「ドラえもんが大好きだ〜〜〜」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 一さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラえもんが大好きだ〜〜〜
ドラえもんが大好きだ〜〜〜って思いが感じられる良作でした。
なによりキャラクターの解像度が高い。アートリア公国での各キャラクターの部屋に置いてある小物がニヤリするラインナップになっていますし、キャラクターの言動が素晴らしい。
どうしても映画になるとキャラクターの言動が「超大作だぞい!」というようなものになってしまいがちです。しかし本作は各キャラクターが伸び伸びと自然に、でも映画のスケール感や奥行きを確保しつつ動いている。
クライマックス後、クレアが帰ってきて、のび太たちが現代に戻る。大団円で、アートリア公国キャラクターは退場して、のび太たちだけのアフターエピソードが描かれるかと思いきや、ちょっとした情報が付け加えられる。この短いエピソードだけで、マイロの優しさや制作陣がクレアを大切に思っていることが伝わってきます。
寺本監督の過去作『ひみつ道具博物館』で描かれたのび太とドラえもんの関係性も素敵なものでしたが、本作でも素敵な関係性が描かれています。
本作ののび太が自分が描いた絵の中のドラえもんと出会うシーン、
絵の中のドラえもんが絵の外に出る、ドラえもんが全部解決してくれるという展開もありえた中で、のび太に道具を渡して頑張れと送り出しています。
このドラえもんは、絵を描いたのび太の想像の中のドラえもん、つまりのび太がドラえもんをそういう存在だと思っているのかがわかります。
ストーリーも理論的に組み立てられ、でも押し付けがましくなっていない。
伏線の張りかたも丁寧で、特にクレアとしずかちゃんの部屋で休んでいるときのシーンが、しずかちゃんらしいちょっとした息抜きの小ネタであると同時に、のちのシーンで使われ、さらにはクライマックスの伏線にもなっていて、力量の高さが感じられました。
オープニング映像も、ここ最近は監督によってあったりなかったり、力の入れ方も様々でしたが、本作は愉快でワクワクするもので月面探査記ぶりにOP映像だけずっと観てたいなと思いました。
寺本監督らしい伸び伸びと、隅々まで明るさに満ちた、観ていて楽しい作品でした。
残念なところを挙げるとすれば、寺本監督の作品に共通して言えるのですが、クライマックスの着地のちょっと無理矢理感や散らがりがちなところがあり、そこは気になりました。
あと、すこし本編から逸れるので書くか悩みましたが、ラストでいい絵だって言い切るのび太のパパに胸を打たれました。
テレビで、評論家が、価値のない絵だと言っているのに対して、悠然といい絵だよと言い切る。
他の人が〇〇って言ってるからと右ならえしたり、誰か自分と同じ意見を言って初めて自分の意見を口に出す。そういう人って多いと思います。
自分で考えて、自分の答えを出す。不安かもしれないけど、それってとても大切で、特に大好きだ〜〜〜って思いを込めてアウトプットするには必要なものです。
それに自分が大好きだ〜〜〜って思って作ったものは、かならず誰かに伝わるんだって、肯定してもらえた気がして、涙腺が緩みました。
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