北澤に勝負を挑む為大阪を目指す。
テルはベンを、ベンはテルをずっと守ってきた。いなくなったら困る存在。まるで2人で1人のような。でもいつかはそれぞれの道を選ぶ時が来る。まるで別れの儀式のような大阪までの旅路。私はめちゃくちゃ良かったです。
配役も良くて、吉村界人の雰囲気や話し方がテルにぴったりだった。ずっと悪態ついてどうしようもない奴だけど、ごはん食べる時にいただきますしたのが、めっちゃ印象的だった。悪い子じゃないんよ、ボクシングしかなかっただけで。そして圧巻のファイトシーン。バキバキに仕上がった体、本当に役者さんて凄い。あと青山さんが聖人過ぎた。
負けた後のWelcome Back
厳しい戦いの世界において、
頂点に立つひと握りの人間を除いて、他はすべて負ける運命にあって、
だから、憧れや羨望でなく、本当に共感できるのは負ける姿、
負けても一途な姿なんだと思わされた。
主人公テルは、日常ちょっと不真面目なところもあるけど、
ベンへの愛情に溢れて、不器用だけど純粋で魅力的。
青山や彼女?との会話も楽しい。
テルと兄弟のように育ったベンは、
ボクシングを通じていつのまにかテルの分身、親子のようになり
成長し、巣立っていく関係性の変化がちょっと不思議で面白い。
青山はおそらく多くの人が親近感をもつ普通の人間で
彼とテル、ベンが絡んで、彼から見た二人も表現されて
物語がより多層的に豊かになっている。
タイトルを回収する日常的なシンプルなラストもいい。
予告編からは全編ケンカ上等的なイメージを強く感じましたが、
チャンピョンの北澤やセコンド等々も含めた個性的な登場人物たちのセリフも典型的ではなくて面白く、
ドラマの要素も満載で、完全にイメージを覆されました。
もちろんボクシングシーンはかっこいいです。
負けるって、こういうことなのかぁ・・・。畜生、最高によかった。
テルとベンがずっと頭の中、胸の奥にいます。
脚本・監督、こんな素晴らしい映画を作れて凄い!登場する役者さん、青山も北澤も全員素晴らしかった。
負け犬で破天荒なテル、「テルは負けない、テルは負けない」と言い続けるベン、その二人の関係性が泣けてくる。なんとも粗雑だが美しくて涙が止まらなかった。テルもベンもいわゆる負け犬なんだろうが、それがなんともかっこいいんだ。ヤンキーとか不良とかじゃなく、そんなものではない、負け犬なんだな。テル役の役者さんの凄いところなんだろうな。
この感情が一体何なのか、自分でも整理できないが、兎に角、素晴らしいものを見せてもらいました。何故だかずっと涙が出ていた。絶対にもう1回、見に行く! サクセス物語でもない、負け犬の物語なのにこんなに感動した。負けることってこういうことなんだぁ、でも誰もが負けを経験するんだ。きっと誰もが言葉にできないことを映像にしてくれたんだ、と思う。
この日は、監督とテルとベンが映画館に来てくれていて、きっといつもなら遠くから眺めているだけだったと思うのですが、絶対に写真を撮ってもらいたいと思って、勇気を出して一緒に写真を撮っていただきました。ありがとうございます!
「Welcome Back」が誰の言葉かを考えて観ると、意外な一面が見えてくるように思います
2025.1.16 アップリンク京都
2025年の日本映画(119分、G)
天才肌のボクサーの挫折と、その信奉者の復讐を描いたボクシング映画
監督は川島直人
脚本は川島直人&敦賀零
物語は、北千住の交番にて、警官(川島潤哉)と話すテル(吉村界人)が描かれて始まる
ベン(三河悠河)が姿を消し、その行方を追っていたテルは、2人の関係のことを話し始める
そして、その矢先にテルの携帯が鳴った
映画は、その10ヶ月前から順を追っていく流れになっていて、東日本の代表を決める決勝戦に臨むテルが描かれていく
対戦相手は年上のキャリアボクサー青山(遠藤雄弥)だったが、テルはいとも簡単に相手を倒してしまう
そして、その数ヶ月後には西日本代表の北澤游馬(宮田佳典)との決勝戦が控えていた
テルはいつもと変わらぬように過ごし、計量をパスして、北澤を挑発し始めた
だが、試合は劣勢で、2ラウンドのTKO負けを喫してしまう
テルは「重傷で引退」という理由で表舞台から去るものの、彼の負けを受け入れられないベンは、あることを目標にして家を出てしまった
それは、テルの代わりに北澤を倒すというもので、彼はノープランで大阪に向けて歩き始めてしまうのである
映画は、川崎に入ったところで、元対戦相手の青山がベンを見つけるところから動き出す
会長(菅田俊)を通じて連絡を受けたテルは、青山の指定するファミレスへと向かった
ベンはテルを見て逃げ出すものの、その目的を知って、仕方なく付き合うことになった
また、その場にいた青山も巻き込まれることになったのだが、それはゲーム感覚で大阪行きを始めたものの、ベンを止めるための試合で負けてしまったからだった
映画は、復讐を誓うベンに引き摺られる2人を描き、その過程でベンが徐々に覚醒していく様子が描かれていく
テルのビデオを何度も観てきたベンは、彼の動きを真似できるようになり、そして北澤戦のビデオを見ながら、シミュレーションを重ねていく
スパーリングも素人と油断したボクサーたちを倒していく中で、実践経験を積んだベンが徐々に本物のボクサーになっていく様子が描かれる
最終的にはベンとテルが戦うことになるのだが、何を思ったのか、テルはベンとの戦いを拒むようになっていた
そして、袂を分ち、ライバルとして再会することを夢見始めるのであった
大阪でのスパーリングは「よそ見」が原因で、ベンは負けたと思っておらず、この瞬間にテルはベンのお荷物的な存在になっていた
そう言った意味において、テルは勝ち目のないベンとの勝負を降りて、ベンを超えられるように努力を重ねる決意を固めることになった
ジムからジムを渡り歩くので、ロードムビーっぽさはあまり感じられないのだが、名古屋に対する偏見(愛)は非常に感じられた
本当にそこにいる人が登場しているようで、話し言葉もすんなり入ってくる印象があった
いずれにせよ、ボクシング映画としては異端だが、試合のシーンがきちんと作り込まれているし、妙な間合いからのコミカルなシーンも面白かった
東京から大阪に行くというロードムービーで、テルが転落してから始まるというのは興味深い
物語の基本構造は「何かを得る者は失い、何も持たない者は得る」という法則があるのだが、過去譚は失う物語で、現在パートはテルもベンも得る旅になっていたと思う
問題は何を得るかというところなのだが、大阪行きを通じて、ベンは新しい居場所を見つけ、テルは自分が立つべき場所を見つけることになった
転落から始まる者の再生は応援したくなるものなので、そう言った意味でも爽快感が感じられるのではないだろうか
Supersonic
ボクシング×ロードムービーという良い組み合わせだな〜というところに惹かれての鑑賞。
これは掘り出し物でした。
擬似的な兄弟愛にボクシングへの情熱、関東から関西までの人との出会いだったり、好きな要素てんこ盛りでした。
新人王に輝いたボクサーのテルと同じ団地で育った記憶力抜群だけどコミュニケーション下手なベンの成長物語で、若武者・北澤に敗北してからの堕落したベンと北澤を打ちのめすために大阪へ向かおうとするベンの真逆な行動力が面白さを加速させていました。
大阪に行くまでの道中で様々なボクサーと戦う中での進化というのもロードムービーに熱というエッセンスを加えてくれていて盛り上がりっぱなしでした。
ボクシングはどのシーンも圧巻で、臨場感満載のカメラワークに繰り出されるジャブにパンチに追い込みとどこを見てもゾクゾクっとさせられる試合には痺れました。
ベンが見て覚えて学んだテルのコピーのボクシングも圧巻でしたし、自己流に強化していく流れも胸熱でした。
北澤との試合のバチバチのやり合いも本当に凄まじく、ボクシングではあまり見ない共闘という形での試合が見れたのも型にハマらない作品だなと思いました。
テルは性格的に難しかないし、粗暴だし口は悪いし、色々と不適合なところは多いけれどボクシングにはしっかり打ち込んでるし、ベンの面倒はたくさん見てくれるし、人の懐に入り込むのが上手いしで目を離せないヤンチャ坊主感満載で最高でした。
吉村さんの主演作はたくさんあるのに今作で初めて見たのですがなんてかっこいいんだろう…と思わされるシーン満載でした。
ベンもベンでコミュニケーションが下手すぎるし、すぐに突っ走っちゃうしで大変ではあるけれど、持ち前の身体能力を活かしたバイトだったり、テルを一途に応援し続ける姿だったりはまさに弟だなーと思いましたし、ボクシングへの熱で自分を変えていくというのが表面的に出ていたのはベンだったなと思いました。
三河さんも直近の作品とはガラッと変わった演技で最高でした。
青山さんが良い人すぎて…たまたま出会ったベンに話しかけてしまったがためにベンとテルを大阪まで、しかも宿代や運転など全部賄っていくスタイルで、いやいや良いながらも全部こなしてくれる聖人でした。
ベンのサポートもしてくれるし、テルとベンの面倒をしっかり見てくれてるオカンのような存在で頼もしかったです。
遠藤さんが「辰巳」とは全然違う役だったのにも驚かされました。
北澤の強者感も素晴らしく、隙のないボクシングの強さと真面目が故に妥協を許さない性格込みで敵キャラではあるけれどこちらはこちらで応援したくなる魅力があったのもとても良かったです。
宮田さんも「SUPER HAPPY FOREVER」で演じてた宮田とはガラッと変わっており、あの時もシャドーだけどボクシングやってたなぁと違うところで点と点がつながってニンマリ。
ラストシーンでは少し先の未来のベンの姿、そして動き出すテルの姿が映され、静かにタイトルが出てきてグッときました。
出会いと別れ、ちょうどそういう時期というのもあっていつも以上に込み上げるものがありました。
前へ前へと突き進んでいってほしいです。
鑑賞日 1/14
鑑賞時間 11:15〜13:20
座席 D-6
恐ろしいほど早口なので聞き取りがしづらいので注意か…。
今年11本目(合計1,553本目/今月(2025年1月度)11本目)。
ボクシングをめぐった2人(と、取り巻く人々)のお話です。
この映画の特徴として、とにかく聞き取りづらいという点があります。早口に過ぎる部分もあれば、方言かと思える部分(ただ、東京から大阪に行くという話は出るので、東京標準語と関西弁か)があり、何を言っているのかわからない部分が多々及ぶのが極端に厳しいです(本来的な使用方法ではないでしょうが、視覚聴覚にハンディがある方向けに映画が楽しめるようにするアプリ(映画の読み上げ、字幕表示をするアプリ等)も上映中に探したのですが、本映画は対応しておらず…。
そうなると本気で聞き取るしかないのですが、ストーリー上の関係(一応ネタバレ回避)の観点でとにかく全体的に聞き取りづらく(映画館トラブルではない模様)、日本映画なのに一部を推測する必要が生じたりといった特殊な一面があります。
ただ、述べたいことはわかりますし、こういった特殊な部分(初代ベイビーわるきゅーれに近い。こちらも聞き取り困難で、日本映画なのに字幕つきが放映されたりといったことがあった。2以降は改善されている)があることまで了知してみるなら、ボクシング好きなどといった観点ではおすすめ以上でしょうか。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.4/正当防衛は成立するか)
正当防衛は民法・刑法上で若干規定が異なりますが、「他人の不法行為に対し」やむを得ず行った最低限の加害行為を正当化するだけであり、先行行為として「他人の不法行為」があることを要します(720条)。映画内で「正当防衛だ」というシーンはどれもこの条件を満たしていないので解釈上まずいです。この辺は映画では適当に使われることが多いのですが(ほか、「通達」や「避難命令」などの語もお好きなようでよく出てくる)、法律系資格持ちを解釈上ごまかすのは無理です。
(減点0.2/心裡留保の第三者対抗要件)
(身分行為ではない)心裡留保は、善意の第三者に対抗できません(善意でありさえすればよく、無過失かどうかは問わない)。
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テルは負けない
ボクシングには何の興味もないけど、 小野田(遠藤さん)が出るから見...
ボクシングには何の興味もないけど、
小野田(遠藤さん)が出るから見た
ドラマとしてすごく良かった
最後は切ないから好きじゃないけど、
作品として好き
キャスティングもキャラ設定もどれも良かった
遠藤さん、こんな役もやるのね
伝説が始ま…
幼い頃から兄弟の様に育った兄貴分でボクサーのテルと、バイトをしながらジムで小間使いをする弟分のベンの絆と思いの話。
テルは絶対負けないと慕い信じるベンが、テルの負けを受け入れられず、暴走していくストーリー。
東日本新人王戦決勝からスタートし、粗暴で自己中なテルと、ASDらしき記憶力と一途さのベンをみせていく展開で、この話しがロードムービーに?と思っていたら…川崎から、東じゃなくて西に向かったのね。
まあバイトで鍛えられていたことと、記憶力&再現力ってことなんだろうけれど、バイト先のジムに戻って鍛えませんか?
この性格だから見下していてそんな気の利いたことは考えられないってことですかね…。
せめて目のこと話したんですかね?
ちょっと、ムリがあるもののそんな流れを受け入れて観たら、少々テルの思考がわかりにくいところはあったけれど、なかなか熱くどこか哀しく面白かった。
そして妄想はダサくない方の心情であって欲しいけど…だとしたら東京な気がするんだよなぁ…。
ボクシングの話だけどそれだけじゃない
今までみたボクシング映画の中で1番面白かったかもしれない。
ベンのテルへの妄信にも狂愛にも見える崇拝、テルのベンへの傲慢な信用、二人のある種共依存的な関係が一度の敗退で変化して行く。
絶対的な存在が自分の中で絶対でなくなった時、人はどのように気持ちに折り合いをつけるのか。
弟分からあれだけ信奉されたら、プレッシャーでおかしくなりそうだけど、俺様何様テル様だったうちは旨味成分くらいで特に負担でもなかったんだろうなあ。
でも彼は嫌なことから逃げがちで残念なとこもあるけど、心の痛みと向き合って自分の弱点に気づく強さもあったのがよかった。
それにしてもファイトシーンがすごくリアルだったわ。
色々足したり弄ったりしてない感じが余計に臨場感があったというか。
パンチのスピード感がすごくてハラハラした。重い音も痛そうで怖かったし。
ボクシングの話だったけど、背後に隠れている信奉者とその対象の関係の変化がものすごく面白かった。
優希美青
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