かたつむりのメモワールのレビュー・感想・評価
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何故だかジーンと来た
クレイアニメの愛くるしく表情豊かなキャラクター達に興味を持ったので鑑賞したが、内容は思いのほかドーンと重かった。
裕福ではないけど、姉グレースにとって父と弟ギルバートとの生活はかけがえのないものだったのだろう。父がこの世を去った後の姉弟の生活は一転。正に、ルナパークのジェットコースター並みに急降下。彼らの第二の人生は波瀾万丈そのものであり、「かたつむり」みたいに、ゆっくりのんびりとは行かない。観ている方としては、焦ったい気分だ。
ラストに向けて、ギルバートは頑張った。大好きなグレースとの再会に向けて、死物狂いで踏ん張った。Good Job!!!
グレースにとってピンキーの存在は大きかったな。親のようであり、友達のようであり、心の底から信頼できる大人。彼女がいたからグレースは「自分」を失わずに済んだのだろう。
いやはや、いい作品。
カタツムリが好きな少女
独特で温かみのあるストップモーションによる人生讃歌
【イントロダクション】
離れ離れになった双子の姉弟が、互いの人生における様々な苦難を経験し、成長していく姿を描いたオーストラリアのストップモーション・アニメーション。製作期間8年、CGなしの手作業による驚異の13万5,000カット!
監督・脚本・製作は、アダム・エリオット。声の出演にサラ・スヌーク、ジャッキー・ウィーバーら。
【ストーリー】
1970年代、オーストラリアビクトリア州メルボルン。幼い少女グレース(声の出演:シャーロット・ベルシー)は、双子の弟ギルバート(声の出演:メイソン・リトス )、フランス人の父パーシーと暮らしていた。双子の出産によるショックで母を亡くしており、軟体生物学者であった母との繋がりから、グレースはカタツムリを集める趣味を持っていた。グレースは生まれつき上唇が裂けており、手術痕から同級生に揶揄われ、ギルバートがその度に彼女を守っていた。姉弟は強い絆で結ばれており、父と共に裕福ではないながらも、幸せな日々を過ごしていた。
しかしある日、かねてから睡眠時無呼吸症候群を患っていた父パーシーが他界してしまい、双子は児童福祉局によって別々の里親の元に引き取られる事になる。グレースはキャンベルに、ギルバートはパースに送られる。
グレースを引き取ったイアンとナレル夫妻はいい人達だったが、スインガー(夫婦交換や乱交を行う人の事)の為家を留守にしがちで、グレースは孤独を埋めるかの如く、カタツムリのグッズを執拗に買い漁るようになる。
ギルバートを引き取ったアップルビー一家は宗教原理主義者の農家で、反抗的な態度のギルバートは継母のルース(声の出演:マグダ・ズバンスキー)から目の敵にされていた。
2人は手紙のやり取りを通じて近況を報告し合い、ギルバートは日々の労働で得た僅かな賃金を貯金し、大人になったらグレースに会いに行くと約束した。それが、グレースにとっての希望でもあった。
10代になったグレースは、図書館のアルバイトを通じて、ピンキー(声の出演:ジャッキー・ウィーバー)という風変わりながら親切な老人と親しくなる。ピンキーは2度の結婚と死別、様々な仕事の経験を持つ人物で、イアンとナレルに変わってグレースの面倒を見るようになっていく。
大人になったグレース(声の出演:サラ・スヌーク)は、電子レンジの修理工である隣人のケンと恋に落ち、やがてプロポーズされる。細やかな結婚式を行おうとしていた当日、グレースのもとにルースから荷物が届く。同封されていた手紙には、ギルバート(声の出演:コディ・スミット=マクフィー)がルースの末っ子ベンと同性愛に堕落し、教会の火事によって焼死したという内容が記されており、ギルバートの遺骨が届いたのだった…。
【感想】
子供向けアニメのようなビジュアルを被りながらも、下ネタの多さや過酷な現実といったシビアな内容から、大人向けのアニメとなっている。グレースとギルバートの経験する苦難は、我々も人生において経験し得る現実味のある苦難であり、だからこそ、これは特別な人々の物語ではない。我々の人生においても、簡単に大きな展開は起きないが、日々の中に様々なドラマが眠っているのだ。そして、これはそんな我々観客に向けられた人生讃歌の物語なのだ。
物語の語り部となる主人公のグレースは、埋められない愛情を埋めようとカタツムリのグッズの蒐集にのめり込んで行く。喪失感を物質で埋めようとする姿は現代的で、カタツムリとはまさしく“自らの殻に閉じこもる”姿のメタファーである。しかし、彼女が大事にするカタツムリのシルヴィアの殻の渦が逆巻きになっているように、グレースはピンキーの後押しもあって、クライマックスでは人生における苦難に逆らい、打ち勝っていく。長いものに“巻かれる”ばかりが人生ではないのだ。
ところで、グレースの旦那となったケンには、「肥満女性フェチ」というフェチズムがあり、それ故に彼はグレースの食事を知らず知らずのうちにコントロールし、太らせていっていたが、彼は果たして悪人と言えるだろうか。ギルバートを失ったグレースに寄り添い、喪失感を埋めようと万引きをして捕まった彼女を、それでも見捨てなかったケンの態度は、見様によっては彼なりの十分な愛情表現だと思うのだ。勿論、グレースにはその感情を拒否する権利はあるし、だからこそ、彼女はケンと離婚したのだが。
手作業によるストップモーションは、実に8年という期間を掛けて製作されただけあって、小物等の美術からキャラクターの動きまで、非常に滑らかで温かみがある。気が付けば、この少し奇妙な風貌の世界の虜になっていた。
本作のもう一つの魅力が、印象的で素晴らしい台詞の数々だ。ブラックユーモアに富んだものから、感動的なものまで、一つ一つの台詞が鑑賞後に愛おしく感じられる。
グレースとギルバートの関係性を示した、「2つの魂、心は1つ」。
グレースが悲しみの渦中にあっても涙を流せない姿を、「泣けないのは、涙が立ちすくむから」と表現するのは詩的で美しい。
そんな中で、一際輝きを放っていたのが、クライマックスでのピンキーの手紙だ。
【人生で様々な経験をしてきた先輩からのメッセージ】
本作最大の魅力は、なんと言ってもピンキーというキャラクターの魅力と、彼女のパンクな生き方だろう。孤児として生まれながらも自由に人生を謳歌し、酸いも甘いも経験してきた彼女だからこそ、グレースや孤独な老人に寄り添う事が出来るし、クライマックスでの手紙の文言の一つ一つが、単なる綺麗事の羅列に留まらないのだ。
「人生は美しい織物よ。体験しなきゃ」
「痛みもあるけど、それが人生よ」
「人生は後ろ向きにしか見えないけど、前を向いて進むの」
「カタツムリは跡を残しながら前に進む。あなたも自分の生きた跡を世界中に残すの」
ピンキーの言葉を胸に、新しい世界への扉を開いたグレースは、夢であったストップモーション・アニメの監督になり、その果てでギルバートと再会する。再び家族として生活出来るようになった彼らの穏やかな日常が続く事を願うばかりである。
【総評】
独特な世界観ながら、現実味を帯びたストーリー展開によって描かれる人生讃歌。カタツムリが自らの辿った歩みを地面に残していくように、我々も何かを残したくなるような気持ちにさせてくれる。人生を前に進める為のほんのささやかな後押しをしてくれる1作だった。
こんなにもスレきった内容なのにじわじわ沁みてきました
クレイの力感たるや物凄いもので、それだけでも見る価値はあるとは思ったものの、取っつきにくさは半端なく、この酷い物語に果たしてどこまでついていけるか不安だったのですが、酷い内容がずっと続くにもかかわらず、じわじわ喜怒哀楽全ての感情がくすぐられて、最後には、めっちゃいいと思ってしまった希有で不思議な作品でした。映像の質はもちろんのこと、音楽なんかも効果的だったのかなぁ。
この現実社会を皮肉ったブラックユーモアなんですけど、皮肉るだけに終わらず、どんな環境であろうともしっかりと生き抜いていこうという希望みたいなものも描いていたような・・・決して良い子のアニメなんて言えないんですけど、なんか人生を噛みしめるような作品でした。
予想以上にシビアな人生物語。
:)
双子の姉弟グレース&ギルバートを姉グレースのモノローグでみせていく話。
様々な病気を抱えて未熟児で生まれたカタツムリ大好きグレースと、いじめられる姉を守る火が大好きギルバート、そして2人の出産に際し母親が亡くなったことや、元大道芸人でストップモーションアニメーターの父親のことをみせて始まって行く。
確かに悲劇的な人生だし、心根は優しいというのは謳っているけれど、グレースの性格があまりにネガティブだし陰鬱だし、悪いことは全部他責みたいな思考がみえて、どうも響いてこない。
ピンキーを変わり者と言うけれど、万年カタツムリコスのあんたも相当だよ!
そして確かに厳しい境遇だけれど、こんな作品にまでLGBTQですか…。
つまらなくはなかったけれど、あまり響くものはなかったかな。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 粘土で作られた世界が見ていて何とも楽しい拾い物。何故「かたつむり」? イメージやメタファーを調べてみたらフムフムなるほど…
予想と全然違ってて、 しかも予想より遥かに良かった 色んな要素が詰...
予想と全然違ってて、
しかも予想より遥かに良かった
色んな要素が詰まり過ぎてて一言では言えないけど、
まず、これを年齢制限つけないで通す映倫はすごい
子供連れの親が2〜3組、途中で出て行った
設定もストーリーもぶっ飛んでで、
なさそうな気もするしでもありそうな気もする
見てて最初は気落ち気味だったけど、
最後の10分間くらい?、
手紙で泣かせた後の流れに救われる
迷う人がいたら、見るよう勧めたい
思ったよりもビター。でもとびっきり芳醇。
ストップモーションアニメが好きです。
チラシの可愛らしさに惹かれて公開を楽しみに待っていました。
さて、鑑賞した結果は…
やっぱり可愛いです。
でも、キャラクターの見た目のスイートさに対してストーリーは思ったよりも激ビター。人生は夢物語ではないことをこれでもかと突きつけます。
あからさまではないけれどちょっと大人向けのシーンも結構挟まれています。
とはいいつつ主人公グレースの健気さ、そして影の主役ピンキーの大活躍!スカッとケラケラ笑える映画ではないけれど、ストーリーのブラックさに心が重くなるほどではない。
鑑賞後はなんだかほっこり元気づけられたような気分で劇場を後にしました。
すごく強烈なシーンはないけれど、実は大人が観たほうが心に滲みるアニメーションということで、昨年公開されたロボットドリームズを連想しました。
お勧めです。
ピンキー!
心の隙間を大好きなもので埋めようとした
号泣。
皿で心の隙間を埋め続けた皿オタの私としては、身につまされるセリフが多すぎて涙が止まらなかった。
一つ、また一つと手から大事なものが落ちていくたびに空いた場所を好きな物で埋めたくなったんよね。わかるわ。
始まりから造形がとても好みで目が楽しかったのだけど、想像と全然違う物語でなんか二度美味しかった。
グレースは孤独だったかもしれないけど、必ず手を差し伸べてくれる誰かはいたし、大好きな家族との強い絆があったから優しさは忘れなかったんだろな。
ギルバートにとっても、姉の存在だけが唯一の心の拠り所だったのだろう。
可愛いキャラクターと色んな社会の問題をうまく混ぜ合わせて、一筋縄では行かない見応えのある作品になっていた。
でも本当世界観は可愛かったなー。
あのカタツムリ帽子、犬に作って被せたい笑。
クレイストップモーションアニメ。細かく手作りされた造作がすごい!
試写会にて
「いやぁ、これ凄い!」と、映画始まって直ぐから画面の隅々まで見入ってしまいました。
何故ならこれはクレイストップモーションアニメだから。
👉️クレイとは粘土のこと。
👉️ストップモーションアニメとは少しずつ人形とか登場するものを動かしてコマ撮りして動いているように見える様にしたアニメ。(パラパラ漫画と同じ手法)
本当に1つ1つ粘土で丁寧に作りあげられた様々なもの。部屋中に所狭しと色んな物が置いてあってそれを1つ1つ粘土で作ったかと思うと、そしてそれに1つ1つ色をつけたかと思うとその手間は気絶しそうなほど大変だったろうなと、ただただ恐れ入ってしまいました。凄い!これだけでも観る価値あります。
ただし、下ネタとか結構ブラックな内容が含まれているので大人向けです。ポスターの可愛い感じに惹かれて子供を連れて行かないで下さい。ファミリー向けではありません。
👉️製作期間8年。セットの数は200、小道具の数は7000、カットの数は13万5000にのぼる。
👉️アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネート。
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👉️膨大な手作業によって本作を生み出したエリオット監督は、自身の作品を「クレイ(粘土)」と「バイオグラフィー(伝記)」を組み合わせた造語「クレヨグラフィー」と呼び、「私はキャラクターの内面に癖や変わった性質を加えるのが好きです」「私の物語は日常生活を反映したもので、友人や風変わりな親戚、街で出会う個性豊かな人たちなど、どこかで見覚えのあるような人物を取り上げた伝記なんです」と語っている。
すごい設定
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