「蒙昧な大統領はここもリゾートにするのか」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
蒙昧な大統領はここもリゾートにするのか
イスラエルからの爆撃で街をズタズタにされたガザから50~100キロほど東方のヨルダン川西岸パレスチナ人自治区(本来は、当然パレスチナ人の居住区の筈)で、パレスチナの人々が長年暮らして来た村の家を次々と破壊するイスラエルの蛮行を記録したドキュメンタリーです。本作の特徴は、それをパレスチナ人監督だけでなくイスラエル人監督と共に記録した点です。
軍事訓練所にするという名目でイスラエルは一方的に住民の立ち退きを迫ります。それは道理が通らないと裁判に訴えても、審理するのはイスラエルの裁判所ですから簡単に退けられます。イスラエルは、ブルドーザーで家を押し潰して行きます。更に、村で用いて来た井戸にコンクリートを流し込み、水道用のパイプは切断してしまいます。銃を突きつけられる村の人々はそれを見ているしかないのでした。
こんな非道な行為に直接関わるイスラエルの警察官らは「恥ずかしくないのか」と問われて
「決まった事だ。なぜ恥じる必要がある」
と傲然と答えます。更に恐ろしいのは、パレスチナ人居住区に入植して来たイスラエル民間人までもが銃を持ってイスラエル警官と並んで銃撃して来る事です。イスラエルは国連決議などは一切無視しているので、「パレスチナ人はみんなここから出て行け」と言いたいのでしょうが、パレスチナ人が国外に出るにはイスラエルの厳しい制限があり容易ではありません。まさしく彼らにとっては、心の中でも現実社会でも "No other land" - 故郷は他にない のでした。
解決の糸口などどこにも見出せそうにありません。「ガザをリゾート地に」などという蒙昧な大統領の妄言が妙にリアルに響いて来ます。この作品をイスラエル人、イスラエル支持者はどう見るのか、多くの意見を是非聞きたいな。