劇場公開日 2025年2月21日

「理不尽極まりない暴挙にカメラと言葉で戦う2人の青年」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない AZUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0理不尽極まりない暴挙にカメラと言葉で戦う2人の青年

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

今作を見る前日、私は『セプテンバー5』を見た。
ミュンヘンオリンピックでのパレスチナ武装組織が、イスラエル選手たちを人質にし全員死亡という悲劇を取り扱った作品だ。

その作品を見た後、罪もないイスラエルの選手たちに、パレスチナの人たちはなんて酷いことをするんだと憤った。
しかし本日このドキュメンタリーを見て、私は昨日とは全く逆の怒りを感じている。罪もないパレスチナの民間人に、イスラエルの人たちはなんて酷いことをするだろうと。
つまり、こういうことなのだ。どちらが正義で悪とかではなく、これはもう繰り返し行われる復讐の連鎖なのだと。

そして私は、答えの出ないこの長く根が深く、絡まりが簡単には解くことができない現実に打ちひしがれながら映画館を後にした。

命をかけてこの現象を映像や文章で届けようとした、パレスチナ人とイスラエル人の青年ふたり。彼らが突きつけて来る映像は、一方的に暴挙の限りを尽くすイスラエル側の非道さと、理不尽でしかない映像ばかり。何度も目を背けなくなって、誰か早く彼らを救ってくれと願わずにはいられなかった。
ドキュメンタリー映画は、フィクションという逃げ道が無いからこそ、見る側は否応なく受け止めるしか無い。でも受け止めた私たちに一体何が出来るのか、そればかり考えている。

この作品がアカデミー賞に取り上げられたことで、知名度が上がり、世界中の多くの人が見ることで少しでも良いから良い方に動き出してほしい。

パレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァル、2人がいつか何のしがらみも制限もなく、これからの未来を明るく楽しく語り合う日が、1日でも早く訪れてほしい。涓滴岩を穿つ日が必ず訪れることを信じるしかない。

AZU