ノー・アザー・ランド 故郷は他にない

劇場公開日:

解説・あらすじ

破壊される故郷を撮影するパレスチナ人青年と、彼の活動を支えるイスラエル人青年の友情を、2023年10月までの4年間にわたり記録したドキュメンタリー。2024年・第74回ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞を受賞し、第97回アカデミー賞でも長編ドキュメンタリー賞を受賞した。

ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区マサーフェル・ヤッタで生まれ育ったバーセル・アドラーは、イスラエル軍による占領が進む故郷の様子を幼い頃からカメラに収め、世界へ向けて発信してきた。そんな彼のもとに、自国政府の非人道的な行為に心を痛めるイスラエル人ジャーナリストのユバル・アブラハームが訪ねてくる。同じ思いで行動をともにし、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ねるなかで、2人の間には友情が芽生えはじめる。しかしその間にも軍の破壊行為は過激さを増し、彼らが撮影する映像にも痛ましい犠牲者の姿が増えていく。

バーセルとユバルを含む2人のパレスチナ人と2人のイスラエル人による映像作家兼活動家が共同で監督を務め、不条理な占領行為とそれに立ち向かう人々の姿を、当事者だからこそ撮影できる至近距離からの映像で描きだす。

2024年製作/95分/G/ノルウェー・パレスチナ合作
原題または英題:No Other Land
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2025年2月21日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第97回 アカデミー賞(2025年)

受賞

長編ドキュメンタリー賞  
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(C)2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

映画レビュー

4.0カメラは身を守る手段だと知った。

2025年3月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

カメラの前でも暴力ははたらかれる。でも撃たれたり危害(殴打など)が加えられるのは、「撮られてない」時なのではないか。
カメラの前の兵士や入植者といった、このドキュメンタリーの加害者側は、言葉や仕草で威嚇する場面が多い。威嚇にしても銃口や実際に殴り倒されたような場面もあるし、確かに映画化段階で凄惨な所は除かれたに違いないとも思う。でも、人が撃たれた瞬間はカメラが壊れてスマホで代替していた時だし、遠くから撮っていた時だった。つまり兵士はカメラの存在に気づいてなかった可能性がある。撮られてない。つまり自分たちの暴力が「バレない」時、酷いことができてしまうんじゃないか。
だから人々は「撮ってるぞ」と連呼していたのかもしれない。「お前たちのやってることは、知れ渡るぞ。」暴力がここだけの、限定されたものではなく、他人が知ることになる可能性があることは、それだけで抑止になるんだと思った。
であれば、映像に残らない、この画面の外ではもっと、考えうる以上に酷い状況なのではないか。
胃のものがせり上がるような鑑賞だった。

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消々

4.5学校の授業で、国会で、全映画ファンに、今こそ観ておいてほしい映画です!!

2025年3月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

観終わった後の感想は、
「衝撃」のひと言に尽きます。

これは現実なのか?と疑いたくなるような惨劇が、終始フィルムを埋め尽くします。願わくばフィクションであってほしい出来事は、紛れもないノンフィクションで、記録ドキュメンタリーというくくりでこの映画は紹介されています。

撮影者たちが、捨て身の体当たりで伝えたかったこととは?

ただ普通に生活したいだけなのに、それすら許されない。住むところが破壊されるという恐怖は想像するのも恐ろしい。生まれる時や場所を選べない彼らの苦悩と絶望が、この映画を通して痛いほど伝わります。

「対岸の火事」ではなく
まずは、「正しく知ること」が大事。

次に、無力な自分を想う
そして最後に、ただ祈る🙏

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共感した! 13件)
ななやお

4.0理不尽極まりない暴挙にカメラと言葉で戦う2人の青年

2025年2月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

今作を見る前日、私は『セプテンバー5』を見た。
ミュンヘンオリンピックでのパレスチナ武装組織が、イスラエル選手たちを人質にし全員死亡という悲劇を取り扱った作品だ。

その作品を見た後、罪もないイスラエルの選手たちに、パレスチナの人たちはなんて酷いことをするんだと憤った。
しかし本日このドキュメンタリーを見て、私は昨日とは全く逆の怒りを感じている。罪もないパレスチナの民間人に、イスラエルの人たちはなんて酷いことをするだろうと。
つまり、こういうことなのだ。どちらが正義で悪とかではなく、これはもう繰り返し行われる復讐の連鎖なのだと。

そして私は、答えの出ないこの長く根が深く、絡まりが簡単には解くことができない現実に打ちひしがれながら映画館を後にした。

命をかけてこの現象を映像や文章で届けようとした、パレスチナ人とイスラエル人の青年ふたり。彼らが突きつけて来る映像は、一方的に暴挙の限りを尽くすイスラエル側の非道さと、理不尽でしかない映像ばかり。何度も目を背けなくなって、誰か早く彼らを救ってくれと願わずにはいられなかった。
ドキュメンタリー映画は、フィクションという逃げ道が無いからこそ、見る側は否応なく受け止めるしか無い。でも受け止めた私たちに一体何が出来るのか、そればかり考えている。

この作品がアカデミー賞に取り上げられたことで、知名度が上がり、世界中の多くの人が見ることで少しでも良いから良い方に動き出してほしい。

パレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァル、2人がいつか何のしがらみも制限もなく、これからの未来を明るく楽しく語り合う日が、1日でも早く訪れてほしい。涓滴岩を穿つ日が必ず訪れることを信じるしかない。

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AZU

5.0土地を奪われるということ

2025年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

パレスチナ、ヨルダン河西岸のマサーフェル・ヤッタという地域で、イスラエル人入植者たちによる弾圧の実態を捉えたドキュメンタリーだ。ここに射撃場訓練場を建設するという目的で、イスラエルはこの地に暮らす住民を強制的に退去させ、むりやり家を破壊していく。武器を持った軍もこれを支援している様子がカメラに収められており、パレスチナ人に対する理不尽が白日にさらされている。
トランプがガザの住民を強制退去させてリゾート地にすると発言したことが世界中で波紋を広げているが、土地を奪われ、追い出されることがどれだけ辛いことなのか、そのリアルがこの映画にはある。
本作を監督したのは、作品の主人公的な立ち位置でもあるパレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァルだ。この2人が立場の違いを超えて友情を築き、この映画を作っているということ自体が、この理不尽に対する微かな希望となっている。今の国際情勢の、数字だけでは見えない地に足の着いたリアルが確実に写されている作品だ。

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杉本穂高

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