お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価
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いい話なのに、ちょっと贅肉付きすぎで気が散ってしまった
ブータンのイメージ再現が好印象、特に導師は絶妙。幸せな日常に出現した民主主義への戸惑いと動揺を通してたどり着くラストは感動モノである。
ただ映画としては難点もかなり気になった、アメリカ人は密輸の機関銃を寄進してお咎めなし?ガイドはどうなるの?なんで2丁?模擬選挙はガチの予選だったの?etc
そこが本題ではないのは分かるが、かなりのウェイトを割いているのでそっちに意識が飛んでしまう。
“今まで十分に幸せだったの”の台詞もいただけない、これはキモなので劇中でストレートに話されると急に脚本感が出て、無邪気なブータン人も映画という作りもの世界感がでてしまった。
内容は良いと思いますが、少し減点しました。
資本主義が発展したら民主主義が必要になるけど、資本主義がなかったら?
「他国では血を流して勝ち取った民主主義」というありがたいものを導入するのだ、という政府の役人に地元の女性が、血を流す必要のないところになぜそれが必要なのか?と問う。この言葉に感動してしまった。
もちろん王政が良いわけではない。どんなに良い王の治世でも身分や性別など様々な差別はあっただろう。
しかし、そもそも大きな不満なく暮らせていたのに外から人々を分断するような制度を導入するのは何故か?という素朴な疑問を抱くのはよくわかる。
とは言っても、否応なく他国から押し寄せる資本主義の波を避けることはできない。ブータンにも貧富の差が広がり、人々はいかに人より多くを所有し、それがあたかも「幸せ」の象徴のように考えだすだろう。
世界は発展し様々な知恵を産み出し、学問も医療も芸術も、あらゆるものが進んだが、人間の「幸せ」はそれとは別物なのだ❕と考えさせられる、この映画は素晴らしい寓話として描かれている。
昔読んだ文化人類学者中根千枝氏の本に、フィールドワークで未開人の中で暮らしていると、時々とても退屈になる、精神世界がシルプルすぎて、というような話に驚いた。
ブータンの人たちもこれから今まであまり必要なかった競争心や妬みや嫉み、ありとあらゆるねじれた気持ちの世界を生きるのだろう。
そしてやっぱり「幸せ」は何だったのだろうと考えるにちがいない。
精神世界が深まるのは悪いことではない。人間社会が発展していろいろなことを産み出した。映画もその一つ。不可逆的なこの社会、鎖国を解いて遅れてやってきたブータンの人々に、先進国が重ねてきた様々な失敗を学んで軽やかに飛び越えて進んでほしい。
供物
穴へ捨てるシーンはジョン・レノン御存命なら喜んだだろうな
「世界一幸せな国ブータン」
火種
2006年第4代国王の退位により、民主化されることになったブータンの田舎の村で、模擬選挙を前に混迷する村人たちと銃を巡るドタバタをみせる話。
選挙管理委員が来村することを聞いたラマ僧の言いつけで銃を探す僧侶と、貴重な骨董品の銃を探してアメリカからやって来た男とガイド、そして模擬選挙にのめり込む主人を持つ家族と選挙管理委員御一行等をみせていく。
必要以上のものを望まない人達と、欲に目が眩む人達と、そんな人達の鬼ごっこだったり尊厳だったり…。
コメディだけど結構サスペンス風味も!?
選挙ももちろん面白かったけれど、銃を巡ってはコミカルさがかなり全面に出ている感じだし、どちらもコミカルさの中にしっかりと本質があってとても面白かった。
クライマックスのあの二人の表情が絶品な一作
法衣をまとった僧侶が鉄砲を肩に担いでいるという、ほんわかした雰囲気だけどどこか不思議な組み合わせが目を引く本作のポスター。このアートワークから連想できるように、物語は山に籠って修行中の老僧が弟子に二丁の銃を持ってくるように命じるところから始まります。
舞台は「民主制」への移行を控えたブータン。敬虔な信仰心と国王への敬慕に基づいて伝統的な国家体制を維持してきたブータンが平穏に民主制に移行できるか、という国家的挑戦の真っただ中にあります。この大きな変化に誰もが戸惑い、高揚してる状況で、なぜ銃という物騒なものが必要なのか。骨董品として高価な銃の入手をもくろむ外国人も加わって、ちょっとした騒動が巻き起こります。
老僧が銃を必要とした理由が明らかになった時の、腑に落ちた感もなかなか良かったのですが、「民主化」、「普通選挙」というものがどういうものなのかを、ブータンの人々のふるまいから描いている点も興味深い作品でした。
政府職員として選挙というものを知らない住民に啓蒙活動をしていく者が実は、選挙の意味を十分に理解できておらず、単純な勝ち負けにこだわっていたり、政治といった世俗的な動向から距離を置いているように見える修行僧が実は……といったちょっとしたひっくり返しを物語に実に巧みに織り込んでいます。
この、我こそ民主化の担い手、という登場人物に対するちょっと皮肉な見方は、そのまま「民主化の先輩」である国々の人々に対する、「ほんとに選挙の意味わかってる?」という問いかけにもなっていて、穏やかなブータンの風景を眺めつつお気楽に物語を楽しめる作りのようで、実は割と大事な問題に目を開かせてくれる作品でもあります。
いろいろ見どころの多い作品ですが、クライマックスのあの二人の表情、そしてそのあとのふるまいにはなかなか笑わせてくれます。案外いい奴らじゃん。
きな臭い話かと思いきや笑えるお話でした
ブータン初の選挙ということで…
選挙とは何かを何故か憎しみを煽るように教えて回る役人
二人の有力候補を巡って次第に不穏になる家族や村人
位の高いお坊様は国の為にと銃を若いお坊様に用意させようとする
何やらきな臭いストーリーが展開する中、南北戦争時代の銃を求めにブータンに来たアメリカ人も村にやってきてさてどうなるのか?
非常に面白かったです。
民主主義は幸せを求めるための一手段であって、それで啀み合う様な最近の日本の政治はなんなのだろうと思ってしまいました。
まさか銃があんな事になるとは。
銃マニアのアメリカ人、最後はまさかのものを手に入れてしまいますw
ブータンの山村の長閑な風景、草っ原にポツンと立つ仏塔も見どころ。
民主主義、民主主義
アジア的な
「ブータン 山の教室」の監督による、今度はコメディ。
初めての民主選挙のための模擬選挙と、何故かそのために銃を求めるラマ僧の弟子と、その銃を求める銃コレクターと通訳。誰もが初めての体験に手探りで、それ故の絶妙な噛み合わなさ…いわゆる西欧的なコメディでもなく、微妙なユーモアが心地良い…
終盤にラマ僧の目的が明らかになると、なるほどという思いとともに、西欧的な価値観に基づく「民主化」「近代化」が本当に正しいのか、という思いを抱かざるを得なくなる…
模擬選挙の説明係が「対立する政党ですから、もっとこう憎み合うくらいに…!」って言ってたのは、昨今の情勢を見るだにその通りで笑った…ww
前作とともに、アジア的な価値感についての再評価のために観られるべき作品だと思う…
最大幸福国家神話をなぞる「無邪気」な映画
ワンチェク国王が王妃と一緒に来日したのは2011年。美男美女の王夫妻に日本中が沸いた。あれからもう10年以上経ったのか。
国王が即位したのは2006年。先立つ2005年に初めての選挙が実施された。憲法公布は2008年。推移は我が国の明治憲政史と非常によく似ている。権力と国民が協調して立憲君主制に段階的に移行したということである。
この映画は初めての普通選挙の前に模擬選挙を実施する話だから時代背景は2005年手前ということになる。その割には現国王の写真が役場に掲げられていたり2006年から公開されたダニエル・クレイグの007シリーズ映画がTV放映されていたりする。(しかも「カジノロワイヤル」でなく「慰めの報酬」にみえる。ならば2009年の公開)割と時代考証がいい加減なのだがそれはまあ良い。
模擬選挙では架空の候補者3名から1人を選ぶ。赤色の候補者は民主主義の拡大を訴え、青色の候補者は経済発展を訴える。対して黄色の候補者は伝統主義の固持を訴える。結論、模擬選挙でこの村の選挙民が圧倒的な率で選んだのは黄色だった。もう一つ、この映画がテーマとしているのは武器の不所持、廃棄であり、それも映画の結末として表される。
幸福度を高めることを国家目標としているブータンのありのままを捉えているようにみえる。
でも本当にそれで良いのだろうか?自分の親やそのまた親と同じく第一次産業に従事し、仏僧や王室を尊び、つつましやかな生活をする。それで心の平安が確実に得られるのだろうか。ブータンに生まれた以上、それ以外の選択はないのか?
パオ・チョニン・ダルジ監督の前作「ブータン 山の教室」はその問いかけを静かな語り口で提起した作品だった。でも、本作は時代をさかのぼって民主主義がスタートするある意味無邪気な時代を描いているとはいえブータンが幸福な国家であると、あまりにも画一的、無批判に描いてしまっている気がする。ブータンは最大幸福を目指している国ではあるが、最大幸福を実現している国ではない。選挙管理委員の若い女性役人や彼女と交流を持つ村の少女ユペルの姿に新しい世代の誕生を予感させている部分はあるものの世界中に流布されているブータンのイメージを無自覚、かつ問題意識もなく再生産しているような気がするのだが。
ミステリアスで面白かったです!
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