「抑圧される鬱憤をムエタイで晴らすムスリム女性」マイデゴル regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
抑圧される鬱憤をムエタイで晴らすムスリム女性
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イランで暮らすアフガニスタン難民の10代少女がプロのムエタイ選手になるべく、イランからの脱出を夢見る。しかし現実は家族の生活費を稼ぐためにバイトを掛け持ち。しかも父親からはとんでもないDVを受ける日々…
細かい情報を入れずに最初観た時は、昨年のTIFFでのマイベスト作『タタミ』のような、抑圧・支配された生活を余儀なくされるムスリム系女性を被写体としたドキュメンタリータッチのフィクションドラマだとばかり思っていた。だから少女を取り巻くさまざまな伏線がまったく回収されず終わってしまうので、なんとも消化不良な作品という感想しか抱けなかった。
ところが後日、これはフィクションでなくドキュメンタリーと知って驚愕。父親によるDV描写を音声のみで表しているのは、演出でもなんでもなく、少女が本当に虐待されている様子を盗聴したもの。終盤でのムスリム女性達による本音トークは、ヒジャーブこそ被っているも、やはり彼女達もZ世代という事がよく分かる。
ただ、それでも苦言を呈させてもらえば、ドキュメンタリー映画として少女の顛末までをきっちり追ってほしかった。なんとか建設的な締めにしているものの、あれではやっぱり消化不良だ。
今回の映画祭もスタッフやキャストを招いてのQ&Aが目白押しだったが、この作品こそ絶対Q&Aが必要だった。
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