お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価
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足るを知る
お坊さまが鉄砲をご所望、なんともう世も末か!と思う自体になるかと思いきや、ものすごーく平和で穏やかで協調性のある人たちの見本みたいな優しさの塊のブータンの人たち。
これはいつの時代の話?と思うほどに、全く昔から変わらないままの暮らしが現代に続いていることにまず驚く。
信心深い仏教徒だから信仰が染み付いているのか、人々は欲が無く、環境と人にとても感謝しながら生きている。王様も王様としてとても慕われていて、こんな幸せな国だもの、そりゃ色んなものを変えずに続けられたはずだわね。
「足るを知る」を学んだ。
今の現状をより良いものに変えたくて、もうぶっ壊してでもなんとかしたいと訴えて革命を起こして変化を望まなくても、十分に今の暮らしで幸せを感じられるので、選挙をして国の政治のリーダーを変えて改革を!と望む人がほとんどいない。
ねぇ、なんて幸せな国なの!!
でもそこを変えていこう、変わろうとする動きと、この暮らしに満足しているので変化に戸惑う人たちの中に他所から来た欲の塊の人間二人が物語を展開していくのだけど。
ラストに近づくにつれ、なんか色々ハラハラもドキドキもしたけど、変わりゆく世界で変わらない人々の信仰、信念、国民性?をみて、みんなが大事に守り続けてきたものの偉大さを感じたよ。
なんか久々に心を洗われるような映画を観たわ。よかった。
心が疲れている方におすすめしたい。
幸せに夢見るブータンに
心洗われた。
巧みな脚本の虜
以前に劇場でトレーラーを観て興味を持った本作。IMDb、RottenTomatoesでも評価が高いようなので劇場鑑賞を決めました。公開1週目のサービスデイの本日、新宿武蔵野館10時15分からの回はまぁまぁな客入りです。
ブータンの映画は本作が初見の私。興味深さもありましたが、耳慣れない言語は作品に乗れないと眠気との闘いになることもあります。と言うことで、出来るだけ集中力を保ちながら観始めましたが要らぬ心配でした。
物語が動き出すと間もなく、パオ・チョニン・ドルジ監督の巧みな脚本の虜になります。2006年を振り返って作られたコメディは、当時のブータンにおける時代背景(急激な変化)と大衆の意識のズレについて、イデオロギーや文化、或いは価値観の違いなどを利用し、少しずつミスリードさせながら展開していくコントのようで面白い。そして、出演者それぞれに判りやすくキャラクターがついており、真顔で小ボケな感じがオフビートでクスクスが止まりません。更に、次第に状況が変わりながらも、どうしても捨てきれない「悪い予感」が常に付き纏って何気にサスペンスで目が離せない。そんなハラハラな展開がありつつも、観終わって印象に強いのは結局「ブータンの人たちの眼差しや人となり」に尽き、癒されて心が洗われます。
2011年にジグミ・シンゲ・ワンチュク国王が来日され、「世界一幸せな国」のキャッチフレーズで日本でも話題になったブータン王国ですが、その後の「幸福度の大暴落」の予兆も感じる本作。ただただ癒されているだけではいけません。少しでも理解の足しにして、今後もブータンに興味を持ちたいと思います。UNEXTのマイリストに追加したままの『ブータン 山の教室』も早く観ないといかんな!
いい話なのに、ちょっと贅肉付きすぎで気が散ってしまった
資本主義が発展したら民主主義が必要になるけど、資本主義がなかったら?
「他国では血を流して勝ち取った民主主義」というありがたいものを導入するのだ、という政府の役人に地元の女性が、血を流す必要のないところになぜそれが必要なのか?と問う。この言葉に感動してしまった。
もちろん王政が良いわけではない。どんなに良い王の治世でも身分や性別など様々な差別はあっただろう。
しかし、そもそも大きな不満なく暮らせていたのに外から人々を分断するような制度を導入するのは何故か?という素朴な疑問を抱くのはよくわかる。
とは言っても、否応なく他国から押し寄せる資本主義の波を避けることはできない。ブータンにも貧富の差が広がり、人々はいかに人より多くを所有し、それがあたかも「幸せ」の象徴のように考えだすだろう。
世界は発展し様々な知恵を産み出し、学問も医療も芸術も、あらゆるものが進んだが、人間の「幸せ」はそれとは別物なのだ❕と考えさせられる、この映画は素晴らしい寓話として描かれている。
昔読んだ文化人類学者中根千枝氏の本に、フィールドワークで未開人の中で暮らしていると、時々とても退屈になる、精神世界がシルプルすぎて、というような話に驚いた。
ブータンの人たちもこれから今まであまり必要なかった競争心や妬みや嫉み、ありとあらゆるねじれた気持ちの世界を生きるのだろう。
そしてやっぱり「幸せ」は何だったのだろうと考えるにちがいない。
精神世界が深まるのは悪いことではない。人間社会が発展していろいろなことを産み出した。映画もその一つ。不可逆的なこの社会、鎖国を解いて遅れてやってきたブータンの人々に、先進国が重ねてきた様々な失敗を学んで軽やかに飛び越えて進んでほしい。
供物
穴へ捨てるシーンはジョン・レノン御存命なら喜んだだろうな
「世界一幸せな国ブータン」
火種
2006年第4代国王の退位により、民主化されることになったブータンの田舎の村で、模擬選挙を前に混迷する村人たちと銃を巡るドタバタをみせる話。
選挙管理委員が来村することを聞いたラマ僧の言いつけで銃を探す僧侶と、貴重な骨董品の銃を探してアメリカからやって来た男とガイド、そして模擬選挙にのめり込む主人を持つ家族と選挙管理委員御一行等をみせていく。
必要以上のものを望まない人達と、欲に目が眩む人達と、そんな人達の鬼ごっこだったり尊厳だったり…。
コメディだけど結構サスペンス風味も!?
選挙ももちろん面白かったけれど、銃を巡ってはコミカルさがかなり全面に出ている感じだし、どちらもコミカルさの中にしっかりと本質があってとても面白かった。
クライマックスのあの二人の表情が絶品な一作
法衣をまとった僧侶が鉄砲を肩に担いでいるという、ほんわかした雰囲気だけどどこか不思議な組み合わせが目を引く本作のポスター。このアートワークから連想できるように、物語は山に籠って修行中の老僧が弟子に二丁の銃を持ってくるように命じるところから始まります。
舞台は「民主制」への移行を控えたブータン。敬虔な信仰心と国王への敬慕に基づいて伝統的な国家体制を維持してきたブータンが平穏に民主制に移行できるか、という国家的挑戦の真っただ中にあります。この大きな変化に誰もが戸惑い、高揚してる状況で、なぜ銃という物騒なものが必要なのか。骨董品として高価な銃の入手をもくろむ外国人も加わって、ちょっとした騒動が巻き起こります。
老僧が銃を必要とした理由が明らかになった時の、腑に落ちた感もなかなか良かったのですが、「民主化」、「普通選挙」というものがどういうものなのかを、ブータンの人々のふるまいから描いている点も興味深い作品でした。
政府職員として選挙というものを知らない住民に啓蒙活動をしていく者が実は、選挙の意味を十分に理解できておらず、単純な勝ち負けにこだわっていたり、政治といった世俗的な動向から距離を置いているように見える修行僧が実は……といったちょっとしたひっくり返しを物語に実に巧みに織り込んでいます。
この、我こそ民主化の担い手、という登場人物に対するちょっと皮肉な見方は、そのまま「民主化の先輩」である国々の人々に対する、「ほんとに選挙の意味わかってる?」という問いかけにもなっていて、穏やかなブータンの風景を眺めつつお気楽に物語を楽しめる作りのようで、実は割と大事な問題に目を開かせてくれる作品でもあります。
いろいろ見どころの多い作品ですが、クライマックスのあの二人の表情、そしてそのあとのふるまいにはなかなか笑わせてくれます。案外いい奴らじゃん。
きな臭い話かと思いきや笑えるお話でした
ブータン初の選挙ということで…
選挙とは何かを何故か憎しみを煽るように教えて回る役人
二人の有力候補を巡って次第に不穏になる家族や村人
位の高いお坊様は国の為にと銃を若いお坊様に用意させようとする
何やらきな臭いストーリーが展開する中、南北戦争時代の銃を求めにブータンに来たアメリカ人も村にやってきてさてどうなるのか?
非常に面白かったです。
民主主義は幸せを求めるための一手段であって、それで啀み合う様な最近の日本の政治はなんなのだろうと思ってしまいました。
まさか銃があんな事になるとは。
銃マニアのアメリカ人、最後はまさかのものを手に入れてしまいますw
ブータンの山村の長閑な風景、草っ原にポツンと立つ仏塔も見どころ。
民主主義、民主主義
アジア的な
「ブータン 山の教室」の監督による、今度はコメディ。
初めての民主選挙のための模擬選挙と、何故かそのために銃を求めるラマ僧の弟子と、その銃を求める銃コレクターと通訳。誰もが初めての体験に手探りで、それ故の絶妙な噛み合わなさ…いわゆる西欧的なコメディでもなく、微妙なユーモアが心地良い…
終盤にラマ僧の目的が明らかになると、なるほどという思いとともに、西欧的な価値観に基づく「民主化」「近代化」が本当に正しいのか、という思いを抱かざるを得なくなる…
模擬選挙の説明係が「対立する政党ですから、もっとこう憎み合うくらいに…!」って言ってたのは、昨今の情勢を見るだにその通りで笑った…ww
前作とともに、アジア的な価値感についての再評価のために観られるべき作品だと思う…
最大幸福国家神話をなぞる「無邪気」な映画
ワンチェク国王が王妃と一緒に来日したのは2011年。美男美女の王夫妻に日本中が沸いた。あれからもう10年以上経ったのか。
国王が即位したのは2006年。先立つ2005年に初めての選挙が実施された。憲法公布は2008年。推移は我が国の明治憲政史と非常によく似ている。権力と国民が協調して立憲君主制に段階的に移行したということである。
この映画は初めての普通選挙の前に模擬選挙を実施する話だから時代背景は2005年手前ということになる。その割には現国王の写真が役場に掲げられていたり2006年から公開されたダニエル・クレイグの007シリーズ映画がTV放映されていたりする。(しかも「カジノロワイヤル」でなく「慰めの報酬」にみえる。ならば2009年の公開)割と時代考証がいい加減なのだがそれはまあ良い。
模擬選挙では架空の候補者3名から1人を選ぶ。赤色の候補者は民主主義の拡大を訴え、青色の候補者は経済発展を訴える。対して黄色の候補者は伝統主義の固持を訴える。結論、模擬選挙でこの村の選挙民が圧倒的な率で選んだのは黄色だった。もう一つ、この映画がテーマとしているのは武器の不所持、廃棄であり、それも映画の結末として表される。
幸福度を高めることを国家目標としているブータンのありのままを捉えているようにみえる。
でも本当にそれで良いのだろうか?自分の親やそのまた親と同じく第一次産業に従事し、仏僧や王室を尊び、つつましやかな生活をする。それで心の平安が確実に得られるのだろうか。ブータンに生まれた以上、それ以外の選択はないのか?
パオ・チョニン・ダルジ監督の前作「ブータン 山の教室」はその問いかけを静かな語り口で提起した作品だった。でも、本作は時代をさかのぼって民主主義がスタートするある意味無邪気な時代を描いているとはいえブータンが幸福な国家であると、あまりにも画一的、無批判に描いてしまっている気がする。ブータンは最大幸福を目指している国ではあるが、最大幸福を実現している国ではない。選挙管理委員の若い女性役人や彼女と交流を持つ村の少女ユペルの姿に新しい世代の誕生を予感させている部分はあるものの世界中に流布されているブータンのイメージを無自覚、かつ問題意識もなく再生産しているような気がするのだが。
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