Flowのレビュー・感想・評価
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いろんな意味でクオリティ低い
圧巻の映像表現
映像表現がとてつもない。多用される長回しや、猫と同じ低い視点でのカメラワーク、あえて加えられている手ブレによって臨場感が醸し出されている。水の表現もすごく巧みで、波打つときの光の屈折がすごくリアル。
世界観は思っていたよりファンタジー色が強かった。洪水の規模も半端じゃないし、鯨のような架空の生き物も登場して驚いた。特にヘビクイワシが謎の光に消えていくシーンが印象的。
主人公の黒猫が、大きな猫の像の上から水没した森を見渡し、そこで謎の巨大な生き物の神々しい姿を目にするまでのシークエンスが凄まじくて鳥肌が立った。
動物たちの知能もかなり高く、言葉はなくても感情が分かりやすく読み取れる表現になっていた。この点に関しては、自然の摂理をありのままに描くことを期待していた身としては少し肩透かしを食らった気分だが、捕食者-被食者の関係にある種の動物は登場しなかったので納得はできた。
にゃんこ終末旅行
人類が絶滅したのか動物しか出てこず、更には水に呑まれた世界を黒猫が旅をする。
本作の動物たちは言葉を発さず、彼ら同士でも意思の疎通は取れていない。
動きもかなりリアル寄りではあるが、やりすぎでないアニメ的表現でそれとなく伝わる。
リアリティラインのバランスがとても好み。
…と思ってたのだけど、中盤に鳥が操舵しだす辺りからこれが崩れだして少々残念。
ある程度やらないと話を展開しにくいのかもしれないけど、個人的には最後まで貫いてほしかった。
映像としては、光の表現が素晴らしい。
水は時折硬さを感じることもあったものの、水面の描写に関しては目を瞠るものがあった。
動物たちは毛の一本一本という方向ではないが、陰影が細かく、ワンカットの黒猫一匹に何色使われてたのやら…
動きも適度に愛らしく、黒猫の耳やゴールデンレトリバーの口元が特にお気に入り。
犬種による鳴き声や身体の大きさによる足音など、音の表現も細かかった。
話としては小舟で漂いながら、水に落ちたり壁にぶつかったり、仲間が増えたり喧嘩したりするだけ。
お気に入りを尽く奪われるキツネザルが可哀想。
死生観とかはありそうだけど、そこまでは読み取れず。
終盤の無重力描写は、鳥が召されて黒猫も危うかったってことかな?
水が急に引いたり、鹿の大群がそのまま残ってたり、設定面では疑問が残るが、映像体験としてはなかなか。
世界観は想像が膨らむと取るか説明不足と取るか…
咥えた瞬間魚が動かなくなるなど、後半にいくほど息切れも見えた。
好みの問題もあるが、やはりリアリティライン高めのまま60分程度で纏めた方が光りそう。
水もそのままでよかったかなぁ。
ラトビアのアニメ映画 一匹の黒猫の目線で、初めから終わりまで描かれ...
ラトビアのアニメ映画
一匹の黒猫の目線で、初めから終わりまで描かれた動画。
現れるのは、猫さん一匹と、他の様々な動物のみ。
人間の面影は皆無、言葉も皆無。
建物や、かつて使われたであろう部屋や道具類があるぐらい。
世界中が洪水で沈みはじめ。
猫らしく、最初は孤高だったものが
他の様々な動物と、追いかけられたり、助けられたり、
仲間意識が芽生えたり、警戒したり、去られたり etc.
生き延びてゆくための逞しさ、圧巻。
ふだんの私的な悩みが、小さく安っぽく見えてきました。
誰(どの生物)目線に寄り添うかで、見える物事がまるで違う印象です。
再び観にいかねば。
あとでパンフ冊子を読んで驚いたこと、
OSS(オープンソースソフト)の動画ソフトですべてつくられたとか。
お金をかければ良いってものではないですね。
YouTubeの猫動画で十分かも?
猫好きの使命として視聴してきました。
随所に出てくる猫ならではのあるある動作は、猫好きには堪りませんでした。
また、全ての動物たちが可愛いだけでなく、動きそのものも絶妙で、セリフがなくても行動の目的や意図が自然に伝わってきたのは素晴らしかったです。
とはいえ、肝心の動物の画質はPS3、水の動きはPS4レベルといったところ。
今日日、この画質ならMeta Quest3で余裕でVR鑑賞できるんじゃね?と思いながら観てました。
というか内容的も演出的にもVRで、せめて3Dで観せるべき作品だったと思います。
また、そこかしろに散りばめられている【意味深な物体やシーン】が気になる、というか鼻に付きました。
視聴者がどうにでも想像し、解釈できる余地を敢えて作ったのでしょうが、そうした部分が投げっぱなしの割りには、悪く言えばありきたりなので、画質の粗さと合わせて陳腐感を感じざるを得ませんでした。
長くなりましたが、ココからが結論です。
猫や動物たちの可愛さと癒やしが全て、それに全振りの映画です。
見終わったあとには、日頃のストレスもすっきり晴れ、とても心が癒やされたことは間違いありません。
でも、ぶっちゃけ、この感覚はYouTubeで猫や動物の癒やし動画を観たのと全く変わりません。
そうなんです、結局はYouTubeの猫動画・動物動画で十分なので、お時間が余ってる猫好き・動物好きな方のみ視聴すれば良いかもしれませんね。
い、言ってもうた(汗)
正に「考えるな、感じろ」
予告を初めて観た時から、この物語の終焉はどうなるのか?そればかりが気になっていました。
映像がとても綺麗で、遅いくる水の迫力に、どうする事も出来ない恐怖を感じ、その逆もあるとは思わなかった。陸が落ちる表現も圧巻でした。
動物達の声や態度でしか読み取れない旅路の果ては、正しく「考えるな、感じろ」でした。
あのラストをどう解釈するかで分かれる動物達の道のり…私はハッピーエンドが好きなので、そうであって欲しいと思います。
またじっくり鑑賞したら解釈も変わるかな?
機会があればもう一度、動物達の旅路に同行したい。
海に浮浪し異大陸の動物に逢う (南米・アフリカ・マダガスカル)
台詞なしで説明が皆無なので、消化不良な部分はあるが、動物の動きがリアルで観てて飽きない。鏡に興味を持つ猿、鏡に反射する光を追いかける猫のワチャワチャは可愛い。ゴールデンリトリバーに驚き、毛を逆立てる猫もリアルだった。
登場した動物の分布を調べると1つのテーマが浮かぶ。ネコもイヌも人里に多く、監督の出身国ラトビアを含むほぼ全世界に居る。一方、カピバラは南米固有、ヘビクイワシはアフリカ固有(サハラ以南)、ワオキツネザルはマダガスカル南部固有。つまり後者3種の分布は海に隔てられている。本作は洪水(Straume [ラトビア], flow [英])で漂流するので、異なる大陸・島の動物が集うのも不可能じゃないが、描かれた時間軸ではちと速すぎる。つまり、リアルな漂流を描いたのではなく、分布が離れた動物たちを敢えて選び、彼等が出逢う姿を描きたかった気がする。ネコとイヌが洪水によって欧州?を旅立ち、普段は会う筈のない大陸の動物たちと遭遇し、諍いもありつつ最後は協力し仲を深め、4匹が睦まじく水面に写る。困った時に必要なのは、国境や種の壁ではなく、協力しあえる仲間...なのかもしれない。
1時間5分頃から、直立した岩の上で重力を失い揺蕩う場面、何故ヘビクイワシは天に召され、ネコは地上に戻るのか? 傷ついた羽根で無理した鳥の天命か? 或いは、直後の1時間10分頃から水が引いて洪水が終わったのは、ヘビクイワシが天に昇って起こした御業なのか?
終盤、水が引いて陸の上で身動き取れなかったクジラが、エンドクレジット後に海を漂っているのは、洪水が再度起きたという事か? 全然違う個体なのか? と観客が想像する余地が残された映画なんですね。
詩的な映画
動物を擬人化したアニメ映画という共通点のある「野性の島のロズ」と本作を、2本続けて観ました。
「野性の島のロズ」の動物たちは言葉を喋り、「献身的な母性愛」や「集団への自己犠牲」のわかりやすい物語で、激しく情動を刺激される映画でした。
一方本作の動物たちは人間的な振る舞いはするものの、言葉は一切喋りません。テーマもよくわからない。
じゃあつまらないかというと、そうではありません。「野性の島のロズ」を「散文的」とすると、本作は「詩的」な映画でした。美しい背景の中に象徴的な事物が羅列されています。一つ一つにおそらく隠された意味があるのでしょうが、考える映画というより、感じる映画なのだと思います。洪水で洗い流されて人間たちがいなくなった後の世界は、大変美しい不思議な世界でした。特に水の表現が見事です。そして動物たちは昼寝をしたり遊んだり助け合ったりして暮らしています。必死になったり呑気になったりしながら。
お魚くわえてなくても追いかけられる
動物の鳴き声だけで90分
これを作ろうと思ったことがそもそもすごい。台詞一切なしで動物の鳴き声、効果音、音楽だけで物語を進める。
台詞に頼れないから状況を分かりやすく描写する必要がある。
かなり大規模な洪水から始まり猫が舟に乗って旅に出るのだが猫のミニマムな視点でスタートしつつ壮大な世界を描いてやろうとする意気込みがすごい。
そもそも動物同士のやり取りだけでは単調になりそうなところを次々と色々な展開を起こし飽きさせないようにしている。
これは本当にすごい。作るのは大変だったと思う。だって、そもそも猫の猫らしい動き、犬の犬らしい動き、その他動物の動きをリアルに見せつつ、かつ演技もさせつつっていうのは、リアルすぎると地味になるし、演技させすぎるとわざとらしくなるから、そこら辺の案配が大変だったと思う。
これが結構すごいと感じたのは、かなりミニマムな小規模な物語になりそうなんだけれども、かなり大きい空間を作ろうという意思があるところ。
そこがまずすごい。
冒頭から、猫の銅像がたくさんあって、猫好きの人間が飼っている猫だということが示される。猫を描いている最中の絵もあって、割と大きな家で、この家の主人は猫が好きなんだろうなというのが描写でわかる。
ただ、肝心な人間は出てこない。にも関わらず、この家の主人がとっても猫が好きなんだなということが、部屋の小物とか肖像でよく表されている。
これがまずすごい。
で、洪水が突然襲ってくるんだけれども、これも最初に鳥がたくさんの飛んでいく描写を猫が見て、その後に鹿の大群が逃げ行く光景を地上で見せる。
そうしたら、その後でとんでもない津波がドドドッと入ってきて、一旦猫が波に飲まれる。そこの音も、水中になると音を変えるというところがしっかりこだわりが感じられる。
猫は何とか水の中から抜け出して、船を見つけて、船に乗り込むんだけど、船に乗ったらそこにカピバラがいたという、出会いの描写も面白い。
その船にどんどん仲間が加わってくる。犬が入ってきたり、猿が来たり、鳥が来て、どんどん色々な動物が増えていくと。
猫が割と主に操縦してたんだけど、鳥が来たら鳥が結構しっかりリーダーとなって、声出してくれると。やっぱり空飛べるやつは一目おかれるんだろうか。
人間が住んでいた町に行くんだけれども、この町の描写も水没した町が、CMでも使われてるとこであるんだけど、すごい美しくて、かつ人間の姿は全然ない。というところにロマンを感じる。
猿が色んなものを集めるのが好きで、籠の中に人間が作ったものをどんどん入れて、特に鏡がお気に入りで、鏡で自分の姿を見て遊んでいる。
この物好きの猿が、水に浮かぶボールを持ち込み、そのボールを犬が気に入って遊ぶ。しかし、鳥が蹴っ飛ばし、船の外に落としてしまう。
ボールは流されてしまい、猿は「あああ、残念だ、ボールが行っちゃったよ」という表情をする。そこで映画館で笑いが起きた。
池袋の観客はちゃんと笑うポイントで笑ってくれるところが良い。
これ船に乗ったままどこに行くんだろうという感じだが、ちゃんとその目的地、何か高い場所を目指して進めているというのが、色んな視点の切り替えで分かるようになっている。
明らかに何かすごい高い場所があって、ちょっとあそこにむかって船進めようぜという感じでどんどん進めていくと。
この辺が。目的地だとか、特にそういうセリフがないにも関わらず、何か高い場所に向かってるなとなんとなく分かるというところがすごい。
この辺は本当に説明なしだと分かりにくくなりやすいとこなんだけど、ちゃんと分かりやすいのがすごい。
鳥が猫をかばってくれてて、猫が鳥の群れの中に誤って入ってきてちょっと攻められてて、鳥がかばってくれて。鳥と鳥の長のバトルになってる、その鳥バトルもなかなか見所。
鳥の長と喧嘩の後に負けて鳥が船に乗り込んでくれる展開なんだけれども、ここら辺のドラマの作り方、アニメーションの見せ方も面白い。
結構この鳥がいるからこそ高い視点でも物語が自然に見れている部分がある。視点が低いところ、高いところと巧みに使い分けてるのがうまい。
いよいよ後半になると、すごい、うわあ、嵐で船が揺れる、船が揺れるう!っていうのを乗り越えた先に、すごい高いところに到達すると。
猫はどんどんこの高い塔を登っていく、登っていった先、頂上で鳥が待っていて、鳥と一緒に神秘体験をするわけよね。
体が浮く、宇宙に吸い込まれるのかっていう風に体が浮いていって、鳥だけが浮いてって、どんどん空に行って空の彼方に消え、猫の方は落ちて、何だったんだこれっていうところで神秘体験が終わると。
塔が結構人工的な感じ、人間が作ったような感じに見えて、かつ、この神秘体験の後、一斉に水が引いていって洪水がおさまるという描写があるから、この高い地点が生贄を捧げる場所で、その生贄が捧げられる、生贄と鳥が生贄になってくれたから、降水が収まったのかなみたいな感じがなんとなく示される。
ちょっとそういう解釈であるかどうかはっきりとは分からないところであるんだけれども、ちょっとそういうあの、ストーリー上の仕掛けというか見せ方がある。
だいぶ水がバーッと引いていって、猫が自由に地上をはしゃげるようになって、猿も仲間を見つけて楽しそうになってたところで、船が木に引っ掛かってるよと。
木に引っ掛かってカピバラだけが船に取り残されて、ああ、カピバラ助けなきゃと。結構頑張って猿や犬、猫も加わって助けようとする展開が熱い。
途中で助けた犬どもが結構薄情で、すぐどっかに行っちゃうところがなかなか切ねえなというところではあった。
せっかく助けた犬たちは!猫も鳥に対して助けてやろうよ的な感じで、わざわざ助けたのに。餌を食うは、場所を占拠するは、なかなかだよ、せっかく助けたのにちょっと迷惑集団であったというところもなかなか考えさせられる。
ラストは、冒頭との対比。冒頭で猫が水面を見て、水面に映った自分を見ているというところから物語はスタートする。その対比で、猫がのぞく水面で水の流れ、フローが静まっていき、洪水がおさまっていくことが示される。
かつ、最初は1人だった猫が、最後には仲間の猿、犬、カピバラがいる状態で水面を見れたというところで終わる。
ここはちゃんと冒頭の猫一匹との対比になっていて、仲間ができたことが分かりやすく示されている。非常に良い、分かりやすく良い。
これは本当、ある意味実況向きというか、観客がそれぞれ、この猫はこういう風に喋ってんじゃないか、犬はこういう風に喋ってんじゃないかみたいなことを想像できるというところも良い。
各国の人が各国の言葉で、こんな感じで会話してんじゃないかと想像させるところが良い。
もちろん、猿の集団が妙に冠かぶってておしゃれじゃないか?とか、動物こんなに人間っぽい動きする?みたいな、作為的な面はある。
しかし、エンターテイメント的な面があるからこそ良いというところもあり、ここら辺のリアルとファンタジー的なところのバランスも、すごいなと思った。
こういう全くセリフがないストーリーというのは、うまくいけば本当に言葉のわからない人とか、世界各国で翻訳なしで上映できるし、それぞれの人に訴えることができるから、うまくいけばすごいんだけれども、やっぱり作るのはすごく難しくて、セリフなしで動きだけで表現するのは本当に結構大変で、そこを90分やってのけたというのは、それはアカデミー賞を取るよなという説得力を感じた。
予測不能な世界で生きる
ラトビアのアニメーション。アメリカ以外の外国アニメに触れる機会は滅多に無いので鑑賞です。
映像は完璧とは言えないけれど美しく、動物キャラクターはとても可愛いです。雰囲気としてはちょっと神秘的。異種間の意思の疎通を描いているので、動物がしゃべらないのが良かったです。
洪水で水没しつつある世界。人間たちは居なくなっており、森の一軒家にペットの幼い猫だけが残されています。更なる洪水でその家も浸水し、猫は流れてきた船に飛び移って脱出する事に。先客のカピバラに大型犬、キツネザル、ヘビクイワシが仲間に加わります。
美しい野山や公園や大都市もどんどん沈んでいき、世界はどうなっていくのか、動物たちは生き延びられるのか、不安が増していきます。その一方、魚たちは生き生きと泳ぎ回り、巨大魚も姿を現します。猫は魚を獲る事を覚え、仲間に分け与えるまでに成長します。
動物は擬人化されてはいませんがリアルでもなく、人がいた痕跡だけはあり、本作はやはり人間社会になぞらえているようです。
水中の魚たちと陸上の動物たちは、どちらかが繫栄するともう一方は生きづらくなっていくようです。上手く共存していけるように考えていかなければなりません。
猫に魚を与えようとして自分の仲間から追い出されたヘビクイワシ。同種の間でも諍いがあるけれど、異種なのに助け合ったりできるのは、希望を込めてでしょうか。
猫たちとは生きる世界が大きく違うヘビクイワシが天に召される形で退場したのが悲しかったですが、最後、(キツネザル以外は)自分の姿を見たことが無かった動物たちが、水面に映った自分の姿を見て、それぞれが互いに違う事を理解し、それでも一緒に居られると感じたように思いました。作者の意図は中々分かりにくいのですが、私はこのように感じました。
罪深き人間に希望を与える現在の神話
バルト三国はラトビアのギンツ・ジルバロディス監督のアニメ作品でした。最初実写とアニメを組み合わせてるのかと思うほどの絵の質感に驚きました。特に光の加減がリアルで、ファンタジックな物語なのに、そんなファンタジック世界にもリアリティを与えていたように思いました。
またもう一つの特徴として、主人公が黒猫で、鳴き声はあったものの言葉は一切ありませんでした。セリフがないアニメ作品というと、昨年話題になった「ロボット・ドリームズ」が直ぐに思い出されますが、人間が出て来ないだけで都市化された街が舞台だった同作とは異なり、基本大自然が舞台であったので、セリフがなくても自然な感じであり、また登場動物たちの鳴き方や表情で彼らの感情は十二分に伝わるように創られていたので、非常に理解が進むお話でした。
ストーリーとしては、地球の水位が全体的に上がり、殆どの地面が水没してしまう中、漂流する帆船に乗った黒猫をはじめとする多種の動物たちが必死に生き残ろうとするもので、まさに「ノアの方舟」の様相でした。帆船には、先客のカピパラがいて、これは黒猫に友好的というか無関心。その後洪水の直前に黒猫を集団で襲った犬の仲間の白犬、物に異常に執着するキツネザル、黒猫を助けようとして仲間に翼を折られたヘビクイワシが加わる。まさにノアの方舟状態。
旧約聖書の方では、大烏とか鳩を放つと戻って来なかったという記載があり、どちらかと言うと鳥がネガティブに描かれた印象がある一方、本作のヘビクイワシは、主要登場動物中唯一途中で飛び立って居なくなってしまいましたものの、天に召されたという感じだったので、この辺の相違が何を意味するのかなと、知恵のない頭で考えているところです。
最終的に、ニシル山なのかアララト山なのかに模されたと思われる尖塔のような場所に辿り着いた動物たちは、団結して生きて行こうと決意した感があり、その神々しい姿に勇気を貰った気分でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
黒猫になって大冒険!だけじゃなかった
ある黒猫が住む家に飼い主はいない。
ある日、洪水が押し寄せ流れて来たボートに乗り込むと、同じように流されてきた動物たちと同乗することになる。
黒猫の目線で進む物語は、ただの冒険の話ではなかった。
人がいた気配はあっても、誰も登場しない。
どうやら度重なる洪水被害のために、人類は滅亡したようだ。
自然の風景の精細で美しい。
リアルな風景に対して、動く動物たちは絵画的、ポスターカラーで描いたような優しい感じが出ていて良かったです。
動物たちのほとんどがそれ自体の鳴き声で、セリフが一切ないため、そのまま全世界で観てもらえるのもいい。
他のメジャー系スペクタクル大作群を抑えて、本年度アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞!
当然ながら、作品の価値は、製作費や物量には比例しないことが証明されて本当に良かった。
言葉は無くとも
動物が主役ということで、全てを音と映像で語る作品。のっけから低い視点のスピード感溢れる映像に度肝を抜かれた。
登場する動物たちは人語をしゃべったり、服を着たりの擬人化こそされていないものの、ストーリーの展開上、協力し合ったり物を片付けたりなど、最低限の知的行動はとる。特に片足で帆船を自由自在に操る鳥船長には笑った。
苦難と驚きに満ちた旅が、いったい何処へ行き着くのだろうと思っていたら、最後はただ成す術なく立ちすくむ幕切れ。この結末とエンドロールのあとに流れる映像、そして旅の途中で仲間のひとりが天に召される?あのエピソードをどう解釈すべきか。
いずれにしろ明確に起承転結のあるお話ではないので、難しいことは考えず、次から次へと起こるイベントにハラハラしたり、イマジネーションに満ちた美しい映像をひたすら堪能するのがこの作品の楽しみ方なのかもしれない。
動物たちは無邪気で素直 見え方はきっと人それぞれ
リアルではなく間違いなくファンタジー
でも自然と納得してしまいそうなリアル感
映像も、CGで描かれる動物たちのしぐさや演技もそういった部分に一貫したものがあるように感じられた
そうして描かれる動物たちは、一切の言葉を発さない
鳴き声は上げるし、抑揚などである程度の気持ちは伝わっているかもしれないけれど、言語的な意思疎通は出来てないと思う
だからこそ(彼ら自身はそういう風に意識さえしてないだろうけど)彼らは、行動で全てを示す
そこに小賢しさはなくて、怒るとき、攻撃するときでさえ悪意のようなものは見えず、とにかく素直で正直だ
それがなんとも言えず心地好い
言語的な説明だって当然ないし、原因を究明したり解決したりしようとすることもない
だから、想像する余地が大いにある
ここはある程度好みが分かれるところもあるかもしれない
想像力の働かせ方によっていろんな見方ができるし、その見方によって見えるものさえ違ってきてしまいそうだから、ある種の鏡みたいなものかもしれない
近しい人といっしょに、見終わったあとでそれぞれの解釈を語って答え合わせをするのが楽しそうな映画、というのはけっこう貴重な気がする
上映時間は比較的短めだけど、説明で冗長になる時間が一切存在しないので充分な満足感とともに視聴を終えることができた
あれこれ語ってはみたけど、とにかくヘビクイワシさんがカッコいいんだよなぁ……
人間とはこのようなものであった
手描き風なタッチ、美しいCG、ダイナミックなカメラワーク、新しいアニメ
ギンツ・ジルバロディス。ラトビアのアニメーターで、基本たった一人で作品を作ってきた。そして5年前にこれもたった一人で作り上げた初長編映画「Away」は、今までに見たことない質感のアニメで、セリフなく、自然を駆け抜ける疾走感とともに、新しいアニメ旋風を起こすのではと自分なりに感じていました。そして今回、2本目の長編作品として、今度は小規模ながらチームでアニメを作り上げ発表したのが本作です。
本作の舞台は、人がいなくなった(?)世界で黒猫が主人公。なぜか水が襲い大地が沈んでいく。黒猫は、逃げるために高い所へ、異種の動物たちとともにボートに乗りながら旅をする・・・てな感じです。
まず驚くべきはCGとはいえ美しい絵。キャラクターは水彩画のように、しかし植物や背景はリアルな質感を持っていて、なんとなく美しさを感じてしまう。水の動き、瞳孔の縮瞳、動物たちの個性的な動き、どれをとっても美しい。
そしてそれらを余すことなくダイナミックに映し出すカメラワークもまた見事。動物の視点から動きをとらえるような臨場感と躍動感が画面いっぱいに溢れてるんです。また本作は鳴き声しかセリフはないですが、キャラクターの動きで何がしたいのか、何を伝えようとしているのかを感じさせる画づくりが、一種のドラマを見てるようで面白い。
しかし、その中で自分が本作から強く感じたことは、
“自然の厳しさと、互助の大切さ”かと思うんです。
物語の中で、多くの動物たちが一つの船で旅をする。同席する理由は各々あるも、その過程で自然、野生で生きていくのに厳しい掟を暗示しているように感じるんです。その中で、彼らは協力して動く場面がよく見られるんですな。違う種族だが、危機的状況に対し助けようとする場面に、互助の大切さを感じずにはいられません。だが、それ以上にラストのクジラと黒猫の対峙がとても印象的でした。それは、
時に、どうにもならないことがある。と暗示しているかのような。
そこに、自然の厳しさを感じるんですが、その後のカットがまた印象的。その中でも協力して生きていくことが大切というか、自分は一人じゃないメッセージを持っているのやないかと、自分は思うています。そう考えると、本作はただただダイナミックな美しいアニメーションだけではない、
詩的で、ユーモアがあって、大事なことを思い返させてくれそうな、そんな感じがある素晴らしい作品であると思うんです。
アニメ界に間違いなく新しい力が花を咲かせた。自分はそう思うています。ギンツ・ジルバロディスに乾杯。
映画に頭まで浸かって猫と一緒に流される。
事前予告やチラシから受けた、「ラトビアのすごい監督が手がけた、動物たちが力を合わせてとんでもないことになった世界を冒険するハートフルストーリー」的な印象のまま視聴しましたが、全く別物でした。動物である彼らの冒険を自分事として共に体験させてくる。この世界そのものを自分で考えさせてくる。自分の内面と向き合わせてくる。内省的で、監督の美学というか、美しさと哲学でぶん殴ってくる、人によってはきっと面倒臭いタイプの映画と思います。
猫ちゃんかわいいねえ、辛いけど頑張ろうねえ、なんて人間様の視点から俯瞰しながら見るつもりでしたが、抗いようのない濁流に猫と一緒に押し流され、ゆっくりと深海に落ちていくそのどうしようもなさに死の恐怖を感じ、嵐の中で海原に放り出されて自分も震え、見知らぬ絶景と日差しに歓喜して、彼らが何も言わないが故に自分が彼らの気持ちを考えてしまい、自分がその場にいる感覚に完全に飲み込まれて、ただただ映画に流され続けました。
そして世界についての謎も、何も説明されないが故にずっと考えてしまいます。唐突のように感じる部分がありますが、そのせいでよりこの映画の深みが増しているように思います。
ギンツ監督の多才さはすごいものだと思いますが、彼の世界観、内面を抉ってくるような静謐さの方がすごい。とても大好きな映画になりました。
あとは蛇足。
映像ですが、大作映画のしっかり予算のかかった現実と見紛うようなリアリティのあるCGではありません。個人的に最も近いなと感じたのが、「ブレスオブザワイルド」で、見ようによっては確かに粗い部分があるし、精細ではありませんが、そんなことがどうでも良くなるくらい美しい。
音楽も、世界観に合わせた、派手さはあまりないが内省的で、サントラ単体で聞いてもエレクトロとして楽しいものです。
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