「涙一粒も相当な労力だろうに」かたつむりのメモワール 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
涙一粒も相当な労力だろうに
いい映画ではあるが基本、ちょっと悲しいよな。
主人公のグレースがずっと泣いてるのよ。小さな頃から大人になるまでのグレースの人生を描いてるんだけど、とにかく泣く。
あれ多分わざわざ涙用の透明な素材を目の部分に入れてコマ撮りで何度もちょっとずつ動かしながら涙を流してるんだろ。
かなり狂気よ。あの何度も流れる涙の表現だけで相当な労力のはずでマジで泣きたくなったはず。でも監督はあれをやりたかったんだろう。
グレースは双子の弟ギルバートがいました。母は双子を産んで死に小さい双子は大道芸人の父に育てられます。しかし父は車椅子になりやがて死に。双子はそれぞれ別の里親の元で育てられます。
グレースはヌードになりたがりな夫婦に引き取られ。友達も出来ずに引きこもりがち。かたつむりのように殻にこもって。図書館でボランティアをしていたことでお婆さんの友達ができます。やがて恋人ケンもでき、彼と結婚することへ。ようやくいい方向に行きそう。
一方の弟は磁石を体につけ聖書を読ませる胡散臭い家庭で育てられます。末弟とゲイな仲になった弟は義理母から悪魔に取り憑かれたと言われ変な装置につながれます。弟は逃げて教会に火をつけて教会の中で死亡。
弟の訃報を聞いた悲しみのグレースは寝込んで太ります。やがてグレースはケンによるデブ化計画の材料にされていたことを知りケンを追い出します。
やがてピンキー婆も死んでまたしても悲しみにくれるグレース。ピンキーが死ぬ間際にポテト!と叫んだことを思い出し菜園のポテトの箇所の土を探ると秘密の缶が隠されていました。中にはグレースへの手紙とお金が入っており。殻に閉じこまらず前に進んでというピンキーからのメッセージにグレースは心を打たれます。
グレースは夢だった映画学校に入学しコマ撮り映画を作ります。なんとそこに弟のギルバートが!彼は教会の火事から逃げ出していたのです。双子は抱き合い、父の遺灰を遺言どおりローラーコースターからまいて映画は終わります。
と、ストーリーを振り返りたくなるほど人生を描いてはいた。
冒頭、様々な小道具の山を映していく。全て手作りのこだわり。便器の蓋など様々なモノにスタッフ名が記載されており洒落たオープニングロールになっている。
この冒頭のワクワク感に比べると本編は割と辛気臭い。グレース泣いてばっかだな、という印象。
そして意図的であろうがグレースの世界観が狭い。かたつむりだらけの自分の部屋以外ほぼ学校か図書館。おそらく監督自身の人生が反映されているのだろう。あと、色々な場所を作るのが大変だったから舞台を絞っている可能性もある。
もうちょっとファンタジーで楽しいものにもできたんじゃないかとも感じた。でも8年かけてこれを完成させた、という監督の情熱はうらやましくもある。