かたつむりのメモワールのレビュー・感想・評価
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懸命に前に歩み続けようとする姿を、愛情あふれるタッチで描く
人生でまたもエリオット監督の長編作に出会えたことを嬉しく思う。これが15年ぶりの新作だから、次があるとしたら私はもはや還暦過ぎ。でも待つ価値はあると確信する。彼がコマ撮りで描くキャラは皆どこか内気で、不幸に見舞われてばかり。こうやって言語化するとだいぶ切実に思えるが、実際のところ粘土で丁寧かつユーモアを交えて織り成された一コマ一コマは非常にチャーミングで、瞬きするのを忘れるほど慈愛で一杯だ。この確かな眼差しがあるからこそ、ブラックな側面があってもネガティブに傾き過ぎることはない。グレースの”ためこみ”も決して単体でいびつに照らすのではなく、心の奥底に記憶と感情があふれかえった状態の投影であることを文脈からジワリと気づかせる。誰よりもそれを理解し光と躍動を注ぐピンキーという存在がまた秀逸。急がず、ゆっくり。後退せず前に進み続けようとする人々の懸命な生き様を、本作は豊かなタッチで祝福している。
ジワジワきました
人生は振り返るものではない
レトロな小物が可愛い
可愛さは求めていないが、商品パッケージとかミルクシェークメーカー?など、レトロな小物が可愛かった。
や、でも内容は全く可愛い要素はなくて。
結構リアリティが…あり過ぎ(笑)
子供向けと思ってファミリーで行くと大変かも。
紆余曲折あった2人の人生。
ようやく最後はめでたしめでたし、であった。
かたつむりのお話……ではないw
好き〜🩷
いつも思うけど映画って観る側のコンディションやらタイミングやらがその作品の評価にすごく影響する。
この作品は自分にとってベストなタイミングで観られた作品🌀
同監督作品を直近サクッと網羅に努めたけれど(まだ終わってない💦)、ヒトの中に存在する闇と光をとっても上手に表現する監督さんだな、と。そして初期作品(学生時代に制作された作品〜2003年のハーヴィー・クランペット)は闇多め、その後2008年のメアリー&マックスは人生の光にもスポットを当ててくれるようになった気が。(この考え方が正しいのかどぉかは2015年制作のアーニー・ビスケットで確認せねばっ)
光の部分だけでなくポジティブメッセージもメアリー&マックスからレベルアップしてた!
んが、しかし👇️
【涙活報告】泣けませんでした😅(案の定)
とりあえず会いたい人、大好きな人に会えるうちには喧嘩なんてしないで連絡しよー💜💜💜←これが最大の学び🩷
キツい。
かたつむりのような生き方
予告は目にしませんでしたが、行きつけの映画館で上映していることを知り、クレイアニメーション作品はそうないので、この機会に鑑賞してきました。
ストーリーは、出生の際に母を亡くし、生まれつきの口唇裂によって学校でいじめられていたグレースは、双子の弟ギルバートに守られながら、父と三人で幸せに暮らしていたが、父の突然の死により、二人は別々の里親に引き取られることになり、孤独を紛らわすためにかたつむり集めを始めたグレースだったが、ピンキーという陽気なお婆さんに出会い、少しずつ心を開いていくというもの。
あわまりかわいくないキャラクターデザインと独特でシュールな世界観ですが、話はなかなか温かくてよかったです。特に、題名にも用いられている「かたつむり」が、グレースの内面を巧みに描き出しているようで、実に印象的です。
当初グレースは、外敵の攻撃から身を守るために殻にこもるかたつむりに、いじめから逃れたい自分の姿を重ね、親近感を覚えたことでしょう。そして、いつしかそれは自分を守るシェルターから、自分を閉じ込める檻のような存在に変化してしまったように思います。しかし最後には、自身の足跡を残しながらゆっくり前に進むかたつむりに、力強く人生を歩み始めるグレースの姿を重ねていきます。かたつむりに託して描く、グレースの変容が鮮やかです。
グレースのまわりには嫌な人も多いですが、ギルバートやピンキーのように心の支えになった人も多くいます。また、過去の自分の行為が縁を結び、後に関わってくる人もいます。そんな人生を振り返り、全てを糧としてこれからの人生に一歩踏み出すグレースを応援したくなります。
つらいことがあっても、今まさに行き詰まっていても、それもいつしか自分の人生の軌跡となり、前に進む糧となるのだと、本作が優しく背中を押してくれるような気がします。興味があれば、ぜひ観ていただきたいです。
キャストは、サラ・スヌーク、ジャッキー・ウィーバー、コディ・スミット=マクフィー、ドミニク・ピノンら。
涙一粒も相当な労力だろうに
いい映画ではあるが基本、ちょっと悲しいよな。
主人公のグレースがずっと泣いてるのよ。小さな頃から大人になるまでのグレースの人生を描いてるんだけど、とにかく泣く。
あれ多分わざわざ涙用の透明な素材を目の部分に入れてコマ撮りで何度もちょっとずつ動かしながら涙を流してるんだろ。
かなり狂気よ。あの何度も流れる涙の表現だけで相当な労力のはずでマジで泣きたくなったはず。でも監督はあれをやりたかったんだろう。
グレースは双子の弟ギルバートがいました。母は双子を産んで死に小さい双子は大道芸人の父に育てられます。しかし父は車椅子になりやがて死に。双子はそれぞれ別の里親の元で育てられます。
グレースはヌードになりたがりな夫婦に引き取られ。友達も出来ずに引きこもりがち。かたつむりのように殻にこもって。図書館でボランティアをしていたことでお婆さんの友達ができます。やがて恋人ケンもでき、彼と結婚することへ。ようやくいい方向に行きそう。
一方の弟は磁石を体につけ聖書を読ませる胡散臭い家庭で育てられます。末弟とゲイな仲になった弟は義理母から悪魔に取り憑かれたと言われ変な装置につながれます。弟は逃げて教会に火をつけて教会の中で死亡。
弟の訃報を聞いた悲しみのグレースは寝込んで太ります。やがてグレースはケンによるデブ化計画の材料にされていたことを知りケンを追い出します。
やがてピンキー婆も死んでまたしても悲しみにくれるグレース。ピンキーが死ぬ間際にポテト!と叫んだことを思い出し菜園のポテトの箇所の土を探ると秘密の缶が隠されていました。中にはグレースへの手紙とお金が入っており。殻に閉じこまらず前に進んでというピンキーからのメッセージにグレースは心を打たれます。
グレースは夢だった映画学校に入学しコマ撮り映画を作ります。なんとそこに弟のギルバートが!彼は教会の火事から逃げ出していたのです。双子は抱き合い、父の遺灰を遺言どおりローラーコースターからまいて映画は終わります。
と、ストーリーを振り返りたくなるほど人生を描いてはいた。
冒頭、様々な小道具の山を映していく。全て手作りのこだわり。便器の蓋など様々なモノにスタッフ名が記載されており洒落たオープニングロールになっている。
この冒頭のワクワク感に比べると本編は割と辛気臭い。グレース泣いてばっかだな、という印象。
そして意図的であろうがグレースの世界観が狭い。かたつむりだらけの自分の部屋以外ほぼ学校か図書館。おそらく監督自身の人生が反映されているのだろう。あと、色々な場所を作るのが大変だったから舞台を絞っている可能性もある。
もうちょっとファンタジーで楽しいものにもできたんじゃないかとも感じた。でも8年かけてこれを完成させた、という監督の情熱はうらやましくもある。
大岡裁き
何故だかジーンと来た
クレイアニメの愛くるしく表情豊かなキャラクター達に興味を持ったので鑑賞したが、内容は思いのほかドーンと重かった。
裕福ではないけど、姉グレースにとって父と弟ギルバートとの生活はかけがえのないものだったのだろう。父がこの世を去った後の姉弟の生活は一転。正に、ルナパークのジェットコースター並みに急降下。彼らの第二の人生は波瀾万丈そのものであり、「かたつむり」みたいに、ゆっくりのんびりとは行かない。観ている方としては、焦ったい気分だ。
ラストに向けて、ギルバートは頑張った。大好きなグレースとの再会に向けて、死物狂いで踏ん張った。Good Job!!!
グレースにとってピンキーの存在は大きかったな。親のようであり、友達のようであり、心の底から信頼できる大人。彼女がいたからグレースは「自分」を失わずに済んだのだろう。
いやはや、いい作品。
理不尽の連続に心疲れた
1970年代オーストラリアで、世の中の理不尽に翻弄され、心を閉ざす主人公グレースが、心を取り戻すまでの物語。
描かれるのはブラックジョークで塗りつぶされ、差別と暴力と性的非道に満ちた世界。
まずはグレースが自らの命を棄てようと葛藤する中で、過去を思い出すモノローグの形で生い立ちが語られる。
子ども時代のグレースは唇の上が少し裂けている口唇口蓋裂で、その手術のせいで笑い顔が不気味になり、いじめの対象になる。
双子の弟・ギルバートが身を挺してグレースをかばい、優しい父に慰められ、それなりの幸せの日々だったが……一転。
父が睡眠時無呼吸症候群から心不全で突然死したあと、双子の弟とは別々の里親に引き取られることになってしまう。
グレースの里親となる夫婦はスワッピング趣味でヌーディスト村で乱交するため常に家を離れて子供を放置(ネグレクト)した結果、グレースは引きこもりと強迫的ためこみ症と過食に走る。
不幸は次々にグレースを襲う。
弟のギルバートはキリスト教原理主義者夫妻に引き取られ、強制児童労働と虐待を受ける。
同性愛者だったギルバートは電気ショックなど「転向療法」という拷問を受け、教会の火事によって焼死を装って殺されてしまい、グレースの元に遺骨が送られてくる(実際のギルバートは死を偽装して逃げ出したのだけれども)。
傷ついたグレースは隣人のケンと恋に落ち、やがて結婚するが、実はケンは肥満女性フェチで、グレースを過食に誘導する悪意の持ち主であることが判明し、離婚する……
グレースにとって心のよりどころは、図書館のアルバイトを通じて知り合った、楽しい老人ピンキーだけ。
彼女の優しさに触れ、少しずつ心が癒されていくが、やがて老いたピンキーに死が迫る…
というのを、ポスタービジュアルにある人形を使ったストップモーションアニメで延々と見せられたわけで。
最後はある種の解放と安寧を得られて、感動するものの、そこまでに与えられるストレスの大きいことといったら。
心が疲れた。
かたつむりは、母のコレクションを引き継いだ以上に、グレースの閉じた心を表す暗喩であり、また雌雄同体であることでグレースとギルバートはクィアであることを示し、またゆっくり歩みを進めながら歩いた跡が残る生き方をしていけばいいということを喩えたなど、複数の意味を持つ存在として描かれているのかと想像しました。
カタツムリが好きな少女
独特で温かみのあるストップモーションによる人生讃歌
【イントロダクション】
離れ離れになった双子の姉弟が、互いの人生における様々な苦難を経験し、成長していく姿を描いたオーストラリアのストップモーション・アニメーション。製作期間8年、CGなしの手作業による驚異の13万5,000カット!
監督・脚本・製作は、アダム・エリオット。声の出演にサラ・スヌーク、ジャッキー・ウィーバーら。
【ストーリー】
1970年代、オーストラリアビクトリア州メルボルン。幼い少女グレース(声の出演:シャーロット・ベルシー)は、双子の弟ギルバート(声の出演:メイソン・リトス )、フランス人の父パーシーと暮らしていた。双子の出産によるショックで母を亡くしており、軟体生物学者であった母との繋がりから、グレースはカタツムリを集める趣味を持っていた。グレースは生まれつき上唇が裂けており、手術痕から同級生に揶揄われ、ギルバートがその度に彼女を守っていた。姉弟は強い絆で結ばれており、父と共に裕福ではないながらも、幸せな日々を過ごしていた。
しかしある日、かねてから睡眠時無呼吸症候群を患っていた父パーシーが他界してしまい、双子は児童福祉局によって別々の里親の元に引き取られる事になる。グレースはキャンベルに、ギルバートはパースに送られる。
グレースを引き取ったイアンとナレル夫妻はいい人達だったが、スインガー(夫婦交換や乱交を行う人の事)の為家を留守にしがちで、グレースは孤独を埋めるかの如く、カタツムリのグッズを執拗に買い漁るようになる。
ギルバートを引き取ったアップルビー一家は宗教原理主義者の農家で、反抗的な態度のギルバートは継母のルース(声の出演:マグダ・ズバンスキー)から目の敵にされていた。
2人は手紙のやり取りを通じて近況を報告し合い、ギルバートは日々の労働で得た僅かな賃金を貯金し、大人になったらグレースに会いに行くと約束した。それが、グレースにとっての希望でもあった。
10代になったグレースは、図書館のアルバイトを通じて、ピンキー(声の出演:ジャッキー・ウィーバー)という風変わりながら親切な老人と親しくなる。ピンキーは2度の結婚と死別、様々な仕事の経験を持つ人物で、イアンとナレルに変わってグレースの面倒を見るようになっていく。
大人になったグレース(声の出演:サラ・スヌーク)は、電子レンジの修理工である隣人のケンと恋に落ち、やがてプロポーズされる。細やかな結婚式を行おうとしていた当日、グレースのもとにルースから荷物が届く。同封されていた手紙には、ギルバート(声の出演:コディ・スミット=マクフィー)がルースの末っ子ベンと同性愛に堕落し、教会の火事によって焼死したという内容が記されており、ギルバートの遺骨が届いたのだった…。
【感想】
子供向けアニメのようなビジュアルを被りながらも、下ネタの多さや過酷な現実といったシビアな内容から、大人向けのアニメとなっている。グレースとギルバートの経験する苦難は、我々も人生において経験し得る現実味のある苦難であり、だからこそ、これは特別な人々の物語ではない。我々の人生においても、簡単に大きな展開は起きないが、日々の中に様々なドラマが眠っているのだ。そして、これはそんな我々観客に向けられた人生讃歌の物語なのだ。
物語の語り部となる主人公のグレースは、埋められない愛情を埋めようとカタツムリのグッズの蒐集にのめり込んで行く。喪失感を物質で埋めようとする姿は現代的で、カタツムリとはまさしく“自らの殻に閉じこもる”姿のメタファーである。しかし、彼女が大事にするカタツムリのシルヴィアの殻の渦が逆巻きになっているように、グレースはピンキーの後押しもあって、クライマックスでは人生における苦難に逆らい、打ち勝っていく。長いものに“巻かれる”ばかりが人生ではないのだ。
ところで、グレースの旦那となったケンには、「肥満女性フェチ」というフェチズムがあり、それ故に彼はグレースの食事を知らず知らずのうちにコントロールし、太らせていっていたが、彼は果たして悪人と言えるだろうか。ギルバートを失ったグレースに寄り添い、喪失感を埋めようと万引きをして捕まった彼女を、それでも見捨てなかったケンの態度は、見様によっては彼なりの十分な愛情表現だと思うのだ。勿論、グレースにはその感情を拒否する権利はあるし、だからこそ、彼女はケンと離婚したのだが。
手作業によるストップモーションは、実に8年という期間を掛けて製作されただけあって、小物等の美術からキャラクターの動きまで、非常に滑らかで温かみがある。気が付けば、この少し奇妙な風貌の世界の虜になっていた。
本作のもう一つの魅力が、印象的で素晴らしい台詞の数々だ。ブラックユーモアに富んだものから、感動的なものまで、一つ一つの台詞が鑑賞後に愛おしく感じられる。
グレースとギルバートの関係性を示した、「2つの魂、心は1つ」。
グレースが悲しみの渦中にあっても涙を流せない姿を、「泣けないのは、涙が立ちすくむから」と表現するのは詩的で美しい。
そんな中で、一際輝きを放っていたのが、クライマックスでのピンキーの手紙だ。
【人生で様々な経験をしてきた先輩からのメッセージ】
本作最大の魅力は、なんと言ってもピンキーというキャラクターの魅力と、彼女のパンクな生き方だろう。孤児として生まれながらも自由に人生を謳歌し、酸いも甘いも経験してきた彼女だからこそ、グレースや孤独な老人に寄り添う事が出来るし、クライマックスでの手紙の文言の一つ一つが、単なる綺麗事の羅列に留まらないのだ。
「人生は美しい織物よ。体験しなきゃ」
「痛みもあるけど、それが人生よ」
「人生は後ろ向きにしか見えないけど、前を向いて進むの」
「カタツムリは跡を残しながら前に進む。あなたも自分の生きた跡を世界中に残すの」
ピンキーの言葉を胸に、新しい世界への扉を開いたグレースは、夢であったストップモーション・アニメの監督になり、その果てでギルバートと再会する。再び家族として生活出来るようになった彼らの穏やかな日常が続く事を願うばかりである。
【総評】
独特な世界観ながら、現実味を帯びたストーリー展開によって描かれる人生讃歌。カタツムリが自らの辿った歩みを地面に残していくように、我々も何かを残したくなるような気持ちにさせてくれる。人生を前に進める為のほんのささやかな後押しをしてくれる1作だった。
こんなにもスレきった内容なのにじわじわ沁みてきました
クレイの力感たるや物凄いもので、それだけでも見る価値はあるとは思ったものの、取っつきにくさは半端なく、この酷い物語に果たしてどこまでついていけるか不安だったのですが、酷い内容がずっと続くにもかかわらず、じわじわ喜怒哀楽全ての感情がくすぐられて、最後には、めっちゃいいと思ってしまった希有で不思議な作品でした。映像の質はもちろんのこと、音楽なんかも効果的だったのかなぁ。
この現実社会を皮肉ったブラックユーモアなんですけど、皮肉るだけに終わらず、どんな環境であろうともしっかりと生き抜いていこうという希望みたいなものも描いていたような・・・決して良い子のアニメなんて言えないんですけど、なんか人生を噛みしめるような作品でした。
予想以上にシビアな人生物語。
ビターな大人向けの寓話。「かたつむりの歩みは遅いが後戻りはしない。歩いた跡を残すだけ。」
ビターな大人向けの寓話。
かたつむりの歩みは遅いが後戻りはしない。歩いた跡を残すだけ。両親を亡くした双子の兄妹はべう別の里子に出され、兄の里親は新興宗教教団で虐待、妹が付き合った男は脂肪フェチで別離、という何とも暗く悲劇的な展開。
クレイアニメで全体の色彩のトーンがブラウンで暗めなためさらに重く感じる。
同じ地味でも、もうちょっと明るく単純ないい話を想像してましたが、今の世の中、甘かった。
主人公が内気で溜め込み症で小太りだから、感情移入しきり。
前時代的な悲劇より、もっと身近な生きづらさにフォーカスしてもらったら良かったのに。
年の離れた親友のおばあさんの言葉で一念発起し、長年の夢だった映画学校に入りストップモーションアニメを作り始める。
ハッピーエンドで本当に良かったとしみじみ思う。
造形が素晴らしい
造形が素晴らしく、冒頭から見入ってしまった。
アードマン作品が大好きなのもあり、クレイのストップモーションアニメは、それだけで大体好物、あとはストーリー次第です。
全体的に暗くて気が滅入るが、ユーモアがあって救われる。
グレースの独白で話が進み、テンポは悪くないので飽きずに最後まで観ていられた。
未熟児で口蓋裂、出産で母を亡くすなどグレースには生まれた時からマイナス要素てんこ盛りで、いじめられ、生活力はないが陽気で優しい父は目の前で亡くなり、自分を守ってくれる弟ギルバートとは引き離される、ようやく出会った男性はデブ専で太っていればだれでもよいっていう。引け目ばかりでネガティブなのは分かるが、グレースの視点なので描かれ方がずっと「被害者」的、ナレーションが自己憐憫ばかりのようで、あまり良い感じがない。
グレースの心の支えが攻撃の術を持たず、もの言わず常に重荷を背負っている「かたつむり」というのもなんとなく被虐的だし。しょっちゅう泣いているし。
助けてもらうがお返しは「できない」だってアタシは弱くて無知で何もできない、自分のことだけで精一杯よ、って。
こういう人いるんですよね、程度はあるのでしょうがないこともあるが、いつも助けてくれたギルバートだって弱くて何もできないはずだけどあなたを一生懸命守ってくれたじゃないの、って言いたいところはあった。
でも、「自分が浪費していなければ、ギルバートに会いに行く旅費は何回分でもあった、会いに行けた」と気づいて泣きながら反省する部分があって、作者がグレースの思考を全面肯定しているわけじゃないのが分かって物語の見方が変わりました。
ピンキーが最高。
変人だが人生を楽しむことを知っている。実は生まれたころから辛酸をなめてきて到達した「生き方」だったよう。なので人の本質を見抜くし、心の機微を理解して限りなく優しい。
グレースに手を差し伸べてそっと見守る、一緒に人生を楽しむ。他人の目なんかどうでもよろしい、自分の人生だから。これをするには、所有物が多くないほうがいいなと思った。住む家があって庭で作物をつくり、移動には元夫が残したぽんこつバンがある、そしてグレースという相棒がいる、人生最高じゃないの、という生き方。
ピンキーがアルツハイマーになった時、グレースは逃げない。
ベッドに逃避しようとせずに、ピンキーをいたわり面倒をみて、看取る。
いつの間にか、ピンキーに生きていく活力ももらっていたよう。
ピンキーが彼女に遺したものは、クッキー缶のお金だけではなかった。
ギルバートの過酷さに気が滅入る。こんな子供は実際には数えきれないくらいいるんだろう。
そして、ここにもLGBTQ。
時代の要求のせいかと思ったら、監督自身がゲイで、ずっとマイノリティを描いた作品を撮っていたのだった。
ラスト、グレースの作品の上映会の客席で目立っていたイケメンと何かあるのかと思ったら。
ギルバート、生きてるんじゃないかと思ってはいたが、生きていて良かった。あれで終わったら悲惨すぎて嫌になる。しかるべきところに養両親の虐待の数々を訴えたら証拠が続々でてくるだろうし末の弟は証言してくれそう。
また、助けた浮浪者が判事に復帰して今度はグレースを助けてくれたのも、情けは人の為ならず。彼女の自主性を後押ししているよう、人生は捨てたもんじゃない。
人物は「ナイトメア・ビフォークリスマス」に似た感じの画風だが、それ以外の小物や背景が呆れるほど作りこまれていて恐れ入る。細かいところをもっと見たい、それだけでもずっと見ていられます。
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