「自分がドラえもん映画に求めるものがすべて詰まっていた。月面探査記以来の良作」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 k tanさんの映画レビュー(感想・評価)
自分がドラえもん映画に求めるものがすべて詰まっていた。月面探査記以来の良作
【公式YouTubeのコメント欄にも投稿したものを自ら転記しています。】
かなり面白かった!!!
わさドラ映画の真骨頂という感じのハラハラドキドキ、目を離せないバトル展開。
とりあえずクレアがめっちゃかわいい。
とにかく脚本の作り込みが素晴らしかったな、という印象。
伏線の張り方と回収の方法まで。
とくにクレアの消滅シーンでは、「あ………そういうことだったのか……」となり驚きとともに思わず涙。
水もどしふりかけの件はまあだいたい多くの人がなんかあるな、と勘づいたと思うんだけど、一番すごいなと思ったのは、「クレア(絵の中ver)が風呂嫌い」という描写。
しずかちゃんのギャグ要素としてさりげなく入れられてたけど、
その風呂嫌い設定が偽クレアを見抜くためのいいエピソードづくりにもなってた上に、
「絵の中のクレアだから水浴びできなかったのか!!!」って気づいたときには目からウロコ。
あとはひみつ道具の使い方も絶妙で、水ビル建築機、かるがるつりざお、ほんものクレヨンの使われ方とストーリーへの活かされ方も実に秀逸。
ご都合主義の新しい道具とか生み出さないし。でもストーリーの根幹をなす道具(入りこみライト)だけは違和感なく新しいものをつくる、そのバランスが良い。
水ビル建築機が出てくるとかマニアック過ぎるw
あとOPの「夢をかなえてドラえもん」をちゃんと流してくれるとこ!!
あれがあることによって、「これはいつものドラえもんのお話が、ちょっとスケールが大きくなっただけだよ」と分かるので、
安心感があるし、いつものドラえもん世界なんだという親近感や
「すこしふしぎ」のワクワク感を感じさせてくれる。
OPなくしてなんか壮大な導入とドーンとタイトルが出る演出が何年か続いてて、
「ドラえもんという素材を使って自分の作りたい大作映画作ってる?」ってなってたので………
そのOP映像自体も、ものすごくこだわってて随所にネタや笑い要素もあり、ぐっと引き込まれた。
その話にもつながるけど、日常世界と非日常世界がだんだんと交じりあう描写がとても上手。
最近のオリジナル脚本の場合、一度非日常世界とつながったらずっとそっちに行きっぱなしで
あっさりと冒険世界に入ってしまうという流れが多い中、
今回はしっかりと「絵の中の世界(非日常世界)」に入り込んだり、日常世界に帰ってきたりしながら、
「クレア(非日常世界の人物)」と「遊ぶ」という、
すこしふしぎ(=日常と非日常が混じり合う)の世界をしっかり表現している。
このあたりは、TVシリーズの脚本経験が長い伊藤公志氏の手腕によるところだろうか?
また、ドラえもんとのび太の友情・絆の部分をしっかりと印象的に描いていたのも素晴らしい。
このあたりは寺本監督のこだわりが感じられた。
最後のパパのセリフにもほっこり。さすがは画家志望だったパパなだけある。
一方でいくつか気になる点も。
・ソドロの最後(色が戻った後)について一切描写がなかったのが中途半端感。
・はいりこみライトがイゼールの体内から排出された理由がハッキリしない。
・そもそもイゼールを倒せば失われた色が戻る、という理屈はどこから来たのか?
・アートリア公国がどうなったのかをちょっとでも匂わせてほしかった
(ソドロの言ってた通り火山で滅びてしまうのだとしたら救いがなさすぎる)
・バトルの絶体絶命感が強烈過ぎて、さすがにそうはならんやろ…となった感じが若干
(ex.イゼールは湖の水が襲ってきたのは蹴散らせたのに、水の城が水に戻ったやつくらいでやられるの?っていう)
おそらく、ラストの感動ポイント(クレアとの突然の別れ)に焦点を絞るために
決着部分は説明少なめの勢いで済ませた感があった。
バトルの結末とラスト(クレアの帰還と記憶の承継の部分)はご都合主義感は否めないものの、
鑑賞後の読後感(?)がとても良くすっきりと劇場を後にできた(アートリア公国のその後については気になりつつも)。
わさドラのオリジナル映画としては、月面探査記と1・2を争うくらい素晴らしい作品でした。
間違いなく何回か見に行きます。