Flowのレビュー・感想・評価
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大事なのは言葉じゃない
大本命のロズを差し置いてアカデミー長編アニメ賞を受賞した一作。色々な力学が働いたのだろうなとは思われるのだが、個人的にはロズよりも確かにこちらを推したい。
ロズとの比較で対象的なのはやはり言葉の有無。今作はセリフ無しのアニメーションだ。でも彼らの思考や感情はその挙動、視線、行動を通して如実に伝わってくる。
私が今作とても見やすいと思ったのはそこだ。言葉は多くを語りすぎる。言葉は時にノイズになる。それがなくても伝わることが多くある。
言わなくてもわかることを言ってしまうことで陳腐になってしまうこと、軋轢を生むことは多くある。今作はそれを上手く捨象し、鑑賞者を信頼し委ねることで、その表現の幅と質を確率することに成功している。
Blenderで全編作成したことが話題になっており、無料のソフトウェアでここまでハイクオリティな作品ができるのには驚き。
動物や植物の質感がとても目に優しく心地よい。
猫とカピバラ、ワオキツネザル、犬、そしてヘビクイワシのロードムービー。それぞれの役割や性格がとても際立っていて対照的で、魅力的に描かれている。
一見マイペースだがどっしり構えていて安心感のあるカピバラ、物に執着するワオキツネザル、少々頭が悪そうだが天真爛漫で可愛い犬、猫に同情的でスマートな態度でチームを引っ張るヘビクイワシ。
そして本作の主人公の黒猫は、どうやら以前は飼い猫だったようなのだが、飼い主がいなくなり、野生の生活を始めたばかりでまだ適応できておらず、外界に臆病な性格だ。
"""""ここからネタバレ”””””
最も印象的だったのはやはりヘビクイワシ。
この鳥自体が個人的に好きなのもそうだが、理由なく黒猫を身を挺して守り、その後も理知的な態度でチームを率いる。
終盤、塔の頂上から天に召されるように消えていく。死のメタファーか、それとも片翼が回復し飛び立って去っていったのか、それはわからない。
黒猫とヘビクイワシの出会いは洪水と共にあり、最後も水の中に浮くことで別れた。この洪水という大量の水が、多くの時間や出来事という日々の情報のメタファーであるように思われた。その中で出会いと別れがあるのだと。
次に印象的だったのはクジラ。
重要なのが、この生物のみが空想の生き物だということだ。明らかに現実に存在するクジラではない。
クジラは洪水でのまれた世界を自由に謳歌するが、最後は陸地に戻った地面であえなく死ぬ。実際のところ、このクジラが本当に存在していたのかどうか自体わからない。なにしろ空想の存在なのだから。水という存在そのものを具現化した存在なのかもしれない。
根源的な恐怖でもあるし、しかし一方で自由に闊歩する偉大な存在で、かけがえのないものでもある。
そして泳げるようになり、魚を自分でとれるようになり、水を克服した黒猫にとって、最後に現れるクジラは以前ほど恐ろしいものではなかった。むしろ自分を慈しむように見えたし、クジラに同情的にすらなれる。自分の立場が変わることで対象の見方がこれだけ変わることを描いているようだ。
ワオキツネザルは物に執着するのが顕著で、それが元でよくトラブルを起こしたりしている。明らかに迷惑な存在でもある。
しかしカピバラはそんな彼を率先して船に乗せることにする。カピバラはこの映画のテーマである「共助」を最初から体現しているように見える。だから彼に頼りがいを感じるのだろう。
猿が途中で海に放り投げた浮玉が終盤猫の命を救うことになる。単なる物への執着は悪であるとする描き方なら、こうはならなかっただろう。これはその執着すら受容しているとも言える。
猿は終盤、割れた鏡で自分の顔を見る。猿の自己イメージが変わったことがここで暗示されていている。この瞬間から仲間を助けようと黒猫と行動を再び共にする。
本作では水面に映る自分の顔を見るシーンが度々登場する。おそらく自己イメージ、心の有り様を示しているそれは、ラストシーンで4匹の動物が映り込むことにより、水面に波がなくなり平静になる。
この映画のテーマを明確に表すとても良いシーンだった。
示唆に積んだ傑作
動物しか登場せずセリフも一切ない。そんな風変わりな作品であるが、他では味わえない唯一無二の魅力が感じられた。
退廃的な世界観は寓話的なテイストを呼び起こし、宗教や神話的な意味すら深読みさせる物語は、鑑賞者の想像に委ねられる部分がかなり多い。
個人的には、これは神が与えた試練の物語…と解釈した。
旧約聖書に記されている”ノアの方舟”の逸話は有名だが、それと本作はよく似ていると思った。聖書では、神はわずかな人類と動物だけを残して世界を海に沈めてしまった。今作でも大洪水によって世界は一変してしまう。それまでの罪業を洗い流すかのように動物や植物は海に沈められ、わずかに生き残った生物、黒猫やカピバラ、猿、犬、鳥たちはノアの方舟よろしく一艘のボートに乗って荒廃した世界をサバイブしていく。これはほとんど旧約聖書の話そのものという感じがした。
但し、結末は聖書とかなり異なる。ノアの方舟は再生という形で終わりを迎えるが、本作では世界は延々と破壊と再生が繰り返されることが示唆されている。ここが少し残酷な所で、黒猫たちは試練の旅を乗り越えてついに目的地であるゴールへとたどり着くが、結局旅の出発点に戻ってしまうのである。
映画は最後に再び押し寄せる津波の音と共に終わりを迎える。ここまでの黒猫たちの旅の苦労を思うと何ともやるせない気持ちにさせられた。と同時に、この終わりのない試練は、ひょっとすると現代に生きる人類に対する”洗礼”を暗喩しているのかもしれない…などと考えてしまった。
尚、最後に鳥だけは空の中に吸い込まれていったが、これも様々に解釈できよう。神の生贄となったという見方もできるし、鳥は自らの身を挺して黒猫を救ったという善行を成したことから、神に認められて昇天したという見方もできる。
また、人間は一人も登場してこないが、おそらく原罪を抱える人類はすでに滅ぼされてしまっていると考えるのが妥当だろう。
本作にはこうした様々なメタファーが隠されており、かなり幅広く解釈できるように作られている。自分は宗教という観点から紐解いていったが、人によっては自然環境破壊という観点や現代社会を風刺した物語と捉えることも可能だろう。
いずれにせよ、これだけ示唆に富んだ作品は昨今中々お目にかかれない。極めて挑戦的な1本になっていると思った。
一方、単純にアニメーションの表現という点で見てもかなりクオリティの高い作品だと思った。美しい自然描写、生き生きと表現された動物たちの表情は実に素晴らしい。
まず、最初に驚かされたのは、繊細に表現された森の風景である。豊かな色調で表現された植物、透き通るような水の表現は息をのむほどの美しさである。後半に入ると、黒猫たちは荒々しい自然の猛威に晒されることになるが、ここも迫力のある映像で見入ってしまった。
但し、唯一気になったのは水しぶきである。これだけクオリティの高い自然描写にも関わらず、ほとんど水しぶきが上がらないのは不思議に思った。水滴もほとんど垂れないし、このあたりの細かい描写に表現の限界が感じられる。
また、動物たちは自然描写に比べると、解像度が低めでのっぺりとした表現に留められている。これが例えばピクサーのアニメであれば、動物の毛並み1本1本に至るまで繊細に表現されるだろう。そこについては本作は完全に無頓着である。したがって、クオリティという点で言えば確かに物足りなさを覚えるかもしれない。
ただ、これも考え方次第で、敢えてそうしているという風にも捉えられる。生々しさの中にコミック的なデフォルメを加味することで、背景の自然物から浮き上がって見えるようにわざとコントラストを付けているという見方もできる。
更に言えば、アニメーション表現のクオリティ云々という問題はさておき、動物たちの感情はこの映像表現でも十分に伝わってくる。演出としては必要にして十分という感じがした。特に、コロコロと変わる黒猫の目は観てて飽きさせない。こうした動物たちのどこかユーモラスな表情も本作の大きな見所と言えよう。
寄りそう仲間
くろ猫が可愛いです
丸く大きな目が表情豊か
セリフはないけど鳴き声で
何となくわかる
大洪水で流され流されて沢山の困難に
見舞われていく
そこで出会った動物たち
初めは助けてもらった関係が
魚を取りはじめてからは
魚を配ってまわる
はじまりは何に対しても
…オドオドしていた
くろ猫が徐々に逞しくなっていく
水の中の大きな生き物の存在に
驚き怖かったが…
洪水の水が引いて横たわっている
大きな生き物に近づいていく
助けることはできないが
…寄りそうシーンが印象的
水が引き
困難を乗り切った仲間たちの
…"寄りそっている姿"
が…凛々しくもある
動物たちそれぞれの個性
いつしか助け合う仲間
言葉がなくても…
好きな感じのアニメでした
映像がキレイで水の怖さも感じ
音や音楽がナレーションとなって
ひき込まれていく
監督らしい動物疑似家族による、言語も種も越える流浪の舟旅はぼくらの今これからのようだ
ぼくらが生きる現実世界を映し出すように人類の文明が滅び、洪水で水位は上がった(現実に直面している海面上昇)後に、色とりどりな動物のはぐれものアウトサイダー達が疑似家族を形成してバベルの塔へと向かう、タイトルに偽り無しなノアの方舟漂流記。彼らが水の反射や鏡で自身の顔を見て対峙するとき、それはまるで観客自身に問いかけ、人類だけでないあらゆる生物が共存するこの地球の行く末を占うようだ。種や立場を乗り越えて、協力し合うこと。
精神的スピリチュアルな流浪の旅とその果てに水中から顔を上げるなど監督前作『Away』との共通点は(タイトル然り)明確に色濃く、精神的姉妹分と言っていい作品ながら、哲学的・寓話的側面が色濃かった全作よりも本作のほうが間違いなく幅広い客層に訴えかけられる間口の広さと深度の増した普遍性を兼ね備えている傑作!黒猫とは不吉の象徴ながら本作のネコのかわいさなど、とびっきり生き生きと美しく革新的なアニメーションに目も心も奪われてしまう。夢中になってしまった。
たとえ始まりは呉越同舟的ハプニングであったとしても万物の共生、あるいは種の保存に予期せぬ神の介在。すべての生き物と命を讃え、心温まる映画の魔法。
高い芸術性に目を奪われ、神話的な物語に引き込まれる
台詞もなく、ナレーションもない長回しの描写には、どこか、無声映画のような、ドキュメンタリーのような趣きがある。3DCGアニメでありながら、ベッタリとした絵筆のタッチが残されているキャラクターには温かみがあり、絵画のように美しい背景と相まって、高い芸術性を感じ取ることができた。
黒猫が犬の群れから逃げている最中に鹿の大群に遭遇し、そのまま津波のような水に飲み込まれたり、船から落ちた黒猫が、鯨に乗っかり、鳥にさらわれた末に、元の船に戻って来たりといったシーンをワンカットで描くなど、アニメならではの見せ場も用意されている。
おそらく人類が滅亡した後の世界で、同じ船に乗り合わせて旅をすることになった動物たちの物語には、神話のような魅力が感じられて、引き込まれた。
擬人化されていない動物たちの動作や仕草にはリアリティがある一方で、登場する動物の種類からも、人間が遺した廃墟からも、地球上のどの地域の物語なのかを特定することは難しく、度々登場する鯨も、多数の細長いヒレを持っており、現存する鯨のようには思えない。
こうしたファンタジックな設定は、物語の寓意性を高める効果を上げているものの、尖塔のような山の頂上で無重力になり、ヘビクイワシが天に昇っていくシーンや、水が引いた後に、陸上に取り残された鯨が何を意味しているのかなど、言いたいことがよく分からないところもある。
ただし、映画としてのメッセージは明確で、一匹だけしか登場しない猫やカピバラは別にして、ヘビクイワシにしても、キツネザルにしても、犬にしても、同種族の仲間ではなく、旅を通して絆を深めた友人たちと一緒にいるという選択には胸が熱くなるし、そこには、「民族や宗教を超えて融和し、団結しよう」という作者の訴えも読み解くことができる。
また、ラストで、4匹が、水に映った自分たちの姿を見つめるシーンでは、「多様性の受容」という、現在の世界が直面する深刻な課題が心に刺さるのである。
プレステ4をバチくそ大画面で
85分プレイし続けている気分。
思うように動かせない分ストレス。
あとこのプレーヤーは海に落ち過ぎ。
なぜこのカタストロフが起こったのかがわからないから
解決策もイメージできなくて話を追うのが難しかった。
ノアの方舟って感じでもないんだよな…。
まあ、そんなものは必要ないのかもしれないけどね。
考えるな、感じろ!ということです。
公開初日で劇場がパンパンなのも東京の凄さ。
あと、ロボット・ドリームズもだけど
ノンバーバルで一本撮り切るのはトレンドなのかしらね?
ヨーロッパの侵略の歴史に耐えた国家だからこそ
自国の言葉を大切にして欲しい気もするけどね。
カピバラは優しい。犬は能天気でバカ。
鳥はよくわからないけどたぶん火の鳥になったのかな?
たぶんメガネザルがこの世界を支配してモノリス見つける。
そんな感じ。ありがとうblender。
雑な解像度がむしろストーリーに奥行き付けてたよ。
それではハバナイスムービー!
少し船酔い
大洪水に吞み込まれていく世界で一匹の黒猫の旅を描いたアニメーション映画。
鑑賞中はカッコをつけ、あれやこれやと考えながら観て、鑑賞後もモヤモヤが解けなかったが、ギンツ・ジルバロディス監督がインタビューで「昔、猫や犬は飼っていたんだよね~」と聞き、猫好きにしか伝わらない同調性を感じ、シンプルに考える事にした。
映画の特筆すべきは目線。いわゆる神目線で、絶妙な視点の移動が現実性と幻想性を高めている。ただ、この神様ちょっと落ち着きがないのか、結構ゆらゆらしていた。おかげさまで鑑賞後、少し船酔いを感じてしまった。
映像は美麗で雰囲気もよい。特に大洪水の緊迫感、水中と水面の往来などは秀逸だ。
どうも私のような大人目線では、あの世界観と動物達の友情に、カッコをつけた考察が入ってしまいそうだ。ここは、子供たち目線の純粋な映画感想文を読んで楽しむのが面白そうだ。どこかで読める機会があればいいな。
上質な画像と音楽、可愛い動物たち、シンプルな展開、子供から大人まで楽しめるアニメーションです。親子で観に行かれたのなら、あとで感想を語り合うのもいいと思います!
う〜ん、ラストの意味が判らなかった
ノアの方舟
大津波&洪水により住んでいた地を舟で飛び出す黒猫🐈⬛が主人公。
住んでいた地は、まるでエデンのような美しさで
動物もいっぱいいる。
それこそ犬に追いかけられたり生きていくのも大変そうな黒猫。
しかしそんな折、大津波が襲う。そして大洪水の世界に。
舟に飛び乗った黒猫だが同じ舟には、カピバラ、犬、キツネザル、ヘビクイワシも。
最初こそ打ち解けないが、さまざまなピンチをくぐり抜けると友情も深まり仲間に。
人間は住んでいたようだが誰もいない。この大災害で絶滅したのかも。
主人公たちは生き抜くために力をあわせる、共生・共存がテーマかも。
各地で戦争が起きている現代へのメッセージかも。
後半では塔に登った黒猫がヘビクイワシと遭遇し、宇宙に吸い込まれる夢をみる。
もはやファンタジー的な描かれ方をしているし、その後の助け合いかたもファンタジー。
そしてラストでは再度洪水が起きるが、死にかけていたクジラが復活するという
エンディング。
実に滋味深く、シーンごとに色々と考えたり想いを馳せたりできる作品。
テンポも良くて場面がコロコロと変わっていくことから、飽きもこないし、子どもも楽しめそう。
私は自然のビジュアル、動物たちの動き、音楽が一体となっているところが好き。
実に豊穣な作品だと思う。
大洪水と黒猫
前作「Away」(2019)に続く長編2作目。
本作も、前作同様にセリフは無く、CG画像で作り上げた世界が不思議に魅力的。
時々CGが稚拙に感じる部分があるものの、そこが良くて、それが何か引き込まれる感じがする。
人間は現れず、形跡のみ。
突然の大洪水を逃れ、乗り合わせた動物たちに徐々に繋がりが出来て来る。
そして、なんでこの動物たちになったかは分からないものの、造形がとってもカワイイ。
動きや態度に、動物の特徴がよくあらわれてて、微笑ましい。
黒猫が徐々に水に慣れてくる様子もカワイイ。
ヘビクイワシ、美しい。
水や雨の表現も素敵。
ある日突然洪水が引き物語は終了する。
語られていない部分や、余白も魅力になっている一作。
”考えるな感じろ”的な映画
アイデンティティを再確認する物語。
本作品においては、鏡・水面・ガラスなど、光を反射させるオブジェクトが多く現れる。事実、この映画は黒猫が水面を眺めるシーンから始まり、ラストには4匹の動物が同様に水面に目をやるシーンで終わる。それほどまでに、「反射」という要素が本作品において大きな位置を占めているのだ。
ではなぜ、彼らは自身の姿を反射を通して確認する必要があるのか?それは本作品の動物たちがみな、自身の住処・ルーツを失っているからに他ならない。斯様に、帰るべき場所や向かうべき場所を失っているからこそ、自分が何者なのかという問いが重要になる。確立した自己認識を有していればこそ、属すべき集団を外れ、行く先を失ってもなお、前に進むことが出来る。
セリフがなくて大正解
アニメーションってやっぱり難しい。。
第97回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した本作。オンラインチケット発売開始に出遅れ、12日の朝にアクセスしたところTOHOシネマズ日比谷は既に3割程度が埋まっていて好みのシートも売約済み。やむを得ず第2候補のTOHOシネマズ日本橋に切り替えて参戦です。公開初日9時15分からの回は思ったより空いていました。
本作、動物(アニメーション)映画であり人間は一切登場しません。ただし、建造物や家具、道具など生活の痕跡は残されており、或いは既に滅び去った世界観なのかもしれません。そして物語中に起こる自然現象から想像するに、気候変動によって地球の環境が大きく変わってしまっている状況なのかと思われます。(相変わらず、殆ど情報がないままに鑑賞、そしてレビューを書いているため間違っていたらすみません。)
登場するのは1匹の猫とその他数種類の生き物たち。絵柄は可愛らしく、けしてフォトリアルと言うわけではありませんが、それぞれ特徴を押さえた動きや仕草と、それに合わせた身体の陰影の付け方を見れば、正に「其の物」に見えて違和感がありません。そして、擬人化は物語を推進させるための最低限なものに抑え、勿論「人間の言葉」も話しませんし名前もありません。
森を散策する1匹の猫。野生感はなく、住み家も(その姿こそ見えませんが)飼い主だったと思われる人間の家(お気に入りは陽の光が入るベッドの上)。物語の進捗に合わせいろいろな生き物と相対しますが、話の通じない相手に対し常に警戒感は忘れません。ところが突然、周辺を襲う未曽有の洪水に逃げ場を失い、目の前に現れた帆船に命辛々乗り込むとそこには既に先客が。その後、徐々に同乗者は増えていき、始めこそお互いを相容れようとしませんが、いろいろなことを乗り越えていくうちにいつしか共存共栄していきます。猫、カピバラ、キツネザル、犬そしてヘビクイワシとメンバー選びもポイント。お互いに捕食・被食の関係性はないため、サバイブするために協力し合う様子にも取り敢えず矛盾は生じません。
とは言うものの、ストーリーとしては当然ファンタジー性が強く、特に終盤に起こる現象については正直、どういうことなのか解釈が追いつかなかった私。鑑賞後に本作のモチーフであろう『ノアの箱舟』についてWikipediaで確認してみましたが、腑に落ちたというには程遠く。。兎も角、現代の気候変動の原因であろう「人間の所業」に、神さまは相当お怒りなのでしょう。
と言うことで、語られるストーリー以上にメッセージ性が高いと感じられる本作。アニメーションってやっぱり難しい。。参りました。
人間は出てこないけど、まるで人間社会
今年のアカデミー長編アニメーション賞で、大本命だった『野生の島のロズ』を破ってサプライズを起こした本作。
『野生の島のロズ』の制作費が7800万ドルに対し、本作の制作費は400万ドル。
どんなもんかなと思いながら観てみたが、最初の場面から制作費の低さを感じさせない映像の綺麗さに感動。
素晴らしいアニメって例外なくまずは映像で驚かせてくれるものだと思うが、本作もそこは開始数分で合格していると思った。
『野生の島のロズ』同様、出てくる動物たちの挙動はとてもリアルだが、こちらの動物たちは喋らないため、よりリアルに感じた。
洪水で沈みゆく世界に黒猫を解き放ち、他の動物たちと戯れる様子を眺めて楽しむ、動物系のYouTube動画を観ている感じ。
そういう動画が好きな人には、終始幸福な時間を提供してくれると思う。
ただし、動物たちの挙動がリアルなのに対し、動物たちの行動は現実ではあり得ないと思う場面が多々あった。
まず、冒頭で犬、狐、熊が連れ立って行動しているところで「えっ!」となった。
あと、動物が籠に小物を集めて運び出すのも、現実では考えにくいと思った。
さらに、ボートのオールを動物が操作するのもあり得ない気がした。
ボートが木に引っかかって前に進まなくなった時に、動物がボートをなんとか動かそうと、オールを小刻みに押したり引いたりしだした時は思わず笑ってしまった。
序盤、「ヘビクイワシ」という背の高い鳥の群れの中で、困っている黒猫を助けようとした一匹のヘビクイワシを、他のヘビクイワシたちがリンチする場面がなかなかの衝撃。
こんな陰湿な動物の行動は初めて見たかも。
ここらへんから、現実の人間世界で起きている社会問題を連想せざるを得ない場面が多発。
中盤、世界に異常が起き、生き残った動物たちが同じ場所に逃げ込んで行動を共にする展開は、『野生の島のロズ』の中盤とそっくり。
しかし、その中で起こる出来事は真逆な感じがして興味深かった。
『野生の島のロズ』の方は理想的な世界を描いていたのに対し、『Flow』の方は実際の現実世界を見ているようで鬱気味になった。
ボートの下に広がる海には大量の魚がいるため、黒猫にとっては食料に困らない状況。
黒猫が魚を取ってきて他の動物に分け与えている場面を観て、黒猫の性格次第では2023年公開の『逆転のトライアングル』みたいな話になりそうと思った。
終盤は「社会的に足手まといになっている人をどうするか」みたいな話に感じた。
特に、以前助けてくれた縁の下の力持ちみたいな存在が窮地に立たされている時、助けてあげたいのはやまやまだが、あまりの問題の大きさにどうすることもできず途方に暮れる動物たちの様子を観ていて、「高齢化社会」のことが頭をよぎった。
近くで寄り添うことしかできない動物たちが切なかった。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 人語が無い分、視覚・聴覚を総動員し想像力を駆使して物語が何処へ流れて(FLOW)いくか息を凝らしてスクリーンを見つめるサイレント映画の様な楽しさ。ラトビア映画恐るべし。
アニメってこの程度の作り込みで十分と思わせる作品。
ラトビア映画は初めてかも。
エストニアの映画は昨年観たけど。
アカデミー賞を獲ったということもあって鑑賞。
最小人数で作られたそうで、今の時代3Dやアニメーションソフトなど良いものが沢山あるとは言え、その大変さは素人の自分でもわかる。
セリフが無いのも自分のペースでできたのだろうし、ワールドマーケットにはそのままで受け入れることができるので良かったのだろう。
ストーリーは詳しくはわからないが、野生では普段食物連鎖の何処かに位置する(のかもしれない)が、それほど干渉し合わないタイプの動物たちも有事の際は手を取り合って助け合いましょうみたいなのがテーマなのかな?(トンチンカンなこと言ってたらごめんなさい)
作品名はわからないけど日本もアニメーション創成期はこんな感じのものって沢山あったような気がするけど、テーマ性が違うし、ロシアやドイツに占領された歴史背景のある国の作品というのもあって評価されたのかな。
決して最高品質ではないけれど、最高
丹念に動物の仕草や表情を描いているのかと思いきや、非常に創造性豊かな設定・内容・映像で、なおかつユーモア満載、めちゃくちゃ楽しんで、時にかっこよくそしてまた時に感動的で、非常に魅せられました。
3Dの質とか動きの質とか、一つ一つの制度は正直物足りないものを感じますが、音楽含め全体として捉えるとトータルとしての完成度たるや何ものも寄せ付けない、まさに無双アニメーションであったという印象です。
いっさい台詞がないので、細かい表情とか仕草が絶妙かつ巧妙で、実に分かりやすかったです。カメラワークなんかも素晴らしかったので、全く飽きることなく見切って、もっと・・・と─
さすがオスカーでドリームワークス、アードマン、ピクサー、実質ディズニーをも蹴散らした作品。
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