劇場公開日 2025年2月21日

ノー・アザー・ランド 故郷は他にないのレビュー・感想・評価

全119件中、1~20件目を表示

4.0カメラは身を守る手段だと知った。

2025年3月8日
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鑑賞方法:映画館

カメラの前でも暴力ははたらかれる。でも撃たれたり危害(殴打など)が加えられるのは、「撮られてない」時なのではないか。
カメラの前の兵士や入植者といった、このドキュメンタリーの加害者側は、言葉や仕草で威嚇する場面が多い。威嚇にしても銃口や実際に殴り倒されたような場面もあるし、確かに映画化段階で凄惨な所は除かれたに違いないとも思う。でも、人が撃たれた瞬間はカメラが壊れてスマホで代替していた時だし、遠くから撮っていた時だった。つまり兵士はカメラの存在に気づいてなかった可能性がある。撮られてない。つまり自分たちの暴力が「バレない」時、酷いことができてしまうんじゃないか。
だから人々は「撮ってるぞ」と連呼していたのかもしれない。「お前たちのやってることは、知れ渡るぞ。」暴力がここだけの、限定されたものではなく、他人が知ることになる可能性があることは、それだけで抑止になるんだと思った。
であれば、映像に残らない、この画面の外ではもっと、考えうる以上に酷い状況なのではないか。
胃のものがせり上がるような鑑賞だった。

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消々

4.5学校の授業で、国会で、全映画ファンに、今こそ観ておいてほしい映画です!!

2025年3月2日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

観終わった後の感想は、
「衝撃」のひと言に尽きます。

これは現実なのか?と疑いたくなるような惨劇が、終始フィルムを埋め尽くします。願わくばフィクションであってほしい出来事は、紛れもないノンフィクションで、記録ドキュメンタリーというくくりでこの映画は紹介されています。

撮影者たちが、捨て身の体当たりで伝えたかったこととは?

ただ普通に生活したいだけなのに、それすら許されない。住むところが破壊されるという恐怖は想像するのも恐ろしい。生まれる時や場所を選べない彼らの苦悩と絶望が、この映画を通して痛いほど伝わります。

「対岸の火事」ではなく
まずは、「正しく知ること」が大事。

次に、無力な自分を想う
そして最後に、ただ祈る🙏

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ななやお

4.0理不尽極まりない暴挙にカメラと言葉で戦う2人の青年

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

今作を見る前日、私は『セプテンバー5』を見た。
ミュンヘンオリンピックでのパレスチナ武装組織が、イスラエル選手たちを人質にし全員死亡という悲劇を取り扱った作品だ。

その作品を見た後、罪もないイスラエルの選手たちに、パレスチナの人たちはなんて酷いことをするんだと憤った。
しかし本日このドキュメンタリーを見て、私は昨日とは全く逆の怒りを感じている。罪もないパレスチナの民間人に、イスラエルの人たちはなんて酷いことをするだろうと。
つまり、こういうことなのだ。どちらが正義で悪とかではなく、これはもう繰り返し行われる復讐の連鎖なのだと。

そして私は、答えの出ないこの長く根が深く、絡まりが簡単には解くことができない現実に打ちひしがれながら映画館を後にした。

命をかけてこの現象を映像や文章で届けようとした、パレスチナ人とイスラエル人の青年ふたり。彼らが突きつけて来る映像は、一方的に暴挙の限りを尽くすイスラエル側の非道さと、理不尽でしかない映像ばかり。何度も目を背けなくなって、誰か早く彼らを救ってくれと願わずにはいられなかった。
ドキュメンタリー映画は、フィクションという逃げ道が無いからこそ、見る側は否応なく受け止めるしか無い。でも受け止めた私たちに一体何が出来るのか、そればかり考えている。

この作品がアカデミー賞に取り上げられたことで、知名度が上がり、世界中の多くの人が見ることで少しでも良いから良い方に動き出してほしい。

パレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァル、2人がいつか何のしがらみも制限もなく、これからの未来を明るく楽しく語り合う日が、1日でも早く訪れてほしい。涓滴岩を穿つ日が必ず訪れることを信じるしかない。

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AZU

5.0土地を奪われるということ

2025年2月28日
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鑑賞方法:映画館

パレスチナ、ヨルダン河西岸のマサーフェル・ヤッタという地域で、イスラエル人入植者たちによる弾圧の実態を捉えたドキュメンタリーだ。ここに射撃場訓練場を建設するという目的で、イスラエルはこの地に暮らす住民を強制的に退去させ、むりやり家を破壊していく。武器を持った軍もこれを支援している様子がカメラに収められており、パレスチナ人に対する理不尽が白日にさらされている。
トランプがガザの住民を強制退去させてリゾート地にすると発言したことが世界中で波紋を広げているが、土地を奪われ、追い出されることがどれだけ辛いことなのか、そのリアルがこの映画にはある。
本作を監督したのは、作品の主人公的な立ち位置でもあるパレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァルだ。この2人が立場の違いを超えて友情を築き、この映画を作っているということ自体が、この理不尽に対する微かな希望となっている。今の国際情勢の、数字だけでは見えない地に足の着いたリアルが確実に写されている作品だ。

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杉本穂高

4.0事実を知ると共に、本作の制作体制にも注目したい

2025年2月26日
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鑑賞方法:試写会

あらかじめ言っておくと、本作内でイスラエルとパレスチナの関係を改めて詳述することはない。よって鑑賞前後には確認の意味を込め、事実関係を頭の中で整理しておくと良いかも。そうやってマクロで知る自分の知識と、本作を通じ突きつけられるミクロ的な現状によって、私自身、これまでTV報道で漠然と聞き流していた場所の空気、人々の悲鳴、息遣いが初めて線と線で繋がったような感覚を覚えた。これはパレスチナ自治区の一つ、ヨルダン川西岸地区のとある村でイスラエルによっていかなる行為が行われてきたかを、パレスチナ 人の若者の視点で描き出したものだ。また彼のみならず、イスラエル人のジャーナリストの若者が支援に加わり、共に活動する。そこで交わされる同世代の何気ない言葉、思いやり、敬意もまた本作の命。彼らを含む計4人体制(イスラエル人ふたり、パレスチナ人ふたり)で対話を重ねて完全合意制で監督を担っている点も深く注目したい。

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牛津厚信

3.5Timely Document about the State of Palestine

2025年1月21日
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鑑賞方法:試写会

Shot over four years in the Palestinian West Bank, No Other Land puts you right in the eyes of the people pushed out of their homes by Israeli settlers. The filmmakers themselves are attacked by Israeli soldiers in the film. Ironically, the documentary stops just before the October 7th massacre. See for yourself the bizzarre injustice people of the world struggle through in our 21st century.

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Dan Knighton

3.5家を壊され土地を奪われること。

2025年9月3日
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鑑賞方法:VOD

この映画では語られない真実が隠れているのでは?
そう見終わって考えました。
これだけでは不十分です。
はっきりしている事実は、
★他人の土地や家を奪ってはならない、
★イスラエル国は、どんな理由をつけようと悪い‼️
この映画がアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したのは
周知のことですが、
帰国した監督のハムダン・バラル氏はイスラエル入植者たちに
暴力を受けて、頭部と腹部に大怪我をしたそうで、全く酷い話である。

この映画は2019年夏にバゼル・アドラがカメラを回しはじめ、
直ぐに家が壊され、仕方なくアドラ一家は大きな電気も水もない
洞窟に避難します。
その後も、マザーフェル・ヤッタの村人100人位は、家を学校を次々と
イスララエル軍のブルドーザーで破壊されて行くのです。

2023年10月に映画は突然終わります。
それはハマスがイスラエルを奇襲して1200人を殺し、人質450人を取って
ガザ地区を占領したから、怒ったイスラエルの報復の、
恐ろしいガザ壊滅作戦が
今もますます過激化しているのです。

★パレスチナは独立国家ではありません。
パレスチナ自治区に過ぎないのです。警察組織もないのです。
そこにハマスというイスラム原理主義者の過激派組織が、大手を奮って
我が物顔に好き勝手をしているのです。
ハマスは1万5000人から4万人位の構成員がいるそうです。
パレスチナ自治区はハマスに乗っ取られているのです。

★パレスチナ人が故郷を愛している(映画の副題の通り)
★パレスチナ人を受け入れる国がない。
★★パレスチナ人には根強いイスラエルへの抵抗意識がある。
などで八方塞がりなのです。

この映画の主役アドラさんの父親もアドラさんの子供の頃から、
抵抗運動家だったと描かれています。
アドラ一家の職業は給油所(ガソリンスタンドかな?)
ここは襲撃されない・・・
そのガソリンはどういうルートで供給されているのだろう?
映画を見た限りでは、アドラさんにしても30代半ばでろくに働いていない。
法科を出たが弁護士の仕事はなく、イスラエルに行って作業員しか仕事に
就けない。
多くの人々が仕事をしていないのです。
また不思議なことに妙齢の女性が殆ど見当たらないのです。
若い女郎性はどこへ行ったのでしょう?
そして産業がない。
せいぜい羊飼いくらいである。
農作をする畑がどこにもないほどの痩せ地なのか?
と、疑問は尽きないのですが、

しかし翻って日本人の現実を思っています。
地震災害や洪水で家を失う人が後をたちません。
それがどれほどに生きる意欲を削ぐことなのか?
それを振り返るとパレスチナ人の苦しみにも
共感してなんとかならないのか?
と切々と思います。

蛇の生殺しみたいな閉塞した現実が、痛ましい。
国が機能していないこと。国際社会からの孤立。
それが一番の問題点で原因かもしれません。

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琥珀糖

4.0100年前から続く

2025年8月31日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

驚く

イスラエルによる占領と破壊の続くパレスチナ自治区ヨルダン川西岸(イスラエルを挟んでガザの反対側)に住み、理不尽な現状を映像で世界に向けて発信するパレスチナ人ジャーナリストの青年と、同じくイスラエルによる占領に反対し、パレスチナ人ジャーナリスト青年と協力してヨルダン川西岸で取材し映像を発信するイスラエル人ジャーナリストの青年。2人が2023年10月までの4年間に渡り、イスラエル軍や入植者の暴力による破壊活動を命がけで記録したドキュメンタリー映画。監督は彼ら2人に加えてパレスチナ人とイスラエル人が1人ずつ、計4人となっているとのこと。

今やテレビでもしょっちゅう流れるようになったパレスチナの映像だが、そのほとんどはガザの惨状だ。一方、映画で映し出されるのはそれ以前のヨルダン川西岸の様子。イスラエル人入植者とイスラエル軍によってパレスチナ人の家屋や小学校までもがブルドーザーで破壊され、井戸がコンクリートで埋められる。住居も土地も奪われ、追い立てられていくパレスチナ人。イスラエル軍や入植者に銃で撃たれて死んだり半身不随になる者もいる。そのような理不尽で非道なイスラエル軍と入植者の行為を、2人はスマホやハンディカメラで接写して臨場感あふれる命がけの映像を撮っていく。そのようなひどいことの連続がパレスチナの日常であり、イスラエル建国と数度の中東戦争以来数十年、いや建国以前からユダヤ人の移住はあったんだから100年近くに渡って続いてきたとも言える。もっとも迫害が激しくなったのは60年代から80年代らしいんで、そこからは40年から60年でやっぱり数十年だ。思えば90年代にはPLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相の間で和平の動きがあり、ほのかに希望の見えた時期もあったが、今となっては遥か夢の彼方となってしまった。それにしてもパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でのイスラエル軍およびイスラエル人入植者の行為を見ていると、満洲国における関東軍と満洲開拓移民もおそらくはこうだったんだろうなあと連想させられた。そういう意味では日本人にとっても決して他人事ではないと思わされる。

そして、この映画で意外にもそれ以上に印象深いのは、そのような過酷な映像の合間に映し出される2人の青年の会話と交流のシーンだ。共に撮影を続ける2人が語り合うパレスチナとイスラエルの未来についての対話や、2人の若者の間に生まれる友情が静かに胸を打つ。パレスチナとかイスラエルとかではなく同年代の若者の、1人の人間と1人の人間の関係こそが未来を形作っていくのではないか? そういうほのかな希望が宿る。そんな映画でした。

撮影は2023年10月で終わったことが示されるが、エピローグとしてガザとイスラエルの紛争が再び勃発したこと、ヨルダン川西岸でも事態はますますひどくなっていることが触れられる。この映画のパレスチナ人監督の1人がイスラエル軍に拘束されたというニュースが今年流れたことも記憶に新しい(後に解放)。映画の中でパレスチナ人ジャーナリストの青年がイスラエル人ジャーナリストの青年に「焦りすぎだ。数十年の問題が1日で解決はしない」と言うシーンがあるが、解決にはまだ多くの歳月が必要なのかもしれない。

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バラージ

3.5引用させてください

2025年7月12日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

映画鑑賞後、パンフレットを購入して読んで見ました。意外にもこの映画についての辛辣とも言えるコメントがあったので引用させてください。
「(前略)パレスチナとイスラエルの両当事者による共働は、パレスチナ問題の現実が厳しいとものであるほどに、救いに近い感情を与える。一方で、映画としてはある種のパターン化に陥っている印象が否めない。平和主義者のパレスチナ人とリベラルなイスラエル人が登場し、勇気ある共働に国外から高い評価が送られるという一連の流れである。(後略)」(鈴木啓之東大特任准教授)

この映画の制作国にはノルウェーが名を連ねている。「オスロ合意」のノルウェーである。「オスロ合意」を無視するイスラエルへのノルウェーの人たちの憤りが映画制作の原動力になったのかも知れない。
現実は映画よりも絶望的な状況になっているのは言うまでもない。再び光が差し込む日は来るのだろうか。

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ひろ702

4.0「マサーフェル・ヤッタとイスラエルの青年」

2025年5月7日
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知的

今年115本目。

ポレポレ東中野で。
2人がマサーフェル・ヤッタでカメラを回す。2023年10月のガザ侵攻の前に撮られた映像。数十年続いているが平和解決して欲しい。

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ヨッシー

5.0言葉が出ないシーンばかりだが、希望も感じた作品

2025年5月6日
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鑑賞方法:映画館

怖い

単純

難しい

話題のドキュメントで、アカデミー賞国際長編ドキュメント賞受賞作品。
やっと観ることができたが、文句なし素晴らしかった。
中東情勢は現在進行形だが、とにかく今回の作品は言葉が出ないシーンばかり。
イスラエル人入植者がまさか武装してパレスチナ居住区に来るとは思わなかった。
今回の作品も含めて日本のニュース以上に深刻な中東情勢であることは間違いない。
そんな中でも、この作品のメインテーマでもあるパレスチナ人青年とイスラエル人青年ジャーナリストの命がけの交流、対話は印象に残った。
二人のセリフは胸に響くし色々考えさせられた。
今年のベストドキュメント有力作品といえる。
中東情勢に関心がある方は必見のドキュメント作品です。

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ナベウーロンティー

4.0まだなにも終わっていない

2025年4月29日
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ハマス云々以前にあれだけ理不尽、横暴があって、それでもイスラエルを支援している人はどれだけ利を得ているのか。
あの村だけの話じゃない。非道い。
二人の行く末も、未来も見えない。
自分が置かれているところへの有り難みもあるけれど、出来ることはしたい。

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kawa

2.5日本では報道されないパレスチナの現実

2025年4月26日
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鑑賞方法:映画館

イスラエル軍による占領が進むパレスチナの様子をありのままに映し出し
その酷い状況を目の当たりにし、彼の地に対する思いを新たにした。

それにしても酷い、酷すぎる。
家を壊され、土地を追い出される場面を目の当たりにし、
日本での自分自身に置き換えて考えたときに、同じ状況になったら、どうなるのだろう?と
想像しながら観た。

こういう報道を日本でもして欲しい。
しかしながら、今回こういう映画作品として、現地のリアルを目の当たりにする人が
増えていくのを期待する。

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ひでちゃぴん

4.0日本に暮らしていると、忘れている現実を映し出す。

2025年4月26日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

必要十分な食事が毎日摂れること。
義務教育を受けること。
男女平等であること。
尊厳が保障されていること。
病気になったら医者にかかること。
清潔なトイレをいつでも利用できること。
安全で安心な我が家に住めること。
命の危険にさらされないこと。

日本では普通のことが、普通ではない世界があることを思い知る。
イスラエルとその為政者を理解しようとしなくていいし、パレスチナの人たちに同情するのも違うと思った。
日本も、一見平和な今の状態が続くとは限らない。
なんせ、大荒れの東アジアの一員で、隣国はロシアなのだ。
世界は繋がっているから、知り、考え、行動していかなくちゃ。

エンタメ要素もなく、楽しい気分になる映画では全くない。
でも、観る価値のある映画だった。
ドイツとアメリカでドキュメンタリー賞を受賞したこと、そしてなによりバーセルとユバルの友情に心から拍手を送りたい。

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のりたまちび

5.0怒りで公平なレビューが書けない。

2025年4月24日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

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Tabby

3.5まずは怒ろう。そして知ることを始めよう。

2025年4月24日
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鑑賞方法:映画館

この映画の日本公開の直前となる2月にホワイトハウスの狂人がガザ地区について驚天動地の発言をしたことは記憶に新しい。あそこまで歴史的背景や人道的立場や社会正義に依拠しない、というのはある意味凄いね。
さてこの映画、2023年の10月に撮影が終わっています。ちょうどその10月7日にハマスの大規模襲撃が発生し報復としてガザ地区に対するイスラエルの攻撃と虐殺が始まる。でもこの映画は2019年から撮影されている。つまりパレスチナ自治区の一つであるヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの不法行為はガザ紛争以前に既に始まっていたことになる。
パレスチナ自治区(ガザと西岸地区)は1967年の第三次中東戦争(いわゆる六日戦争)でのイスラエルの占領地。もともとはオスマントルコの版図に属していたが、第二次世界大戦を経てイギリスの委任自治領となり、中東戦争直前はそれぞれエジプトとヨルダンの委任自治領だった。つまりパレスチナという主権国家が存在したことはない。
イスラエルが戦争後、50年近くに渡って、占領地としての占有を続けていること自体、どうかなとは思うけど、それは戦争の結果だからある程度仕方がない。でも、パレスチナ系住民に対するイスラエルの行為は、明らかに国家をもたない人々の弱みにつけ込み実効支配を拡大しようとする不当行為である。そもそも、この映画で触れられているように、パレスチナ人たちは1900年代から、古い人は1830年頃に入植した正当な住民であり、軍用地にするからといって一方的に排除する法的妥当性はない。(先行レビューに、「ユダヤ人の故地」と言った言説があるが、それは古代イスラエル王国とかの話であり3000年も前のいわば伝承である)さらに、住民の排除に際しては、軍隊はもちろん、イスラエル人入植者が暴力でもって介入しており、無法状態にあるといって良い。今回、映画の最後で、入植者がパレスチナ人に対して発砲する場面が撮影されているが、白昼堂々と銃器を持った一般人が犯罪行為を行うなどイスラエルは最早国家としての体をなしていないと非難されてしかるべきだと考える。
映画の宣伝ではパレスチナ人監督とイスラエル人監督の友情に焦点を当てているが、そういった心情的な部分はどうでも良い。どうでもいいというのは語弊があるかもしれないけどこの酷い状況をまずは怒ろう。彼らは勇気を持ってこの映画を製作しており、その目的はまず世界にその現実を知ってもらうことにあるとしている。だから我々はしっかりこの思いを受け止め、知識として足りない部分があるのならば、調べるものは調べて、何が起こっているのかを自分なりにきちんとおさえて、可能な限り、SNS等で自分の考えを拡散していくべきだろう。

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あんちゃん

5.0世界中が見てほしい

2025年4月24日
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泣ける

興奮

驚く

ふだん全く映画館で映画を見ないのですが、周りの評判が良いので見に行きました。
ショックでした。
毎日SNSに流れてくる虐殺、侵略、わかっているつもりでもなにも見えていなかった。
上映中の2時間、わたしはパレスチナにいました。
あまりにも理不尽な、イスラエルによる暴力。
この映画を作ってくれたことに感謝します。

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もぐらん

3.5ノー アザー ランド

2025年4月20日
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自身の物の知らなさを痛感しました。
現行のガザ侵攻は、ハマスがイベント会場を急襲し、多数の人質を取ったせいだと誤解してました。
それ以前から、日常的にガザに押し入り、家屋を破壊し、暴力を振るう。
至近距離からの、発砲までも。
子ども達が授業を受けている最中に、学校を襲い、子ども達を放り出し、眼の前で校舎を破壊する。
男女差別論者ではないが、女性兵士が子ども達を抑圧する姿に、とても衝撃を受けました。
イスラエルを唯一止められる超大国の大統領は、パレスチナの人々を追い出して、一大リゾートを造る等と言い出す始末。
かつてナチスに虐げられた人々が、パレスチナ人に同じ虐待を続けている。
救いようのない、悲劇の皮肉です。

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映画館難民

4.0真のジャーナリズム

2025年4月20日
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悲しい

 身の危険を冒して撮影する若き監督たちには頭が垂れる思いだ。銃を持った兵士たちに臆することなくカメラを向ける姿からは真のジャーナリスト魂が感じられる。人権を無視したこの理不尽な破壊活動を世界に伝えようという強い意志が全編から伝わってくる。力作と言って良いだろう。

 監督は4人の連名となっている。映画はその中の二人、パレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァルを主な登場人物に据えて、イスラエル軍によるパレスチナ人に対する弾圧が映し出されていく。これが現在イスラエルで起きていることだと思うと、暗澹たる気持ちにさせられる。

 映画はこうした惨状を赤裸々に捉えていくが、同時に取材するバーセルとユヴァル、立場を超えた二人の友情も描かれていく。これは終わりの見えない不毛な争いを照らす小さな光のように感じられた。彼らのように分かりあえることが出来れば、このような醜い争いなど起こらないのに…と思う。

 印象的だったのは、あるパレスチナ人青年がイスラエル兵に撃たれて四肢麻痺の身体になってしまうエピソードである。家も破壊されて住む場所を失った家族は洞窟の中で惨めな暮らしを余儀なくさせられる。青年の母親の深い慟哭に憐憫の情が禁じ得なかった。

 もう一、パレスチナ人とイスラエル人では車のナンバープレートの色が違うというのも印象的だった。パレスチナ人の車は緑色、イスラエル人の車は黄色のプレートと分けられている。バーセルの父親は給油所を経営しているのだが、店先に黄色と緑色のナンバープレートが掲げられている。これはどちらの車でも給油できるという印なのだろう。

 そして、当然のことながら緑色のナンバープレートの車は居住区を出ることが出来ない。そのためユヴァルとバーセルが会うためには、いつもイスラエル人のユヴァルがパレスチナ人のバーセルの家を訪ねることになる。うろ覚えであるが、ある時バーセルがこんなことをポツリと呟く。
「いつか君を訪ねる日が来るだろうか?」
この言葉は二人の立場の違いをさりげなく物語っているように思った。
 確かに二人は同じ志を持つ盟友である。しかし、決して対等というわけではなく、根本的な所ではやはり格差が存在するのである。願わくば自由に行き来できるようになればいいのだが、果たしてそんな未来はいつになったら来るのだろう…と考えさせられてしまった。

 また、映画のタイトル「ノー・アザー・ランド(原題)」は、他に行くべき場所はないというような意味だが、これもバーセルの思いを表した言葉と言えよう。ユヴァルには帰れる場所がある。しかし、自分にはここしかないという悲しみ。二人の住む世界の違いを端的に表しているように思った。

 ちなみに、最近、4人の共同監督の内の一人が、イスラエル人の入植者に暴行を受けて軍に連行されたというニュースが話題になった。その後、無事に保護されたということだが、その時に受けた傷は今でも癒えてないという。
 実際に本作でもバーセルたちが軍人から暴行されたり連行されそうになるシーンが出てきてヒヤッとさせられた。今回の事件は実際にそれが起こってしまったというわけである。
 このような危険な状況を顧みず勇猛果敢にカメラを回し続けた4人の監督たちには、改めて敬服するばかりである。

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ありの

5.0恐怖に駆られているのはどちらか。

2025年4月13日
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鑑賞方法:映画館

映像を観ていると、恐怖に駆られているのは、パレスチナの人々ではなく、軍や武装した入植者の方であることがよくわかる。自分たちのしていることは国際法違反であることを自覚し、人道上の後ろめたさもあるからこそ、武力や詭弁のような国内法を盾に、破壊活動や言論統制を進めて、時には実際に発砲もするのだ。
本当に哀れなのはどちらか。

ガザ侵攻前のイスラエルのパレスチナへの戦争犯罪については、アジアンドキュメンタリーズの「ガザ 自由への闘い」が無料で視聴できるので、ぜひこちらもご覧いただきたい。

単品購入という形にはなるが、そのサイトには、「医学生ガザへ行く」もある。在りし日の美しいガザの街並みと、そこに暮らす人々が、当たり前だが、とても人間らしく生きている様子が伝わってくる。

パレスチナで、恐怖に駆られた狂信者たちの被害に遭っているのは、単なる数ではなく、固有名詞を持った一人一人の人間であることを忘れないようにしたいと強く思った。
そして、どちらの国家や民族を支持するとか、右だ左だという二者択一に陥ることなく、真に公正公平と社会正義が実現する世界の方向を見据え、自分のできることをしたい。

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sow_miya
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