「かたつむりのような生き方」かたつむりのメモワール おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
かたつむりのような生き方
予告は目にしませんでしたが、行きつけの映画館で上映していることを知り、クレイアニメーション作品はそうないので、この機会に鑑賞してきました。
ストーリーは、出生の際に母を亡くし、生まれつきの口唇裂によって学校でいじめられていたグレースは、双子の弟ギルバートに守られながら、父と三人で幸せに暮らしていたが、父の突然の死により、二人は別々の里親に引き取られることになり、孤独を紛らわすためにかたつむり集めを始めたグレースだったが、ピンキーという陽気なお婆さんに出会い、少しずつ心を開いていくというもの。
あわまりかわいくないキャラクターデザインと独特でシュールな世界観ですが、話はなかなか温かくてよかったです。特に、題名にも用いられている「かたつむり」が、グレースの内面を巧みに描き出しているようで、実に印象的です。
当初グレースは、外敵の攻撃から身を守るために殻にこもるかたつむりに、いじめから逃れたい自分の姿を重ね、親近感を覚えたことでしょう。そして、いつしかそれは自分を守るシェルターから、自分を閉じ込める檻のような存在に変化してしまったように思います。しかし最後には、自身の足跡を残しながらゆっくり前に進むかたつむりに、力強く人生を歩み始めるグレースの姿を重ねていきます。かたつむりに託して描く、グレースの変容が鮮やかです。
グレースのまわりには嫌な人も多いですが、ギルバートやピンキーのように心の支えになった人も多くいます。また、過去の自分の行為が縁を結び、後に関わってくる人もいます。そんな人生を振り返り、全てを糧としてこれからの人生に一歩踏み出すグレースを応援したくなります。
つらいことがあっても、今まさに行き詰まっていても、それもいつしか自分の人生の軌跡となり、前に進む糧となるのだと、本作が優しく背中を押してくれるような気がします。興味があれば、ぜひ観ていただきたいです。
キャストは、サラ・スヌーク、ジャッキー・ウィーバー、コディ・スミット=マクフィー、ドミニク・ピノンら。